ニック・スタール Nick Stahl
 質の高い作品に次々出演、子役から見事な成長を遂げたニック・スタールの魅力

 どんなに役者の数の多いハリウッドでも、子役から役者として成功した人はそう多くはありません。ジョディ・フォスターを始め、本当に数えるほどしかいないのが現実。そんななか、ニック・スタールは子役から役者として成長し、最近特にその活躍が注目される若手俳優の一人。ハリウッドでも希少な存在です。まだまだ未知数ですが、それだけに今後の活動が気になる彼をクローズアップします。
 1979年12月5日生まれ。アメリカはテキサス州ダラスの出身。4歳の時に母親に連れられて観た児童劇をきっかけに、「将来は演技の道に進む」と決心する。その後コマーシャルや地元の劇団で活躍した後、映画『顔のない天使』('93)の演技で一躍注目される。メル・ギブソンが初監督したことでも話題になったこの作品で、ニック・スタールはギブソン演じる暗い過去を背負ったマクラウドと親しくなる少年チャックを感性豊かに演じ、評判となる。

 94年には家族の葛藤と絆を描いた『運命の絆』でスーザン・サランドン、サム・シェパードといったベテラン実力派俳優と共演するものの、それ以降、あまり作品に恵まれない時期が続く。
TM (C) 2003 IMF Internationale Medien und Film GmbH & Co. 3 Produktions KG
 ニック・スタールが再び俳優として注目を浴びたのが、98年の『洗脳』への出演。どこにでもある普通の高校を舞台に、洗脳されて人間性をなくした優等生集団“ブルー・リボン”と戦う高校生役で印象を残す。『スクリーム』のヒットの影響やティーン・アイドルとして人気のケイティ・ホルムズが主演ということもあり、スマッシュ・ヒットとなった。
 同じ年、テレンス・マリック監督の『シン・レッド・ライン』に出演。『天国の日々』('78)以来、実に20年振りとなる同監督の新作として早くから注目されていたこの作品は、「寡作な巨匠の作品にぜひとも出たい」と、ショーン・ペン、ジョージ・クルーニー、ウディ・ハレルソン、ニック・ノルティ、ジョン・キューザックなど、そうそうたる顔ぶれの出演者が集まったことでも話題となった。

 続く2001年の『イン・ザ・ベッドルーム』では、シシー・スペイセクとトム・ウィルキンソン演じる夫婦のひとり息子という重要な役どころを堂々と演じきり、若手演技派として高く評価される。息子を失った両親の深い悲しみと怒りが観る者に迫ってくる重厚な心理ドラマは、丁寧な演出と俳優たちの渾身の演技で数々の映画賞を受賞した。
TM (C) 2003 IMF Internationale Medien und Film GmbH & Co. 3 Produktions KG
 それからは『BULLY/ブリー』(02)や『ターミネーター3』(03)など、話題の作品に続けて出演し、着実にその実力が認知されるようになる。


■これからの活動は? 最新映画でチェック

 ニック・スタールの新作はもうすぐ公開の超話題作『ターミネーター3』。彼は成長したジョン・コナーを演じる。『ターミネーター』シリーズのなかでも、人類存続の鍵を握る重要な役として人気のジョン・コナー。ファンにとっても『T3』は、彼の演じるジョンが大きな見所となるだろう。
 サラとジョン・コナー母子が世界を救ってから10年。すでに予告された「審判の日」は過ぎ、マシーンと人間の戦争などは永遠にないように思えた。しかし実際、スカイネットは存在し、いまだにジョンの命を狙いつづけていた。今回送り込まれたのは、かつてないほど高性能な「T-X」。新たに設定された「審判の日」が刻々と迫る中、ジョンの前に再びターミネ―ターが姿を現す。今度のターミネ―ターは果たして誰が、どんな目的で送り込んだのか? なぜ、スカイネットは滅亡しなかったのか? ジョンの運命は…?
TM (C) 2003 IMF Internationale Medien und Film GmbH & Co. 3 Produktions KG
 シリーズ1作目の『ターミネーター』('84)ではサラ(リンダ・ハミルトン)のお腹のなかにいたジョン・コナー。『ターミネーター2』('91)ではエドワード・ファーロング演じる少年に成長していた。ファーロングの美少年ぶりも話題となった『T2』から10年以上、彼の再登場を待ち望んでいた人も、ニックの確かな演技が生み出す新しいジョン・コナーには必ず納得するはず。


