【EIGAFAN.COM】From ヨーロッパ
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ja
2007-06-26T10:23:33+09:00
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伝説のロッカー、ロキュメンタリー JOE STRUMMER-THE FUTURE IS UNWRITTEN
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/06/_joe_strummerth.html
カンヌ国際映画祭でも上映され、話題に
2002 年12 月22 日、一人の男がこの世を去り、彼と同時代を過ごした者だけでなく、
多くの者の内に何とも言い難い、穴のようなものをぽっかりと遺した。人々は元には戻ら
ぬと知りながらその穴を埋めようと試みる。各地で焚かれたぼんやりと揺れる火の下、
人々は、彼に関する記憶の破片を拾い集めては、その穴にあてていく。
「…ジョー・ストラマーさんが心臓発作で…」各国をめぐる訃報のモンタージュ、
「White Riot(白い暴動)」のヴォーカル・レコーディングシーンから、50 歳という若さで亡くなっ
た一人のミュージシャンの生涯をロキュメンタリー(ロック・ドキュメンタリー)の監督
、ジュリアン・テンプルが追う。もはや追体験不可能なジョー・ストラマーという男の記憶を
記録する。もしくは、ジョー・ストラマーという記録から、記憶を蘇らせる。
幼少時の映像、家族、外交官の父を持つ彼の各国での時間を思い起させるイメージ、カ
ートゥーン(一時は漫画家になりたかったというジョー)、101'ers(ワン・オー・ワンナーズ)
ステージのアニメーションによる再現、The Clash(ザ・クラッシュ) 時代、The
Mescarelos(ザ・メスカレロス)時代、断片となった映像が、フラッシュ・バックの様に次々と切り替わっていく。
なかには微笑ましい来日シーンも。ジョー自身のナレーション、ジョーの選曲によるラジオ番組、
そしてたくさんの友人達のインタヴュー。彼の目に映ったもの、耳にしたもの、過ごし
た時代背景、人との繋がり方、それらのすべてがパンク・ロックという枠を越えた音楽への接し
方に影響していることがわかる。断片的な映像とジョーと同じ時間を共有した者の語り
により、当時のジョーが置かれていた環境、葛藤までもがかいま見えてくるのだ。
THE CLASHのフロントマンとして
バスキング(路上演奏)から始まり、スクウォッティング(無断居住)仲間で組んだパブ・ロック・バンド101'ers と、セックス・ピストルズとの対バンを機に、ジョーはパンク・ロックに転向し、
ミック・ジョーンズの誘いを受けてザ・クラッシュを結成する。
ザ・クラッシュとしての最初のスタジオ・
シーンの勢いの良さ。アンチ・ナチ・リーグ、ロック・アゲインスト・レイシズムなど
政治的活動も活発に行い、眠たい若者の目を覚ませた。50 年代以降のカウンター・カ
ルチャーに対するパンク精神を生んだ。
彼の死後、テムズ河の岸辺に焚かれた火を囲み集った友人達は、そこにジョーがいるかのように語
り合う。キャンプファイヤーはロンドンだけでなく、まるで聖火リレーのように各地で
焚かれ、その火に誘われるかのように、ジョーを語りに人々がやってくる。敢えてインタヴュイー紹介のテロップを入れなかったのが、ファンとの境界を引かなかったジョーのスタンスを意識してのことだとすれば、私たちもその火の下で、ジョーを語ることを許されているのだろう。
ジョーを語る人々には、元クラッシュのミック・ジョーンズ、トッパー・ヒードン、ジョーの妻ルシ
ンダ、娘のローラ、元恋人パルモリヴ、古くからの友人であるタイモン・ドッグ、ドン・
レッツ、ボノ(U2)、フリーとアンソニー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、ボビー
(プライマル・スクリーム)、コートニー・ラヴ…。
ミュージシャンに限らず、ジム・ジャームッシュ、ジョン・キューザック、マーティン・スコセッシ、スティーヴ・ブシェミ、ジョニー・デップ、ダミアン・ハーストもいる……。
誰もが皆、ジョー・ストラマーの人間臭さに惹かれているのだ。語り口がなんとも優しいのだ。
今、改めて耳にする「I'm so bored with the USA」 はより、皮肉たっぷりに聴こえ、もはや
I'm so bored with the London とも置き換えられそうなほど、ロンドンという都市は
アメリカナイズされてしまった、とこぼす人々も少なくはない。EU
統合により豊かさを求めてロンドンに流れ込む大陸の人々、未だにロンドンに憧れを抱
きやってくる人々。かく言う私はおそらく後者なのであるが、ロンドンの持つ力の実体
は未だ掴めない。
ジョーの死の約一ヶ月前にミック・ジョーンズがメスカレロスのステージに飛び入りで
参加し、再共演が実現している。そして、死の前日、奇しくも12 月21 日に投函されたであろうク
リスマスカードが彼のなくなった日に友人達の元に届く。そこには連なる島々、キャン
プファイヤーに集まる人々が…。
――光が強ければ強いほど、影は色濃く落ちる。
PHOTO、TEXT BY 木下知子
ロンドンでカメラマンアシスタントとして活動中
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eigafan
2007-06-26T10:23:33+09:00
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5月のイベント雑感 カンヌとユーロ・ビジョン2007
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/06/5_1.html
ユーロ・ビジョン2007はヘルシンキから
以前このコラムでも少し紹介したユーロ・ビジョン2007。今年はヘルシンキから5月13日に開催。
全体的にレベルが高く、おもしろいアーティストが多かった今年のユーロ・ビジョン。優勝者はセルビアのMarija Šerifovi(マリジャ・セリフォビ?)で、セルビアの優勝は初めてのこと。セルビア代表には東欧諸国からの票がどっと集まり、みごと優勝。何か民族性に訴えるものがあったのかも。悲しいかな今年もイギリスは人気がなく、ビリ2。まぁ、英国内でも「…」という感じだったので仕方ない、気も。
