「ジャック・タチ フィルム・フェスティバル」
 ぼくたちの伯父さんが帰ってきた! 「ジャック・タチ」映画祭が7月19日(土)より開催

 たった数本の映画しか残さなかったにも関わらず、フランス映画界の“喜劇王”と呼ばれるジャック・タチ。前衛的な芸術センスの持ち主として知られ、映画史に残る名キャラクター“ユロ氏”を生み出した。アメリカ・モダニズムの影響を受けたその感覚は、現代の私たちから見ても斬新で超モダン。
『プレイタイム』(C) Les Films de Mon Oncle 『ぼくの伯父さん』(C) Les Films de Mon Oncle
 彼の独創性を余すところなく伝える長編4作品&短編3作品が、ヴァージンシネマズ 六本木ヒルズ にて一挙に公開される。没後20周年を迎え、再評価の機運が高まるジャック・タチの世界が今スクリーンに蘇える。


■公開作品

長編
『ぼくの伯父さん』(1958年/カラー/116分)
『プレイタイム<新世紀修復版>』(1967年/カラー/125分)
『ぼくの伯父さんの休暇』(1953年/モノクロ/87分)
『のんき大将<カラー版>』(1994年/カラー/80分)
短編
『左側に気をつけろ』ルネ・クレマン監督(1936年/モノクロ/12分)
『郵便配達の学校』(1947年/モノクロ/13分)
『ぼくの伯父さんの授業』ニコラス・リボフスキー監督(1967年/カラー/28分)


■上映スケジュール
7月19日(土)~25日(金)   『プレイタイム<新世紀修復版>』
7月26日(土)~8月1日(金) 『左側に気をつけろ』『郵便配達の学校』
                  『ぼくの伯父さんの休暇』
8月2日(土)~8日(金)    『ぼくの伯父さん』
8月9日(土)~15日(金)    『ぼくの伯父さんの授業』『のんき大将<カラー版>』
8月16日(土)~22日(金)   アンコール上映
8月23日(土)~29日(金)   アンコール上映

■ヴァージンシネマズ 六本木ヒルズ にて
■公式サイト> http://www.zaziefilms.com/tati/


■ジャック・タチ(本名:Jacques Tatischeff)

 1908年10月9日、フランス生まれ。もとはパントマイム芸人。舞台俳優としてキャリアをスタートさせ、31年に映画界に入る。47年の『のんき大将脱線の巻』では、主演だけでなく演出と脚本も兼ね、監督業に携わるようになる。この作品は、当時ではかなりの最先端にあったカラーカメラでも同時撮影された。53年に『ぼくの伯父さんの休暇』を発表。無声映画時代の古き良きコメディをトーキーで再現したような作風が話題となる。ユロ氏シリーズに『ぼくの叔父さん』『トラフィック』がある。67年にはフランス映画史上最大の製作費をかけた『プレイタイム』を監督。1982年11月4日に死去。
『ぼくの伯父さんの休暇』(C) Les Films de Mon Oncle


■独創的な喜劇センスにかけては右に出るものはいない! ジャック・タチの魅力
■パントマイム芸:ジャック・タチの魅力は、何といってもパントマイム芸人出身ならではの軽妙な動き。チャップリンにも通じるような、パントマイム芸でギャグを作っていく無声映画の良さが、タチ映画の醍醐味でもある。
■鋭い観察眼:たとえば『ぼくの伯父さん』のプラスチック工場はフル・オートメ化されていて、明らかに近代化批判がうかがえる。日常を淡々と描きながらも、現代文明を鋭く批評し時代を先取ったのがタチの作品だ。
■詩情:結果的に様々な要素をすべて包括し、ひとつの作品を詩情漂う人生賛歌に昇華させている。だからどんな作品のラストにもシャレた味わい深さを感じるのだろう。
『のんき大将』(C) Les Films de Mon Oncle