■ここもチェック! 話題の出演作
『BULLY/ブリー』 ブラッド・レンフロなど若手俳優と共演、いじめっこ役を演じる
 ベテラン俳優との共演が目立つニック・スタールのフィルモグラフィーのなかでも異彩を放つのがこの作品。アメリカで実際にあった衝撃的な事件を、『キッズ』('95)で現代的な若者の性(生)を描いてセンセーションを巻き起こした写真家ラリー・クラークが映画化。現代の若者の刹那的な生活を生々しく描いている。
(C) Copyright : studiocanal France 2001
 南フロリダ。ティーンエージャーのボビー(ニック・スタール)と親友のマーティ(ブラッド・レンフロ)は、子供の頃からいつも一緒に遊んでいた。マーティと付き合い始めたリサは、徐々にボビーとマーティの歪んだ関係に気づく。一見、仲良しに見えるふたりだったが、実はボビーが一方的な権力でマーティを支配しており、彼はまるで自分の奴隷のようにマーティを扱っていた。その事実に耐えられなくなったリサは、マーティにボビー殺害計画を持ちかける。(配給:アミューズピクチャーズ)

 ちなみに共演のブラッド・レンフロは監督業にも興味を持っているとのこと。日頃から「甘ちゃんみたいな役はやらないようにしている」と言うニック・スタールも案外同じことを考えているかも?


■これまでの出演作でニック・スタールの個性に迫る
若手実力派ニックの演技を堪能
『顔のない天使』('93)
 1960年代のアメリカ北東部の小さな海辺の町を舞台にした感動のヒューマン・ドラマ。元教師のマクラウド(ギブソン)は、かつて自分の生徒を不慮の事故で死なせてしまった過去を持つ。その事故が原因で顔に大火傷を負った彼は、ひたすら顔を隠しながらひっそりと生活していた。そんな彼がひょんなことからチャック(スタール)という少年の家庭教師をすることになる。過去を引きずるマクラウドと複雑な家庭で孤立しているチャック。最初は衝突していた二人も、教える喜びと学ぶ喜びを通して次第に歩み寄っていく。わずか12歳ながら、ニック・スタールの記憶に残る演技は高く評価された。
発売元:日本ヘラルド映画
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
DVD価格:\4,700(税抜)
『洗脳』('98)
 穏やかな街クレイドル・ベイに越してきたクラーク一家。次男のスティーブ(ジェームス・マースデン)が通い始めた高校は個性で各グループに分けられていた。“ブルー・リボン”はその中でも品行方正、成績優秀と、夢と理想を現実のものにしているグループ。ところが彼らは時々狂ったように狂暴になり、殺人まで犯すようになる。何らかの邪悪な力がはたらいていると感じたスティーブは、仲間のレイチェル(ケイティ・ホルムズ)やギャビン(ニック・スタール)らと共に学内の洗脳組織をあぶりだそうと立ちあがる。
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
DVD価格:\3,800(税抜)
『シン・レッド・ライン』('98)
 1942年、日本軍が待ち構えるガダルカナル島に上陸した米軍C中隊。その部隊で、生と死の境界線(シン・レッド・ライン)をさまよう若い兵士たちのそれぞれの姿を叙情的に描いた戦争大作。極限状態にある彼らの心理と戦場の悲惨な光景が、南洋の美しい映像や穏やかだった過去の映像とのコントラストでより一層際立つ。かつてないほど詩情あふれる戦争映画として賞賛され、1999年ベルリン映画祭金熊賞受賞を始め数々の賞を受賞。
発売・販売元:パイオニアLDC
DVD価格:\2,980(税抜)
『イン・ザ・ベッドルーム』(01)
 マット(トム・ウィルキンソン)とルース(シシー・スペイセク)はどこにでもいる普通の夫婦。夏休みに帰省した大学生のひとり息子フランク(ニック・スタール)は、バイトに励みながら近所に住む年上の女性ナタリー(マリサ・トメイ)と交際していた。ある日、フランクはナタリーの家で別居中の暴力夫と遭遇、ひとつの悲劇が起こる。やり場のない怒りと絶望を抱えながら、お互いに正直な気持ちをぶつけ合うことで本来の自分を取り戻すマットとルース。そこで二人が下した決断とは。深く傷つき苦悩する夫婦の姿を真摯に描いた人間ドラマ。2001年ゴールデン・グローブ賞最優秀主演女優賞受賞。
発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
DVD価格:\3,800(税抜)
<<戻る


東宝東和株式会社