Delroy Lindo
 舞台出身の個性派デルロイ・リンドの魅力を探る

 今年、アカデミー主演賞にデンゼル・ワシントンとハル・ベリーが輝き、ブラック系の俳優たちが一躍注目を浴びている。ハリウッドには、これまで常に主役として注目を浴びてきたエディ・マーフィーやデンゼル・ワシントンといったブラック系アクターがいるが、映画に彩りを加えるためになくてはならない個性的なブラック系名脇役ももちろん存在する。今回は、魅力的な名脇役としてスクリーンにその姿を印象付けるデルロイ・リンドにスポットを当ててみよう。
 1952年11月18日英国、ルイシャムに生まれ育ったデルロイ・リンドの両親はジャマイカからの移民。10代の頃、母と共にカナダ、トロントに移り住むが、すぐにアメリカへと渡る。デルロイはサンフランシスコのアメリカン・コンサバトリー・シアターで学び、俳優としての頭角をあらわしプロの道を歩み始める。

 キャリア初期の作品に『アメリカン・グラフィティ2』('79)の軍曹役があるが、これ以降10年近く映画には出演せず、ステージに専念していた。
 再びスクリーンに登場し、一躍注目され始めたのは、スパイク・リー監督の『マルコムX』('92)から。マルコムXをナンバー賭博に誘うウェスト・インディーズ出身のギャング役で、強烈な個性を印象付けた。続けて同監督のバイオグラフィー的作品『クルックリン』('94)で、ジャズ・ミュージシャンの父親役を、また『クロッカーズ』では麻薬売買の元締めを演じ、ブラック系アクターとしての地位を手堅いものにした。
 これらの作品で地盤を築き上げたデルロイは、同年アクション・コメディ『ゲット・ショーティ』でジョン・トラボルタ、ジーン・ハックマン、ダニー・デヴィートらと共演。一躍メジャー・ハリウッド映画に進出。96年にはロン・ハワード監督の『身代金』で、ブラック&マイノリティ系に送られるNAACPイメージ・アワードにノミネートされた。90年代後半からは、意欲的にスクリーンに登場し、個性的派俳優として全世界的にその顔を知られることとなった。


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◆『60セカンズ特別版』(00)

痕跡一つ残さず60秒でいかなる車でも盗み出すといわれる伝説の男メンフィス(ニコラス・ケイジ)。彼は弟の命を救うために常識では不可能な仕事を引き受ける。その仕事とは、高級車50台、をわずか24時間以内に盗み出すことだった。伝説のカー泥棒チームが目論む一世一代の強盗計画をスピーディーな展開で描くアクション映画。街中を疾走するカーチェイスは大迫力。デルロイ・リンドはメンフィスの尻尾を掴むため独自に捜査を開始すキャッスルべック刑事を演じた。ロバート・デュバル、アンジョリーナ・ジョリー共演。

発売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
価格:\3,800(税抜)
◆『ロミオ・マスト・ダイ特別版』(00)

ジェット・リーが『マトリックス』のスタッフと組んで放つスーパー・アクション。オークランドの沿岸地帯では何代にも渡って中国系とブラック系マフィアが激しい対立を続けていた。 だがその均衡は中国系マフィアのボスの後継ぎが殺されたことによって崩れ始める。殺された兄の復讐に燃えるハン(ジェット・リー)は、偶然であった美女トリシュ(アリーヤ)に魅かれていくが、彼女は対立するブラック・マフィアのボス(デルロイ・リンド)の娘だった。デルロイが演じるマフィアのボスは迫力。娘役のR&Bシンガー、アリーヤはこの映画のサントラも大ヒットさせたが、昨年夏飛行機事故でなくなっている。

発売/販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
価格:¥2,500(税抜)
◆『サイダー・ハウス・ルール』('99)

米現代文学の巨匠ジョン・アーヴィングが自身の同名ベストセラーを脚色、ラッセ・ハルストレムが監督したこの名作は、アカデミー脚色賞、助演男優賞に輝き、作品賞他、5部門にノミネートされた。ルールとは何か?人は自分でルールを決めることができるが、いつも現実の人生に対処しなければならない、というテーマのヒューマン・ドラマ。アメリカの大自然が美しいメイン州を舞台に叙情的描かれている。デルロイ・リンドは、リンゴ園の労働者を仕切るミスター・ローズを演じ、この作品により深みを与えている。ちなみにミスター・ローズの娘ローズ・ローズ役もR&Bの歌姫エリカ・バドゥ。次回はどの歌姫の父親役になるのだろう?