ところで、前回の覇者となったフィンランドの怪物コスプレ!?ロックバンドLordi(ローディ)、なんと映画の主演が決まり、早くも撮影がスタートしているとか。気になる映画の内容は、彼らの容姿にふさわしいホラーなのだそうで、舞台は病院。監督のPete Riskiは、ローディのミュージックビデオの監督を勤める人物でもあり、主題歌も彼らの作品になるという。ルックスのせいで色物扱いされがちな彼らだが、本業の音楽は良質で評価も高い。この作品が映画として面白そうかどうか?はともかく、久々にユーロ・ビジョン出身のスターが誕生したといえそう。まずは今年の年末、フィンランドにて公開の予定だが、おそらくヨーロッパでも公開されるだろう。
カンヌ国際映画祭レポート
お隣フランスで開催されたカンヌ映画祭。日本同様、BBCでも連日フェスティバル関連のニュースが放送されていた。主要作品のトレーラーやパルムドールの行方はもちろん、おもしろかったのは、ホラー映画の買い付けにやってきた映画バイヤーたちの一日ルポ。数え切れない上映作品のなかからとにかく、1本でも多くの作品を見、ヒットしそうな作品を買い付けなくてはいけない彼ら。無駄なくカンヌで過ごすために、上映のスケジュールと5箇所ある上映館の地図を片手にじっくり計画を立てていく。「午前中はスプラッタものを2つチェックして、午後はサイコキラーがあるな」などなど、駆け足で会場内を闊歩していた。会場内には著名人の姿も多いが、それには見向きもせず、ただひたすらに映画を見続ける。映画祭の華やかさとは裏腹に、開催中は映画関係者にとっては寝る間もない忙しい日。メジャー映画だけではないカンヌ、を感じさせるレポートだった。
これから夏にかけて、映画、音楽のイベントが盛りだくさんのヨーロッパ。楽しみいっぱいの夏の到来を予感させるカンヌ、ユーロ・ビジョンでした。。
TEXT BY シラヤナギリカ]]>
eigafan
2007-06-12T17:04:21+09:00
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始まりました! 第60回カンヌ国際映画祭
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/05/60.html
ベルリン、サンダンス、トロント、ベニスなど、国際的な映画祭のなかでも歴史が古く、メディアの注目度も高いカンヌ国際映画祭。60回目の開催となる今年の映画祭にも、4000を越えるジャーナリストと世界の映画人が詰め掛けた。
オープニングはウォン・カーォイの新作から
17日、オープン上映となった『マイ・ブルーベリー・ナイト』はウォン・カーォイ初の英語作品。カフェの店長(ジュード・ロウ)と失恋した女性客(ノラ・ジョーンズ)が織り成すラブ・ロードムービー、というこの作品だが、ジャーナリストからは「ありきたりなアメリカ映画」という厳しい声もあがり、反応は上々とはいえないようだ。が、オープニング作品がパルム・ドールに選ばれるのもカンヌではよくあること。まだまだ先はわからない。
恒例のレッドカーペットには、この作品で映画デビューしたノラ・ジョーンズとジュード・ロウの姿も。映画のなかのロマンティックなキスシーンさながら(?)2ショットで登場した。このほか、『オーシャンズ13』のジョージ・クルーニー、ブラット・ピット、ジュリア・ロバーツやインド人女優のアイシュワリヤ・ライ(『ジーンズ』)、ジュリエット・ビノシュ等も上映会に現れた。
ハリウッドの豪華絢爛なレッドカーペットと違い、リゾートならではのリラックスした雰囲気も、フレンチ・リビエラのカンヌならでは。20日には、フェスティバル開催60回を祝うため、レッドカーペット近くの3Dスクリーンをバックに英のロックバンドU2のライブパフォーマンスも行われた。海辺のリゾートとU2、は何となく合間見えない気もするが、フランス語で祝いの挨拶するボノに映画ファンも熱狂。「Encore, encore!」の声が上がるほどだったとか。
22作品のなか、どの作品が栄光に輝くか
今年、審査をリードするのは、映画「クィーン」の監督、スティーブン・フリアーズ。英国人監督が審査員長を務めるのは60回の歴史のなかで始めてのことだ。
全22作品(リストはこちら:http://www.festival-cannes.fr/index.php/en/archives/films/year/2007#inCompetition
)には、開催国フランスからは、ガス・ヴァン・サント監督の『パラノイド・パーク』、エミール・クリストリツア監督の『ザ・ラブ・ソングス』『プロミス・ミー・ディス』などがコンペティション作品に選ばれた。
共産主義政権化にあったルーマニアの田舎町が舞台の『4 Months, 3 Weeks and 2 Days』(ルーマニア)は、妊娠した少女とその友達を描いたストーリー。主演女優アナマリア・マリンカは、英BAFTATVアワードで新人女優賞を受賞したルーマニアの女優で、彼女の出演した「セックス・トラフィック」は、ドキュメンタリータッチの問題作だ。
そのほか、昭和天皇をモデルにした『The Sun』が話題になったアレクサンドル・ソクーホフ監督の『アレクサンドリア』、アジアからは『サマリア』『春夏秋冬、そして春』でヨーロッパの映画ファンをうならせたキム・ギドク監督の『ブレス』や日本の河瀬直美監督作品などがリストに上がっている。
コンペティション作品以外で最も話題にあがっているのが、マイケル・ムーア監督の『SICKO』。国ではなく、民間企業が主導権をとるアメリカの医療制度に切り込んだ問題作だ。とにかく、すべてに金次第で収入によって受けられる治療が決まってしまうアメリカの医療制度への疑問符を投げかけると同時に英国やフランスの無料医療制度も取材されており、NHS(英国の医療保険制度)で出産する夫婦のワンシーンも。私自身もその制度で出産をしたばかりなこともあって(実際は無料医療にもさまざまな問題はあるのだけれど)、ぜひ見てみたい一本である。
開催国のフランスはこのところ、パルム・ドールの受賞とはごぶさた。アジア映画の受賞の可能性も高そうな今年。27日の授賞式が楽しみ!