■『ぼくの伯父さん』
 タチの永遠のキャラクター“ユロ氏”が本邦初登場した作品。プラスチック工場のオーナー社長が住む超モダンな邸宅が気に入らない彼の息子は、たびたび父の兄である伯父さん(ジャック・タチ)の住む下町のアパルトマンを訪ねる。息子を取られたようで面白くない両親は、独身の伯父さんに嫁を押しつけるべくパーティを催すが失敗。社会性を備えさせるため、社長は兄を自分の工場に雇うがこれも失敗。挙句に奇妙なプラスチック製のパイプを大量生産してしまう。呆れた社長は、のんきな兄を地方支店に転任させることにした。そして“伯父さん”は懐かしの町を去って行くのだった……。タチ特有の人生讃歌が余韻を残す。カンヌ映画祭審査員特別賞、アカデミー外国語映画賞を受賞。


■『プレイタイム』
 70mmで製作されたタチの風刺コメディ大作。もちろん、彼の定番キャラクター“ユロ氏”が登場する。今回のユロ氏は、大会社就職のため、パリにやって来たおのぼりさん。オルリー空港に降り立ち、パリにやって来たユロ氏。ところが、なじみ深い古き良き街並みはすべて近代的なビルディングに。そのビルの一つを面接のために訪れるユロ氏だが、なかなか面接相手に会えず、すれ違ってばかり……。ラストの情景描写の味わい深さはいつもどおり。


■『ぼくの伯父さんの休暇』
 『ぼくの伯父さん』以前の作品(長篇第二作)で、タチの商標であるユロ氏がスクリーンに初めて登場した作品。誰もが海へと出かけるバカンス・シーズン。汽車もバスも旅行客で超満員。ユロ氏も小さなボロ車で海辺を目指す。リゾート・ホテルでは、迷惑男のユロ氏は招かれざる客。彼を疎ましく思う宿泊客たちの生活をスケッチしながら、タチ独特のギャグが盛り込まれている。みんなが握手で別れの挨拶を交わすなか、迷惑男のユロ氏だけが仲間はずれなのだが、彼とはなぜか波調が合うと思い込んでいる英国婦人と、彼の様子を好ましく見つめていた老紳士だけがそっと声をかけ、色々あった夏の休暇も終わる。クロージング・ショットの浜辺の風景は、そのまま絵葉書になるほどシャレている。


■『のんき大将<カラー版>』
 のどかなフランスの田舎町に夏祭の日が来た。村の広場にはいろいろな見世物のテントや屋台が並び、メリーゴーラウンドの賑やかな音楽が子供たちの心を躍らせる。この村を受持っている郵便屋フランソワは自転車に乗ってやって来る。フランソワは顔見知りの若者に連れられ、テントがけの映画館を外からのぞき込む。スクリーンにはアメリカの郵便配達の有様が映っている。飛行機、自動車を動員して目覚しいスピードぶり。フランソワはその気になり、風のように自転車を走らせてスピード配達をする。ところが、あまりに走りすぎて川に落ちてしまい、彼はアメリカ式より自国式が良いと悟る。倉庫で眠っていたカラー版が発見され、光学処理を加えて『新のんき大将』として公開された。


■『左側に気をつけろ』
 ボクシング大会を目前に控えて、チャンピオンの練習相手がダウン。家の手伝いを放り出してボクシングのまねをして遊んでいた農家の息子ロジェが、間に合わせにリングに上がることになった。彼は入門書を片手に珍ファイトを繰り広げるが……。ジャック・タチが26歳頃に主演したルネ・クレマン監督の短編。


■『ぼくの伯父さんの授業』
 ジャック・タチが『プレイタイム』製作中に作った短編。タチ扮する『プレイタイム』のユロ伯父さんが、他の出演者たちにパントマイムの授業をするという内容で、パントの名手タチによる、たばこを吸う、階段につまづく、テニスや乗馬をするなどの演技を見ることができる。


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