発売/販売元:アスミック・エース
価格:¥4,900(税抜)
◆『普通じゃない』('97)

『トレインスポッティング』の成功で、ハリウッドに進出したダニー・ボイル監督が描く、ロマンティック・コメディ。人気小説家になる夢を見ながら、巨大企業の清掃人として働くロバート(ユアン・マクレガー)は、ロボットの導入により突然解雇される。社長のもとへ抗議に向かった彼は、そこにたまたま居合わせた社長令嬢(キャメロン・ディアス)を誘拐するハメに・・・。優しいロバートととタフな社長令嬢とのアンバランスな恋の行方が絶妙。デルロイは、この二人が恋に落ちるようあらゆる手立てを企てる愛のキューピッド役。二人が恋に落ちなければ天国に帰れないのだ。ボイル監督がスパイク・リー監督作品に出演のデルロイの演技にほれ込んで出演を依頼したという。

発売/販売元:20世紀FOX
価格:¥3,980(税抜)


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ちょっとコミカルなテイストで観客をなごませる役柄
 全米公開わずか3日間で2000万ドルの大ヒット作『ザ・ワン』(02)でジェット・リーと共演したデルロイ・リンド。ジェット・リーとの共演は『ロミオ・マスト。ダイ』に続いて2作目だ。多次元宇宙という発想から、125人もの自分とのバトル・ロワイアルを繰り広げ、宇宙で最強パワーを持つ男を目指すユーロウ(ジェット・リー)を追い詰める多次元宇宙捜査局(MVA)の捜査官ローデッカーをデルロイ・リンドは演じた。

 悪玉ジェット・リー、ユーロウと善玉ジェット・リー、ゲイブが闘う荒唐無稽なSFアクションは、デルロイ・リンドの味付けで、ますますその面白さに磨きがかかっている。実力ある脇役がいてこそ、スター、ジェット・リーも輝くというものだ。SFは初出演のデルロイだが、刑事役はお手の物。いかつい顔もご愛嬌、ちょっとコミカルなテイストでオーディエンスを楽しませてくれる。
■『ザ・ワン』公式サイトはこちら > http://one.eigafan.com/
 その他アメリカでは、ヒラリー・スワンク、アーロン・エッカートと共演のSFアクション・スリラー『The Core』(02)がこの秋上映予定。日本ではロバート・レッドフォード主演のミリタリー・アクション『The Last Castle』(01)が今年公開される。


■これもチェック。デルロイのあれこれ
ステージにおけるデルロイの軌跡
 現在はハリウッド映画に登場する個性的な役者として、絶対はずせない地位を築いているデルロイ・リンドだが、もともとは舞台俳優としてデビュー。そこでステージでの彼の軌跡に触れてみよう。
 NYアクターズ・スタジオのメンバーである彼は、 82年「Master Harold and the Boys」でブロードウェイの舞台にデビュー。この作品は全米各地で上演される大ヒットとなった。88年には、オーガスト・ウィルスン演出の「Joe Turner’s Come and Gone」でトニー賞、ドラマ・デスク賞にノミネートされている。この他舞台では、NYシェークスピア・フェスティバルの「お気に召すまま」「ロミオとジュリエット」といった古典にも出演している。

 スクリーンと舞台に渡って活躍するデルロイ・リンド。今後は脇役としてだけではなく、主演としての地位を確実に築き上げるに違いないだろう。


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