オフィシャルサイト:http://www.festival-cannes.fr/index.php/en
TEXT BY シラヤナギリカ
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eigafan
2007-05-23T11:27:37+09:00
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イギリスの映画関連スポット2
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/05/post_15.html
ヨーロッパの最先端!に触れるならバービカン・センター
世界の金融界を牛じるロンドン東部、ザ・シティ・オブ・ロンドン。高いビルが立ち並ぶオフィス街にありながら、最新のアート、演劇、映画などに触れることが出来るバービカン・センター。
ヨーロッパ最大の文化施設になるバービカンは、蜷川幸雄演出のシェイクスピア劇や村上春樹原作の舞台も上演されたことのある大小2つのシアター、コンサートホール、ギャラリー、映画館、図書館などが複合されている。ここに足を運べば、ヨーロッパの現在の息吹を感じることができる、といっても過言ではない大型のアートスペースなのである。
ちなみにこのバービカン、大人数を集客するべく、大規模な建築物なのだが、1982年の建設当時、チャールズ皇太子に「建築が醜すぎる」とのお叱りを受けたことがある、いわくつきの建物なのだ。個人的には、20年経った今見てもなかなか格好のよい、ユニークな建築だと思うが、当時としては斬新過ぎた、ということか。
世界からの話題作がぞくぞく
今後の上映作品には、ドイツ・ベルリン映画祭でも上映された『AWAY FROM HER』 (カナダ)や80年代のイギリスを描いた『This is England』 などがある。
カナダの女優サラ・ポーリーの初長編映画となる『AWAY FROM HER』は、互いに認め合い、波風もなく結婚生活45年を過ごしてきた老夫婦の物語。そんな生活も妻がアルツハイマーを発症したことで一変。療養所へ入所した妻は、自分を18歳の娘だと思い、別の入所患者に恋をしてしまう。
日本でもアルツハイマーと夫婦愛をテーマにした映画が上映されたが、ハリウッド嫌いで政治活動家でもあるサラ・ポーリーの監督作品だから、フェアリーテールだけでは終われない、夫婦の姿を見せてくれるに違いない。
“80年代のイギリスの空気を見事に再現した”と絶賛される『This is England』は 、『once upon a time in midland』『Twenty four seven』(ともに日本未公開)で知られるシェーン・メドウ監督の実体験を軸にした作品。スキンヘッドの12歳の少年が出会ったギャングの世界は、刑務所帰りのレイシスト・メンバーの出現で、悲惨なものになっていく。自身もノッティンガムのハイスクールをドロップアウトし、主人公の少年同様、父親の居ない少年だったシェーン。不況の只中、人種差別と暴力にまみれたダークサイドのイギリスを、80年代に出来たバービカンで鑑賞するのも乙。時代の気分を満喫できる一本だ。
そのほか、監督業を廃業にするといううわさもあるパトリス・ルコントの『MON MEILLEUR AMI (マイベストフレンズ)など、ヨーロッパの新しい映画もぞくぞく。
最新映画の上映はもちろんのこと、映画制作者のワークショップやトークショーなどのイベントの開催。映画関連商品の販売などが行われることもある。とにかく大きな施設なので、時間のあるときにゆっくりと見て回るといいだろう。
TEXT BY シラヤナギリカ]]>
eigafan
2007-05-08T17:50:59+09:00
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人生の機微にあふれる アイリッシュ映画の今
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/04/post_17.html
The Celetic Heart Festival 2007がハマースミスで開催
ロンドン西部・ハマースミス周辺は、古くからアイルランドの人々の多い地区として知られている。駅周辺にはアイリッシュセンターがあり、ロンドンへやってきた人々の情報交換の場にもなっている。90年代半ば、IRAの爆弾テロが激化していた頃、爆撃の標的にされていたところ、として記憶に残っている人もいるかもしれない。その地区で、恒例のアイルランドの音楽や映画のフェスティバルが催された。
歌あり、ダンスあり、芝居ありのフェスティバル演目のなかで、アイルランドを舞台にした新旧のアイルランド映画も上映。アイルランドの独立戦争を描いた、ケン・ローチ監督の『麦の穂を揺らす風』のほか、病に冒された9歳の少年が奇跡を探して旅に出る『48 ANGELS』、劇作家として世界的に知られるマーティン・マクドナーの“ギネスよりも黒い”ブラックコメディ『Six shooter』 やアイルランド映画をリードするジョン・デイビス監督の『HOBO』などが上映された。
アイルランドの映画には、ハリウッドのような派手な演出もないし、号泣できるような上手ないいシーンもない。それでも見終わったとあとに満足感があるのは、ドキュメンタリーでもコメディでも、その作品が現実の人生や姿を描いているから、ではないだろうか。
映画に見るアイルランドらしさ、とは?
