FILE32:短編映画祭『Short Shorts Film Festival 2003』
 6月7日~11日まで、今年も世界の優れた短編作品が一同に会する映画祭が開催!

 1999年の第1回目開催からすでに5回を数える『ショートショート フィルムフェスティバル(Short Shorts Film Festival)』。
昨年から名称を『アメリカン・ショートショート フィルムフェスティバル(American Short Shorts Film Festival)』から『ショートショート フィルムフェスティバル』に改め、世界中の作品を上映する映画祭として、4年間で全国8万人以上を集めるまでになった。日本だけでなくLAとシンガポールでも開催するなど、日本発の非常にユニークな国際映像交流として注目を集めている。
 短い作品で1分、長くて30分のショートフィルムには長編映画とは違う魅力がある。限られた時間内での表現による、無駄を削ぎ落としたシャープな切れ味と凝縮した内容。短い時間でも忘れがたい印象を残す作品もたくさんある。最近では、日本映画界の第一線で活躍する個性派&実力派映画監督7人による短編作品集『Jam Films』や、アカデミー賞短編アニメ賞の受賞が記憶に新しい『頭山』の山村浩二など、短編映画の魅力が広く一般的に認知されてきている。
 ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグ、フランシス・F・コッポラ、リュック・ベッソン、スティーブン・ソダーバーグなど、今や誰もがその作品を一度は見たことがあるような巨匠たちも、短編作品から出発している。一口に短編映画といってもその内容は多種多様。それぞれに個性的で、ジャンルも違えば表現方法やスタイルも違う。フィクション、ノンフィクション、実写、アニメ、クレイアニメ、etc。
 そんなショートフィルムの魅力と新たな可能性に溢れる『ショートショート フィルムフェスティバル 2003』が6月7日(土)~11日(水)まで開催される。今年は従来のラフォーレミュージアム原宿をメイン会場に、六本木ヒルズでも特別上映とイベントを開催予定。映画祭に先立ち、6日(金)に行われたレセプションパーティには石原都知事を始め、たくさんの著名人が集まった。

 作り手にとっては自分たちの才能をアピールするまたとない場であるこの映画祭は、観客にとっては明日の映画界の担い手となる若手監督の作品に出会える格好の場と言える。世界56カ国から1300本以上の応募作品を集め、ますます国際的な映画祭としてのクオリティを高める『ショートショート フィルムフェスティバル』の魅力に迫る。
「ショートフィルムは世界中のたくさんの映像作家が、初めの一歩として、自分のデッサン画のように作り出してきたものです。この5年間、私たちは映画祭という形でそれを紹介してきました。

 これから有名になっていくであろうたくさんの監督たちを招いて、この日本で、この東京で、これからもショートフィルムを応援していきたいと思います。ショートフィルムは21世紀を飾るすばらしい映像文化、映像産業の中心になると僕は信じています」
別所哲也(ショートショート実行委員会代表)


■『ショートショート フィルムフェスティバル 2003』の魅力
 5周年を迎える節目の今年、「5周年特別企画」と題して各テーマごとに作品を上映

<マエストロ・ショートショート Maestro Short Short>
 5人の有名監督の初期ショートフィルムを紹介!
これまでもジョージ・ルーカス、マーティン・スコセッシ、ティム・バートン、ジェーン・カンピオン監督など、世界の第一線で活躍する監督たちの初期ショート作品を上映してきた。今年は、5周年を記念して、先日のアカデミー賞でもオスカーを獲得したポランスキーを含む5人の有名監督による初期作品を上映。

・ロマン・ポランスキー(ポーランド/フランス)
・ペドロ・アルモドバル(スペイン)
・ヤン・クーネン(オランダ/フランス)
・アレクサンダー・ペイン(アメリカ)
・フェルナンド・メイレレス(ブラジル)
◎写真:『最後の赤ずきんちゃん』
『ドーベルマン』でフランス映画界に疾風を巻き起こしたヤン・クーネンの96年作品。
動植物が踊り狂うファンタジックな楽園の地下ロケットに、足の曲がった老女が住んでいる。かつてダンサーだった彼女は昔の栄光を取り戻すため、赤ずきんちゃんたちの健康な脚を狙う。”最後の赤ずきんちゃん”役はフランスの人気女優エマニュエル・ベアール。ヤン・クーネンらしい奇怪で幻惑的な世界が描き出される。
<アカデミー・ショートショート Academy Short Shorts >
 アカデミー賞ショートフィルムカテゴリーの受賞作品を紹介するプログラム。
現在までの米国アカデミー賞ショートフィルムカテゴリーの受賞作品をプログラム化。低予算、短期間で作られたものばかりがショートフィルムじゃない! ショートフィルムの常識を覆す世界一流の短編作品群をご紹介。
◎写真:『バニー』
『アイスエイジ』の監督クリス・ウェッジの98年のアニメーション作品。
バニーが一人台所に立っていた夜、彼女を訪れたのは厄介なお客だった。彼女はこの夜行性の害虫に、昔を思い出させるような変な胸騒ぎを覚えた。
自然の光の特徴を模倣し、いまだかつてないほどの次元とリアリズムをコンピューターアニメーションの世界に取り入れている。
<戦争&平和・ショートショート War & Peace Short Shorts >
「戦争&平和」を主たるテーマとした作品を上映するほか、海外映画祭でも話題のヒューマニズムの真髄に迫る作品群を特別プログラム(東京開催限定)にてご紹介。
◎写真:『赤く染まった泥土』
イタリアの若手監督パオロ・アメリの作品。
たった一つの弾丸しか持っていない、たった一人の英国兵が世界の運命を変えることが出来たかもしれない、という実話に基づくストーリー。映画が映し出す悲惨さはぞっとするものだが、それだけにとても力強い。
<セカンド・ショートショート 60 Second Short Shorts >
究極の1分に凝縮されたオーストラリア生まれの短編シリーズ「ルーニング」も特別上映としてご紹介。短い中にもセンスが光る、究極の1分ショートをお楽しみください。


