ニコール・キッドマン/Nicole Kidman
 名実ともにハリウッドの頂点に立つ女優

いまハリウッドで最も輝いている女優といってもいいでしょう。白い陶器のような肌と、人形を思わせる完璧な容姿。そんな恵まれた要素にとどまらず、スタンリー・キューブリックや、ラース・フォン・トリアーなど鬼才監督との仕事にも果敢に挑戦するなど、その活躍は留まるところを知りません。今回はそんなハリウッドの新たなミューズとなったニコール・キッドマンの魅力を探ります。
1967年6月20日ハワイ生まれ。オーストラリアの女優として知られているニコールですが、オーストラリアへ移住したのは彼女が3歳のとき。この頃からバレエや演技を習い、俳優の道を志していたニコール。16歳のときに『BMXアドベンチャー』('83)で映画に初出演後、サム・ニールと共演した海洋サスペンス『デッド・カーム/戦慄の航海』('88)でアメリカデビューを果たします。さらにこの作品を観たトム・クルーズが、『デイズ・オブ・サンダー』('90)で彼女をヒロインに抜擢。映画の中で繰り広げられた2人の恋はやがて現実のものになります。
『トップガン』や『レインマン』などの大ヒットですでに名声を確立していたトムとの結婚は、女優個人としての力量よりも、“トム・クルーズの妻の”という冠が先についてまわりがちでしたが、ニコールは夫の名前に埋もれることなく、『マイライフ』('93)や、『バットマン・フォーエバー』('95)など様々なジャンルに出演。そんな彼女のクールビューティな魅力を存分に活かした『誘う女』('95)では、見事ゴールデン・グローブ賞を受賞しました。
その後、ジェーン・カンピオン監督の『ある貴婦人の肖像』('96)では時代劇を、『ピースメーカー』('97)ではアクションに挑戦し、演技の幅を広げていったニコール。99年には、巨匠スタンリー・キューブリックの遺作となった『アイズ・ワイド・シャット』に夫婦で出演します。キューブリックならではの映像で、男女の愛と性、夫婦の絆について一石を投じますが、皮肉にもこの作品が夫婦としての最後の作品となり、2人は01年に離婚という結末を迎えました。
 しかし、二コールの現在の輝きは、この離婚が鍵といっても過言ではありません。この年に出演した『アザーズ』と、『ムーラン・ルージュ』では、ホラーとミュージカルというまったく違うジャンルながらも、2作品がゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネート、また『ムーラン・ルージュ』ではアカデミー賞主演女優賞にノミネートという快挙を成し遂げます。
そして翌年、「ダロウェイ夫人」をめぐる女性たちの1日を描いた『めぐりあう時間たち』では、特殊メイクで鼻を変えるなどの気合で作家ヴァージニア・ウルフを熱演し、ついにアカデミー賞主演女優賞を獲得します。
『ムーラン・ルージュ』
 いったいなぜ彼女がこんなにも躍進を果たしたのか? それは作品の鋭い選択眼と、演技への情熱にほかならないでしょう。ジェーン・カンピオン、ガス・ヴァン・サント、アレハンドロ・アメナバール、スタンリー・キューブリックなど彼女がこれまで仕事をしてきた監督たちは、大作、インディ映画を問わず、全て独特の視点を持った個性的な監督ばかり。そしてその最たるものが、現在公開中のラース・フォン・トリアー監督の『ドッグヴィル』。ドグマの提唱者としても知られるトリアー監督のこと、今回は舞台は黒い床にかかれた線のみという特殊な環境を設定。そんな中で彼女は流れ者の女グレースを演じています。
このような個性的な監督たちと積極的に関わっていったからこそ、今の彼女があるのでしょう。またニコールは、『ムーラン・ルージュ』で来日した際に、こう語っていました。