さて、アイルランド人、と聞いて人々とがまず思い浮かべるのは、どんなものだろう。音楽の才に長け、貧しくも信心深く、酒とギネスを愛する、そんなところだろうか。最近の映画で言えば、アラン・パーカー監督の『コミットメンツ』や『アンジェラの灰』が、その国民性を感じさせるものとしてあげられる。しかし、アイルランドを舞台にしたもの以外にも、アイルランド人が登場するものは少なくない。
たとえば、『タイタニック』。映画に登場する労働者風の人たちは、アメリカへ夢を抱いて渡ったアイルランド系移民だ。サウンドトラックにもアイルランド音楽(やアイリッシュダンス)がふんだんに使われていたし、死を恐れずに船室で神に召されることを選んだ、(おそらく)信心深い母は、幼い娘にケルトの神話を聞かせていた。もうひとつ、ラッセル・クロウが家族を愛するボクサーを演じた『シンデレラ・マン』もアイルランドの香り漂う作品。実在した主人公のジェームズ・ブラドックはNY生まれらしいが、おそらくはアイルランド系移民2世ではないか、と思う。映画のなかでははっきりとは明言されていなかった(と思う)けれど、彼の復活試合のとき、アイルランドの旗が会場中で翻っていたのがその根拠。さらに言えば、アイルランド人はどこにいても故郷を忘れないし、決して諦めない不屈の精神は、アイルランド人の真骨頂! そしてどんなに貧しくとも家族の絆は深~いのである。
“ステレオタイプ”といってしまえばそれまでだが、『コミットメンツ』にあるように、白人のなかの黒人として扱われたアイルランド人は、自国を愛す、誇り高き民族なのだ。英語を話す人たちとして英国人と混同されがちだが、うっかり一緒にしてしまうときついお叱りを受けてしまう。
映画の本筋とは関係ないが、登場人物の“国民性”に注目するのも、また違った映画の楽しみ方、かもしれない。
TEXT BY シラヤナギリカ]]>
eigafan
2007-04-24T17:28:59+09:00
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「ひつじのショーン」TVに登場!
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/04/tv_1.html
農場のひつじたちが繰り広げる愉快なストーリー
その名も「ひつじのショーン」(原題:「Shaun The Sheep」)。1話7分程度の超ショート、完結ストーリーで、好奇心旺盛なショーンが毎回楽しませてくれる。登場人(?)物は、「ウォレスとグロミット」の時よりさらに活躍度の増したショーンとその仲間のひつじたち。その中でも、おしゃぶりをくわえた赤ちゃんひつじのティミーは、愛嬌たっぷり。そして、農夫とひつじたちを見守る牧羊犬のビッツァー、その他にちょっと意地悪で食いしん坊のブタやニワトリなど、あらゆる農場の動物たちが登場する。動物たちが主人公の話なので台詞はない。ひつじは、「メェエエエエ~ッ」とか「バァ~ッ」とかのひつじ語に、犬のビッツァーも「ブワゥ」と犬語で返答。
農夫でさえも「ウ~ムゥ」という音しか発さず、ほとんど「ミスター・ビーン」状態である。「台詞がない農場の動物ストーリーのいったいどこが面白いのだ?」とお考えの方、ご心配はご無用だ。いたずら度満点で賢く、器用なショーンは、何でもやってのけてくれる。例えば、フリスビーやサッカーのドリブルはお手のもの。ディスコではDJをしたり踊りまくったり、時には「ミッション・インポッシブル」さながらの忍び込みをするなど、毎回さまざまな特技を披露してくれるのだ。いつもウォークマンを聴いている犬のビッツァーはひつじたちに優しくて、寝付けられない嵐の晩には彼らのために本を(もちろん犬語で)読んでくれたりもする。子供用として作られてはいるけれど、大人も笑えるネタが多く、「ロッキー」や「大脱走」などの映画のパロディもあるので、映画ファンから笑いが漏れることは間違いなし。グロミット同様、言葉は話さないけれど動きが細やかで、何を考えているかは一目瞭然なのである。
また、台詞が無いと言うことには、大きな利点がある。それは、吹き替えも字幕もなしで、どこの国の人々にも理解が可能であるということ。そのため、既に世界中72カ国の国々での放送が決定している。うれしいことに、日本もしっかりその中に含まれているからご安心を!NHK教育テレビで、今月8日から放送がスタートしたばかりだ。うっかり見逃してしまった方も、全部で40話作られているのでまだまだ大丈夫。ショーンの楽しさは、じっくり味わっていただける。日本語版のホームページに加え、英語のオフィシャル・サイトもある。傑作シーンを覗き見できるビデオクリップ・コーナーやゲームのほか、ダウンロード・コーナーもあるので、是非お立ち寄りいただきたい。
「ひつじのショーン」日本語サイト
英語のオフィシャル・サイト
しかし、コンピュータを使わずに、クレイ人形を1コマずつ手で動かして撮影するこのストップ・フレーム・アニメーション手法。楽しそうではあるが、かなり忍耐の要る作業である。今回、「ひつじのショーン」を撮るためには1秒間に25コマが必要で、つまり、1分間の動きを撮るためには1,500回も動物たちを動かす必要があるのだとか。1日中かかってたった7秒間分の撮影が出来るため、7分足らずの1話分を制作するには、全部で約2ヶ月かかるのだそうだ。とはいえ、完成までに5年の歳月を要した、長編映画の「ウォレスとグロミット 野菜畑で大ピンチ!(原題:「Wallece & Gromit The Curse Of The Were-Rabbit」)と比べると、その3分の1の時間で作れたというのだから、かなりスピード・アップされていることになる。キャラクターの中で扱うのが一番大変なのは犬のビッツァーであるそうで、その表情や動作を作るアニメーターたち泣かせであるらしい。是非、制作者たちの苦労と努力を噛み締めて、じっくりと鑑賞したいものである。
アーダマンの新しい旅立ち
ところで、2ヶ月ほど前に、その制作会社、アードマン(Aardman)に関する気になるニュースがあった。昨年のアカデミー賞で「最優秀アニメーション」作品として見事オスカーを受賞した「ウォレスとグロミット 野菜畑で大ピンチ!」をアードマンと共同制作したドリーム・ワークス社が、突如契約を打切ったのだった。アードマンもさぞがっかりしていることだろうと心配したが、さもありなん!その解約も早々に、今度はソニー・ピクチャーズと3年間の共同開発契約を結んだというニュースが飛び込んできた!現在、アードマンは、3本のストップ・フレーム・アニメーションと2本のCGアニメーションを制作中だが、ソニーはその全ての開発に携わっていくそうだ。ストップ・フレーム・アニメーション1本の制作費は、約6,000万ドルだそうだから、ソニーのその太っ腹加減がわかると言うもの。何はともあれ、「ウォレスとグロミット」ファンにとっては、願ってもない好ニュース!早くも新作が待ち遠しい。
TEXT BY 岬 遥奈(みさき・はるな)
【著者プロフィール】岬 遥奈(みさき・はるな)
ロンドン在住歴、早10年以上のフリーランス・ライター。また、ガーデン・デザイナーの顔も持つ。ホラー、コメディ、シリアスもの、和・洋・中、何でもゴザレの映画好き。 ]]>
eigafan
2007-04-11T21:19:25+09:00
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ヨーロッパ版・紅白歌合戦!? ユーロ・ヴィジョン・コンテストにまつわるエトセトラ
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/03/post_18.html
今年はフィンランド・ヘルシンキで開催!