■その他、ここに注目
・日本発のデジタルシネマ上映
「Microsoft Windows Media 9シリーズ」(マイクロソフト社)を利用し、フィルムで撮影された映画をデジタル化することで日本発のデジタルシネマとして上映。デジタルシネマは撮影、編集、配給、上映などの映画製作・配給にかかる作業をデジタルフォーマットで統一したものを指す。従来の映画のようにフィルムを使わないため、低コストで映画館上映が可能な上、ブロードバンド配信ビジネスなどへの展開を容易に実現するのが特徴。

・審査員の顔ぶれ
 今年はショートショートアワード審査員として、『アカルイミライ』が大ヒットし、今年度のカンヌ映画祭にも招待された黒澤清監督が参加。他にルイ・マル、コスタ・ガブラスなど世界の巨匠と組み、本映画祭でも上映されるヤン・クーネン監督の短編『最後の赤ずきんちゃん』の撮影監督・永田鉄男や「プレミアジャパン」編集長グレゴリー・スターなど。


■『ショートショート フィルムフェスティバル』に一言!
 華やいだムードのレセプションパーティ。来場者のみなさんの感想は?
「ショートフィルムはそんなに資金がなくてもビデオで普通に撮れると思うので、来年は自分も参加してみたいです。何か面白いものを作りたいです。短編作品は短い時間で自分の意思を伝えるには、長編映画よりも丁度いいところがあります。最高に面白いものを作りますよ」
(電撃ネットワーク 南部虎弾)
 『ショートショート フィルムフェスティバル』には毎年来ています。本当に集大成というか基本ですよね。長ければいいというものでもないですから、ものすごく勉強になります。自分で作品を作るとしたらですか? 楽屋裏の物語がいいですね。今やっている舞台の楽屋裏の話とか、面白そうでしょ。
(森久美子)
 上映していた3本を観ました。3本ともそれぞれ全く違うスタイルで、限られた時間でもきちんとメッセージが伝わってきました。若い監督も非常にいいスタイルを持っていると思うし、これからの人たちが力試しをしているエネルギッシュな感じもすごく好きです。
(服部真湖)


■History of Short Shorts Film Festival
 「自分が直感的に面白いと思ったショートフィルムが、5年間でこれだけ皆さんに受け入れてもらえたのが嬉しいです。来年はよりテーマ性を持って、もっと日本のクリエーターを応援できるような映画祭にしたいと思います。ここに来たら世界に繋がることができる、そんなふうに感じてもらえる場になってほしい」と語る別所哲也。1999年に産声を上げたこの映画祭が歩んだ道を振り返る。

○ 1999
 「ショートの面白さを日本の観客に伝えたい」というシンプルな思いから始まった短編映画際の記念すべき第1回目。『アメリカン・ショートショート フィルムフェスティバル』という名前の通り、アメリカ発の優れたショートフィルムを紹介する映画祭としてスタート。当初予想していたワークショップ的な規模から沖縄での開催も決定し、ツアー型映画祭の基盤が出来上がった。中田英寿主演の『POPO』を独占上映したことも話題になり、映画祭の希少性を高めることになる。また、この年はジョージ・ルーカス監督の学生時代の作品も上映。たまたま来日中だったルーカスは忙しいスケジュールの合間をぬってパーティに飛入り参加してくれた。

○ 2000
 前年度の評判が評判を呼び、地方からの誘致が相次いだ結果、全国5ヵ所での開催となった。コンペの応募作品総数も500本を越えた。企画上映ではチャップリン作品を上映する一方、アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門受賞で話題になった『パーソナルズ』(伊比恵子監督)が国内で初上映された。その他、マーティン・スコセッシ監督の短編作品やユアン・マクレガー主演作などを上映し、観客層の拡大に大きく貢献した年となった。
○ 2001
 21世紀の幕開けの年、「フィルムVSデジタル」というテーマを掲げて開催。テーマにちなんだトークイベントも行い、多様化していく映像表現を意識した内容になる。応募総数もついに1000本を突破。デジタル作品も増加した。また、日本の映画人を応援しようということから「ジャパン・ショートショート」部門を設置。翌年の名称変更につながる。恒例となった有名監督の初期短編はティム・バートン監督の無名時代の作品を上映。そしてこの年シンガポールに上陸し、初めての海外開催となった。

○ 2002
 映画祭タイトルを『アメリカン・ショートショート フィルムフェスティバル』から『ショートショート フィルムフェスティバル』に改称。世界53カ国から上映作品を選び、よりボーダーレスでグロバールな映画祭に発展していった。企画プログラムとしてはジェーン・カンピオン監督の初期短編やケネス・ブラナー出演作品などを紹介。W杯にちなんで「スポーツ・ショートショート」などもあり、バラエティに富んだ年になった。前年のシンガポール開催に続き、ハリウッドでの開催が実現。

 わずか5年で映画祭として大きな発展と成長を遂げ、ますます勢いに乗る『ショートショート フィルムフェスティバル』。今から来年が待ち遠しい!


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