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「ダグラス・サーク コレクション」

芸術の秋にふさわしいメロドラマの巨匠の作品がリリースされます。残念ながら日本ではあまり知られていなかった作品をこの機会に是非どうぞ。

究極のメロドラマ群を監督したダグラス・サークの作品を集めたDVDが遂に発売される。
今まで「風と共に散る」(1956)のみが2005年に日本でDVD化されていたが、これでダグラス・サークの重要な作品を網羅することができる。

 最近ではアカデミー賞の主演女優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞の4部門にノミネートされた「エデンより彼方に」(2002)でトッド・ヘインズ監督がオマージュを捧げまくっていたのが、このダグラス・サーク監督だ。「エデンより彼方に」の公開時には、日本では長い間、作品は上映されず(アテネ・フランセなどの上映はあった)にDVDも出ていなかったので、日本ではダグラス・サークへの言及は少なかった。メロドラマの巨匠として、ジャン・リュック・ゴダール、ダニエル・シュミット、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、アキ・カウリスマキ、フランソワ・オゾン、ジム・ジャームッシュなどの映画監督たちから絶大なリスペクトを受けているが、ダグラス・サーク作品の特徴は過剰さである。分かりやすくいえば、昼メロの枠組みで、日本でも最近は過剰な展開の作品があるが、そのおおもとはダグラス・サーク作品なのである。全盛期のハリウッド映画の行き着いたストーリーテリングの一つの完成形なのだが、その監督がデンマーク人の両親の元でハンブルグに生まれ、ドイツとデンマークで育った外国人監督なのも面白い。詳しくは、去年に日本版が発売されたときには驚きかつ嬉しかった本「サーク・オン・サ-ク」を読んでほしい。ダグラス・サーク自身の貴重なインタビュー集で、全作品及びナチスから逃れてアメリカ、そして再びヨーロッパへと移り住んだ波乱の生涯を語り尽くしている。

なお、今回は2回に分けて出る第1弾として以下の3作品が発売される。


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ダグラス・サーク コレクション DVD-BOX(1)

・「僕の彼女はどこ?」(1952)
年老いた億万長者の男は、以前結婚しかけたことのある女性の息子の家に部屋を借りる。その一家に自分の財産を相続させてもいいかを確かめるためだ。匿名で10万ドルを渡してみると一家はとんでもない騒ぎとなる。

・「心のともしび」(1954)
事故で重症を負った富豪の道楽息子は、ある重病の医者のためにあった人工呼吸器によって一命を救われるが、そのために医者は命を落とし、良心の呵責を覚える。そして、道楽息子は医者の妻に金を渡すが…。

・「天の許し給うものすべて」(1955)
2人の子供を持つ未亡人は、若い庭師と恋に落ちるが、そのことが地域社会で波紋を呼び、子供たちは肩身の狭い思いを強いられるが、思わぬ運命が彼女を翻弄する。

第二弾は「自由の旋風」、「翼に賭ける命」、「愛する時と死する時」ほかを収録。こちらも珠玉の作品ばかりだ。この機会に是非、ダグラス・サーク作品を堪能してほしい。


TEXT BY わたなべりんたろう

【著者プロフィール】
映画・音楽・ファションのライター。雑誌「Elle Japon」、「映画秘宝」、「TV Bros」、「ミュージック・マガジン」、「CDジャーナル」などで執筆中。
ここ数年の作品では「トゥモロー・ワールド」をこよなく愛す。

2007年09月25日 17:37

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