毎年5月、ヨーロッパでは、各国のお茶の間を賑わす歌の祭典「ユーロ・ヴィジョン・コンテスト」が行われる。日本での知名度はさほど高くないようだが、その歴史は古く、今年でなんと52回目の開催となる。欧州全域でTV放送されるこの歌番組は、欧州版の紅白歌合戦とも言われ(?)、参加国38カ国、視聴者数10万人!以上というビッグイベント。英国でも「今日はユーロ・ヴィジョンだから早く帰って、TV見ないとね」なんて会話が交わされる定番の音楽コンテストである。
コンテストの内容は、シンプルで、予めくじ引きで決まった順番で参加する各国の代表が一曲ずつ楽曲を披露。その後、携帯電話などで視聴者から投票を募り(視聴者は自国以外に投票するルールがある)、一番、人気の高かった組が優勝。優勝者が最後にアンコールでステージに立つ。
最近は「ティーン向けの音楽ばかり」との批評もあるもの、過去には、仏セルジュ・ゲンズブール提供の楽曲で優勝したフランス・ギャルやアバ(スウェーデン)、セリーヌ・ディオン(スイス)などの実力者を産出している、なかなか由緒正しい音楽祭なのだ。
毎年、開催国が変わるユーロ・ヴィジョンだが、2007年の開催地はフィンランド。前年度優勝者が出た国が毎年、開催国となるため、昨年の優勝者を排出したフィンランドに白羽の矢が立ったのだ。栄えある昨年の優勝者はイメージからは程遠い、怪物風ロックバンド『ローディ』。以前は「母国語で歌う」ことがルールとされていたが、最近は一般ウケしやすい英語で歌う出演者が増えてきた。とはいえ、流行りにとらわれず伝統的な音楽を演奏するバンドも多く、それぞれのお国柄を感じさせる音楽が聴けるのも、楽しいところだ。
モリッシー参戦? ウワサが飛び交う
5月の本選を前に、イギリス国内では予選が開催。人気ハードロックブループ「ダークネス」をドラック中毒が原因で解雇された元メンバーが出場したり(落選したものの「差別だ!」と激怒して世間を騒がせた)、BBCのリビングアイコンミュージシャン部門で1位になったモリッシーが参加するというウワサが流れたり、すでにゴシップ誌やTVで大きな話題となっている。
フランスやイタリア、ドイツと並び、イギリスは無条件で本選に参加できる4カ国のひとつだが、優勝には手が届かない。しかもここ数年はイラクへの派兵がヨーロッパから批判を受けているせいか、投票数が激減。かつては優勝の常連だっただけに、今年の本選がどうなるか、今から楽しみ!
TEXT BY シラヤナギリカ]]>
eigafan
2007-03-28T15:29:47+09:00
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必見!あくまで英国が舞台の警察ドラマ
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/03/post_19.html
eigafan読者の皆様、はじめまして。英国発の映画関連情報を書かせていただくことになりました、岬 遥奈です。楽しい情報をお届けできるよう努めますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今回は、現在英国で放映中のドラマの中から、機会があれば是非ご覧頂きたい警察ものの作品2本を、映画とTVからご紹介します。
英国の片田舎で巻き起こる捕り物帳劇
現在、英国の映画館で放映続投中の作品の1つに英国映画の「ホット・ファズ(原題)」がある。あらすじは、ロンドンから田舎町に飛ばされたやり手の刑事が、お人好しの地元警官と組んで、町に隠された悪を暴いていく警察ものコメディ。この映画を作ったのは、脚本・監督を務めるエドガー・ライトと、同じく脚本と主演のサイモン・ペグのコンビである。彼らが、「警察ものに良くあるパターンを、コッテコテに描き出した」と表現するだけあって、「あるある、こんなシーン」と思いながら微笑ませてくれる笑い満載の映画である。しかし、警察ものといっても、アメリカのそれとはかなり異なり、カーチェイスなどは登場しない。田舎では、主人公は馬にまたがって武装するのだ。銃撃シーンはあるにはあるが、コメディネタになる程度。これは、あくまで英国の田舎町が舞台の映画なのである。
ところで、この制作コンビを組むエドガー・ライトと、サイモン・ペグは、数年前に「スペース」と言うTVコメディ・ドラマを作った。オタクの青年と同居人、けったいな友人等が繰り広げる妙なストーリーだった。元々自身が映画ファン・オタクであった彼らは、自分たちの生活をそのままドラマにしてしまったのである。これで認められた彼らは、次に、アメリカでもヒットした「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004)で映画界にデビューする。ホラー映画ファンならば、このタイトルにピーンとくるはず。「ドーン・オブ・ザ・デッド」(1978)、「デイ・オブ・ザ・デッド」(1985)等、ゾンビーウヨウヨのアメリカ恐怖映画のパロディ版で、ロンドンをゾンビーだらけにしてしまう映画なのだ。ただ、他のゾンビーものと異なるのは、「誰もが好きな、ロマンティック、ゾンビー、コメディの要素を全て抱き込んだ作品(通称「ロム・ゾム・コム」)にしたかった」と彼らが言うように、ロマンスも何でもありでとても面白い。英国人ならではのブラックユーモアとうまい間の取り方、ウィットに飛んでいる作品で、エンディングのオチは特に光っていて心温まる。