「もしあなたが世界で仕事をする俳優になりたいのなら、大切なのは演技への情熱です。自分の全てを捧げられるというピュアな気持ちで挑むべきね。演技できるのであれば、企画の規模は関係ないはずよ。心底演技がしたいのであれば、夢は追うべきであり、その価値がある仕事だと思っています」
『ムーラン・ルージュ』で来日したニコール・キッドマン
最新作『コールド マウンテン』では、恋人を“待つ女”から“待つことを選ぶ女”へと成長をするエイダを演じているニコール。今後も、名優アンソニー・ホプキンスと共演した『白いカラス』や、製作として参加しているジェーン・カンピオン監督の『イン・ザ・カット』の公開も控えています。ジャンルや規模に関わらず、映画の世界を自由に行き来する彼女。その活躍はこれからも当分続くでしょう。


■ニコール・キッドマンの最新作『コールド マウンテン』をチェック!
『イングリッシュ・ペイシェント』のアンソニー・ミンゲラ最新作。南北戦争で離れ離れになったインマンとエイダ。恋人の元へと500Kmの道のりを歩く男と待つ女の愛を壮大なスケールで描いた文芸大作。
 ニコールはインマンを一途に思いつづけるエイダを演じる。南北戦争という過酷な状況下で人生最大の試練に立たされたエイダが、レニー・ゼルウィガー演じるルビーの助けを借りてたくましい大地の女へと変貌していく過程は、『風と共に去りぬ』でのスカーレット・オハラにも負けない存在感を放っている。


■過去の作品でニコール・キッドマンの魅力をチェック!
『誘う女』('95)
 地方のテレビ局でお天気キャスターをつとめるスーザンは、スターになることを夢見る野心溢れる女性。ある日、目的達成のため邪魔になった夫を殺害しようと思いついた彼女は、高校生の少年を色気で虜にし目的を果たそうとするのだが……。
 実際に起きたスキャンダルをもとに、ガス・ヴァン・サントが映画化。TV報道に加熱するマスコミへの皮肉がタップリこもったサスペンス映画だ。主人公のスーザンを熱演したニコールは、“悪女”ぶりが評価されゴールデン・グローブ賞を受賞。新境地を拓いた。
発売・販売元:ケイエスエス販売
DVD価格:3,800円(税抜)
■DVD詳細はamazonまで> http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000DJWO9/eigafan-22
『アイズ・ワイド・シャット』('99)
 ニューヨークで暮らす医者のウィリアムは、美しい妻アリスとともに何不自由ない生活を送っていた。しかしある夜、妻から性的願望を告白されたウィリアムは、ショックを受け、その日を境に性の妄想に取りつかれる。やがてウィリアムは倒錯した愛の世界へ迷い込むのだが……。
 巨匠スタンリー・キューブリックが夫婦の愛と性について官能的かつサスペンスフルに描いた衝撃作。トム・クルーズとニコール・キッドマンの夫婦共演、ラブシーンが話題を呼んだが、この作品がキューブリックの遺作となった。
発売・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
DVD価格:1,500円(税抜)
■DVD詳細はamazonまで> http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00007HS8J/eigafan-22
『めぐりあう時間たち』(02)
1923年、ロンドン郊外のリッチモンドで「ダロウェイ夫人」を執筆するヴァージニア・ウルフ(キッドマン)。1951年、ロサンゼルスで『ダロウェイ夫人』を愛読する妊娠中のローラ(ムーア)。2001年、ニューヨークでエイズ患者の作家を献身的に支えるクラリッサ(ストリープ)。「ダロウェイ夫人」を鍵として、時間を超えた3人の女性たちの1日を綴る。監督は、『リトル・ダンサー』のスティーブン・ダルドリー。ニコールは特殊メイクで鼻を変えるなどの熱演で、ヴァージニア・ウルフを演じこの年のアカデミー賞主演女優賞にみごと輝いた。
発売・販売元:アスミック
DVD価格:3,800円(税抜き)
■DVD詳細はamazonまで> http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00008K5NN/eigafan-22


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