FILE16:フランス発『ナショナル7』
 6月1日(土)BOX東中野ロードショーほか全国順次公開

障害者だって人間らしく生きる権利はある。 障害者だってセックスはしたい。
そんな当然の要求を無視してきた社会に、鉄槌を加えるような衝撃作が生まれた!
 フランスの国道7号線に近い身障者施設を舞台に、車イス生活を送る人々と彼らを介護するスタッフたちの生活を描いた『ナショナル7』。本作は実際にあった出来事をベースに製作された。

 この施設に滞在するのは、介護スタッフに皮肉や罵詈雑言を浴びせる傲慢なインテリ男、スピードマニアで改造車椅子を暴走させて国道で事故を起こすパンク青年、キリスト教への改宗を望むゲイのイスラム教徒らだ。
 障害者でありながらセックスを要求するルネと、彼の願いをかなえようと奮闘する介護人のジュリが骨格となってストーリーが展開するが、それに加えてジュリと施設スタッフとの三角関係の恋愛や、イスラム教徒の青年が改宗する際の代理母に娼婦を望んだことで巻き起こる騒ぎなどが作品に彩りを加えている。

 強烈な個性の主人公らが巻き起こす事件や日常生活を、決してウェットでネガティブなものとしてとらえず、コミカルにユーモアを交えて展開していく手法は大胆で画期的。ストーリーが進展するにつれ、障害というひとつの“個性”を併せ持つ魅力的なキャラクターたちが浮き彫りにされていく。同情心や哀れみを観るものに強要せず、偽善的要素がまったくないところが通常の障害者をテーマにした作品と異なり、『ナショナル7』を際立つものにしている。それでいて、映画のラストシーンは観るものの心を強烈に打つはずだ。
 ルネが要求するセックスは、たんなる性欲の解消ではない。少しでもふつうに生活し自分自身を取り戻すこと、そしてその延長線上に描かれているのは、やはりフランス映画の王道ともいうべき愛の世界なのだ。人間らしく生きるとはどういうことなのかを観客自身も問われるこの作品は、2000年ベルリン国際映画祭観客賞を受賞するなど世界各地で絶賛されている。


■ストーリー

 フランス、トゥーロンの成人を対象にした身体障害者用の施設。ここに滞在するのは、インテリの皮肉屋で傲慢なルネ、改造した車イスを暴走させるジャン=ルイ、クリスチャンに改宗したがっているイスラム教徒でゲイの青年ラバら。彼らを筆頭に、次々とトラブルが巻き起こる日々に、所長や看護人達は頭が痛い。
 この施設に新しい看護人としてやってきたジュリは、一番介護がやっかいなルネの担当になる。ルネは早速、ヌード写真を自室の壁に貼らせたり、一緒に買い物に行った折には彼女にエロビデオを買わせて面白がる。

 しかし、真摯なジュリの態度に次第に心をひらいたルネは、「セックスがしたい。障害のない女性がいい。売春婦しかない。頼めるのは君だけだ」と打ち明ける。ジュリはルネの心情を思い、早速施設の会議で提案したものの、反対意見や無関心派が多く、なかなか協力しようとするものはいない。
 だが、ジュリは大勢の娼婦がトレーラーハウスで商売するを国道7号線(ナショナル7)へひとりで向かう。そしてそこで出会ったひとりの娼婦フロレルにルネの相手を頼むが・・・。


■スタッフ、キャスト&データ

◆スタッフ
監督/脚本/脚色:ジャン=ピエール・シナピ
撮影:ジャン=ポール・ムリス
脚色:アンヌ=マリー・カトワ
製作主任:ジャック・ファンスタン
製作:テレシプ
番組編成主任:ピエール・シュヴァリエ
撮影:ジャン=ポール・ムリス
録音:ジャン=ミシェル・ショヴェ
編集:カトリーヌ・シュヴァルツ
美術:リサ・ピリュ
製作指揮:ピエール・ドフェリーズ
セット・デザイン:エルミニア・シナピ 、ジャン=ノエル・ボレセク
衣裳:ヴァレリー・ドニウル
第1助監督:フレデリック・ジェラール
◆キャスト
ナディア・カッチ
オリヴィエ・グルメ
サイード・タグマウイ
ジェラルド・トマサン
リオネル・アベランスキ
シャンタル・ヌーヴィルト

◆映画受賞歴
2000年 ベルリン映画祭 観客賞
2000年 サンセバスチャン映画祭 観客賞
2001年 サンダンス映画祭 正式出品作品
◆DATA
2000年/フランス映画/90分/カラー
■公式サイト> http://www.zaziefilms.com/nationale_7/index2.html


■この作品を撮るのに欠かせなかったプチカメラの存在

 プロデューサーのジャック・ファンストンが、アルテの「プチ・カメラ」コレクション用に映画を撮影しないかと打診してきたとき、即座にOKしたという監督・脚本のジャン=ピエール・シナピ。軽量で押し付けがましさのないデジタルカメラは、まさに理想の道具。撮影装置をいっぱい抱えた、ふつうの撮影部隊が障害者の暮らす施設へやってくるなんて絶対考えられないことだった。シナピ監督は、デジタルカメラの特性を生かした映像を駆使してこの作品を丁寧に作り上げた。
 「たった1本のケーブルが床に這っているだけで、車椅子には危険なことなのです。この映画は施設の実際の住人が登場し、その中の3人は重要な役割を演じています。この超軽量カメラ抜きでは撮影は難しかったでしょう」

小さなDVカメラのフレキシビリティによってこの作品は完成された。新しいツールの登場により、新たな可能性が切り開かれたともいえるだろう。
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