カルチャー・ギャップが最大の見所
そして今、注目したいもう一つの英国警察ものドラマに「ライフ・オン・マーズ(原題)」がある。こちらは、BBC放映のテレビドラマだが、昨年夏に第一シリーズを放映して大好評を得、即第2シリーズの制作が決定された。その待ち焦がれた第2シリーズが、数週間前に放映開始されたのである。あらすじは、現代に生きる刑事が交通事故に遭ってこん睡状態に陥り、迷い込んだ70年代で活躍するという物語。舞台はマンチェスター。拷問に近い尋問や暴言、セクハラ、人種差別、証拠隠滅など何でもありだった当時の警察で、コンピューターなし、CCTVなし、マジックミラーがない対面式の容疑者判定など、現代では考えられない状況に戸惑い苦労しながらも、21世紀に帰れるように前向きに生きる主人公サム・タイラーを、ジョン・シィムが好演している。彼は、「ヒューマン・トラフィック」(1999)や「24アワー・パーティ・ピープル」(2002)に出演した以外、映画ではまだ当たり役を得ていないが、TVドラマでは優れた作品に数多く出演している。
しかし、少々不安なのは、このドラマもリメイクしてアメリカで放映するという話を聞いたこと。特に70年代の暗い英国が舞台だから、ストーリーも登場人物も活きているのだ。これが、アメリカに渡ってしまったら、「スタスキー&ハッチ」になってしまうのは目に見えている。英国で受けたからとアメリカ版にリメイクされ海を渡ったものには過去にも、「カップリング」や「オフィス」(これは、米版も受けたらしいけれど、英国オリジナル版と比べると…)などがあるけれど、たいていはイマイチ。「アメリカ人よ、どうか他国の文化を乗っ取らず、そのままの形で受け入れるようになっておくれ」と願わざるにはいられない。
ところで余談だが、上記で紹介した2人の役者、サイモン・ペグとジョン・シィムは、共にロンドンのN8(第8北部地域という意味の、日本では郵便番号にあたる地域コード)に居住している。ここには、彼らのほかにもマーティン・フリーマンやその他多くの役者が住んでいるのだが、実は何を隠そうこの筆者の居住地でもあり、ショッピング中の役者たちを見かけることがよくある。前述の映画「ショーン・オブ・ザ・デッド」は、長年N8地区に住むサイモン・ペグが、「是非、我が町を映画に」と、舞台もロケーションもN8にしてしまったこだわりの作品であった。筆者は、地元近くの映画館でこの映画を鑑賞したのだが、我が家からすぐの通りやタウン・ホールにゾンビーが現れたり、よく利用するミニ・スーパーが血塗られたりと、我が町が銀幕に映し出される度に、同じくN8の住民と思われるグループから歓声が起こり、妙に熱い地元意識が芽生えて楽しかった作品である。
TEXT BY 岬 遥奈(みさき・はるな)
★プロフィール★
ロンドン在住歴、早10年以上のフリーランス・ライター。また、ガーデン・デザイナーの顔も持つ。ホラー、コメディ、シリアスもの、和・洋・中、何でもゴザレの映画好き。 ]]>
eigafan
2007-03-13T19:51:47+09:00
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毎度お騒がせのリアリティショー ビッグブラザーが社会問題に
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/03/post_20.html
ボリウッドスターへの差別発言で苦情が3万件!
大人気リアリティショーのビッグブラザーは、数名の一般人を外の世界とは隔離されたひとつ屋根の下で生活させ、その様子を監視カメラで観察する、という番組。監視映像を見た視聴者が毎週ひとりずつ「こいつ、気にいらん!」という人物を投票、最後まで残った人物が優勝するというたわいのない内容である。問題となった今回のビッグブラザーは、いわゆるセレビレティ・ビッグブラザーで、そこそこに有名人(といってもB級だったり、落ち目だったりする、ちょっとおバカなタレント)を集めた有名人バージョンだった。
苦情の元になったのは、ハウスメイト(ショーに参加している人たちの総称)間のいじめで、美人でいい階級出身のインド人女優シルバ・シエティーに対して、他の女性参加者が差別的発言をした、というもの。その内容は「インド人はごはんを手で食べるのよね、あれ、それは中国人だったっけ?」と馬鹿にしたとか(彼女の名前を呼ばずに)「インド人さん」と呼んだとか、小学生レベルの幼稚さなのだが、いじめ首謀者のジェイドが執拗にいやみを繰り返したため、視聴者からの苦情が殺到した模様。
この発言の主であるジェイドは、元々は素人版ビッグブラザーの出演者で、無知さ、おバカっぽさ、育ちの悪さ、で有名になった人物。特に芸もないスキャンダルタレントだけに、「話題がほしい」「キャラを立たせたい」が故の悪乗り、、、だったのかもしれない。
インド首相からも苦言
人種差別には断固としてNOだけれど、テレビ、新聞などの過熱報道にもちょっと疑問が残るところ。そもそもそこまで大騒ぎするほどのことだったのかどうか。
たまたま英国の大使がインドに訪問中だったこともあってか、報道が過熱した(BBCのニュースを見て、「BBCでやるくらいだから大問題なんだなぁ」と思った私のように)が、 結局、優勝したのはいじめにあったシルバだったし、ジェイドもすぐに「いじめてごめんなさい」と各タブロイドに平謝りに謝って事なきを得たし、すべては予定調和だったのでは?
ブ゙レア首相の「その番組を見てないから…(でも人種差別には反対だ)」というコメントのように、見てない人にとっては案外、どうでもいい話だった、と、番組が終わった今となっては思えてくるのだ。
とはいえ、いまや勤勉で優秀なインド系移民の2世、3世に支えられているといってもいい英国社会。移民だが、努力で豊かな暮らしを手に入れたインド系へのやっかみもあるのだろうし、多民族国家になりつつあるイギリスのシリアスな面がおふざけ番組にも現れてきたのかも。
ところで、私が気になったのは、このボリウッドスターのフィルムをまったく見たことがない、という点。どんなものに出ているのか、ボリウッドに詳しい方、教えて欲しい!
TEXT BY シラヤナギリカ
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eigafan
2007-03-01T13:01:43+09:00
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英国アカデミー、BAFTA アワード開催
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/02/bafta_1.html
シンプルな装いに大女優の貫禄
毎年恒例の映画行事、BAFTAアワード。会場となったロイヤルオペラハウスには、たくさんの映画ファンがレッドカーペットを歩くスターを一目見ようと集まった。
前回のコラムに書いたように、今回、もっとも話題をさらったのは、3人の名英国女優。超シンプルな黒いドレスに身を包んだジュディ・ディンチ、同じく黒のBEN DE LISI(イギリスのデザイナー)のドレスを着たケイト・ウィンスレット、そして、女王よろしく、簡素で上品な色使いのロングドレスを着たヘレン・ミランの3人。ちなみにヘレンのドレスをデザインしたJACQUES AZAGURYは、故ダイアナ妃が愛したデザイナーのひとりでもある。深い意味はないだろうが、気品あふれるデザインは女王を演じた彼女にはふさわしい一着と言えるのかも。
それぞれのキャラクターにぴったりの完璧なドレス選びで大女優の威厳をアピールした3人に比べ、イマイチの評価を得てしまったアクターもいる。
『プロデューサー』で新人にノミネートされたクリスティン・ランガンのムラサキの光沢のあるドレスには「似合ってないかも」、ふだんは「ベストドレッサー」の? カイリー・ミノーグにも「派手すぎ」との声があがった。
http://www.bafta.org/site/jsp/index.jsp
女王強し?
ヘレン・ミランが堂々の受賞
さて、肝心の授賞式では大方の予想通り、「クイーン」が圧勝。作品賞は「クイーン」、主演女優賞はヘレン・ミランが受賞した。受賞式のスピーチでは、涙を浮かべ、興奮を隠し切れない様子だったヘレン。「女優たちの活躍が目立ったシーズンに受賞が出来て光栄だ」と語った。教師とティーンの教え子の不適切な関係を描いた問題作「Notes on a Scandal」でノミネートされていたジュディ・ディンチは残念ながら受賞ならず。「リトル・チルドレン」のケイトも受賞はならなかった。
このほか、英国作品賞に『ザ・ラスト・キング・オブ・スコットランド』、主演男優賞には、レッドカーペットでもスマートな着こなしが評価された
フォレスト・ウティッカーが選ばれた。(同伴された婦人のドレスは、いまひとつパッとしなかった、らしいが…)
いつも以上に力作が揃った今年のBAFTA。粒ぞろいの英国映画は、オスカーでも英国旋風を巻き起こせるか? 大いに期待できそうだ。
受賞作品一覧はこちら
TEXT BY シラヤナギリカ
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eigafan
2007-02-15T13:50:30+09:00
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イギリス女優の底力? オスカーに3女優がノミネート
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/01/3_1.html
2月末のオスカーに向けて、ノミネート作品や俳優が発表された。今回は、イギリス女優勢がノミネートされたせいか、英国内での注目度もアップ。さて、どうなるか?
まるでそっくりさん!?『The Queen』を演じたヘレン・ミレン
ここのところ、あまり印象深い作品の少なかったイギリス映画だが、今年は要注目? 英国女優が主演女優賞候補に選ばれ、久々のよいニュースに話題が集まった。
オスカーの常連、メリル・ストリープやペネロペと賞を争うことになったのは、ケイト・ウィンスレット、ジュディ・ディンチ、ヘレン・ミランの3人。なかでも注目だったのが、今年の夏に公開された「THE QUEEN」でエリザベス女王を演じたヘレン・ミラン。これまでにも何度かオスカーにノミネートされているヘレン・ミランだが、昨年のベネチア国際映画祭女優賞に続く、受賞なるか?
この国の人々はともかく、女王の映画がどれくらい世界的な興味をそそるものなのかわからなかったが、オーストラリアやニュージーランドのみならず、結構な好評価のようで、国内でも期待を集めているようだ。
映画は10年前、ダイアナ元英皇太子妃がパリで自動車事故で亡くなった直後から始まり、その当時の王室に起こった衝撃や苦悩が描かれている。10年経った今でも、ダイアナ関連のTVドキュメンタリーが放映されたり、事故の原因についての新情報が新聞記事になったり。ダイアナの恋人のお父さん(ハロッズ・オーナー)が王室批判したりと、国内のダイアナ・ゴシップはもはやメディアの定番記事だ。映画ポスターを駅の構内で見かけたときはヘレン・ミランのなりきりぶりも驚きだったが、「ついに映画にまで…」とちょっとびっくりしたものだ。
歴史というには日が浅い衝撃的なニュースをモチーフにしているだけに、その評価は微妙だと思われたが、ヘレン・ミランの熱演への評価は高く、今回のノミネートに結びついたようだ。ヘレンは、ノミネートされたことに「とても光栄です」と笑顔で答えつつ、実在の人物(しかも現存で、誰もが知っている)の人物を演じたことを、「(女王を)演じるのはとても難しかった」としながら「私が演じたことで、ポンド札に印刷された女王ではなく、女性として、人としての彼女を感情を伝えられたらよいけれど」と語った。
『リトル・チルドレン』を最後に休業のウワサもあるケイト・ウィンスレット、BAFTAの常連で今回は『Notes on a Scandal』でノミネートされたジュディ・ディンチも候補に入っている。とくにジュディ・リンチは、初のノミネートだけにその行方が気になるところ。3人のうち、誰が受賞しても盛り上がること間違いナシ、今年はイギリスにいながらも、これまで以上に2月25日の発表が楽しみだ。
ノミネート作品リストはこちら
TEXT BY シラヤナギリカ
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eigafan
2007-01-30T12:08:37+09:00
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景気のよさも一長一短? 変わっていくイギリス映画1
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2007/01/post_21.html
ケン・ローチといえば、最近は歴史ものや9.11のドキュメンタリー映画などで評価を得ていますが、僕が、イギリスにあこがれるきっかけにもなった80年代~90年代には、イギリスの労働者階級、貧しくても誠実に、一生懸命生きる姿を描いた小編を撮っていました。
なかでも印象的だったのは、93年に作成された『レイニング・ストーンズ』。カンヌで審査員賞を受賞し、イギリスでは“弱者の目線で社会を批判する”ケン・ローチの代表作とされています。
失業中の主人公が娘のカトリック教会でのコミュニオンのためにドレスを買ってやろうと思い立ち、羊泥棒をしたり、クラブのバウンサー(用心棒)をしたりするものの、どれもうまく行かず。最終的には高利貸しの金を借りてしまう、というストーリーは、労働者階級の暮らしを大げさな演出なく、ストレートに表現されています。ちなみにタイトルの『レイニング・ストーン』は、失業中の主人公の生活=氷雨が降っているような暮らしを意味しています。
日本でも公開されたので、観た方も多いかと思いますが、正直、この作品を日本で見た当時は、「ピンと来なかった」というのが本音でした。「お金がないなら、貸衣装でもいいし、無理することないのに」と、主人公の気持ちに入り込めない気持ちを持ったものです。しかし、実際に今、イギリスに暮らしてみて、そして自分自身が娘を持つ父親になってみて、「あぁ、わかる」という心境になりました。
僕がイギリスに来たのは、この映画の作られた2年後の95年でした。初めてイギリスの街に着いたときには映画のまま、道路で車が燃やされていたり、煤をかぶった街並みも、曇りがちの空もまさに灰色。今ではすっかり華やかなロンドンの中心地に立ち、「なんて貧しい、暗い国にきてしまったんだろう」と思って後悔しきりでしたが、トニー・ブレアが就任した頃から、まるで違う国になったかのような変貌を遂げています。映画の世界でも、昔のイギリス映画のような深みのある人生を感じさせるものが減り、ハリー・ポッターやハリウッド調のものが目立っている(それはそれでよいと思うけれど)様な気がします。
相変わらず階級社会ではあるものの、労働者もお金を持ち、不動産や株でもうけることを覚えた今、昔のイギリスの持っていた魅力も手放そうとしているようで、僕には少し残念に思えます。この映画に描かれているような清貧な人々は、いまやイギリスにはいなくなっているのかもしれません。
豊かになるのはいいのですが、ケン・ローチの世界が描く、貧しくも清い心、温かく優しい姿勢を忘れてほしくない、としみじみ思います。ケン・ローチが労働者の映画を描かないのも、この国の状況を表している、そんな気もするのです。
TEXT BY 佐藤まさや
★プロフィール★
大阪市出身。ロンドンでスタジオ・グリーンライツを主宰。渡英11年目。学生時代は映画制作にも携わっていたヨーロッパ映画に造詣が深い、フォトグラファー。
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eigafan
2007-01-15T19:22:34+09:00
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イギリス人が選ぶ、アイコン英国人ベスト10
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2006/12/10_1.html
「Living Icon」と題した“カルチャーアイコン・英国人を選ぶ”投票が実施されている。
今回、投票された有名人は500人以上で、なかでも投票率の高い10人がアイコンとしてノミネートされている。その10人とは、シンガーのデヴィト・ボウイやモリッシー、巨額の離婚訴訟で世間をにぎわしているポール・マッカトニー、デザイナーのヴィヴィアン・ウェストウッド、英国アカデミー賞BAFTAの司会者でもおなじみのスティーブン・フライ、『リトル・ヴォイス』のマイケル・ケインなどなど。
カルチャー・アイコンだけあって、個性的で才能豊かな面々ばかりだが、なかにはコカイン騒動のあったケイト・モスなどもランクイン。すっかり汚れたイメージになったものとばかり思っていたが、相変わらずCMにもバンバン出ているし、ファッション・アイコンとしての地位はまったく不動。
それにしても、モスにしてもツィッギーにしても、イギリス人は痩せて、あまりきれいとはいいがたい、はっきりいえばファニーフェイスな女に、どうしようもなくセクシーさを感じる民族なのだろうか。モスの場合は、暗い生い立ちと大成功のギャップが好まれているような気もする。
さらに言えば、モリッシーやらボウイが堂々とノミネートされているところもイギリスらしい。ゲイだろうがなんだろうが、その分野で優れていたら関係ないのだろう、きっと。
人気や華やかさ以外にも注目!
俳優。司会者、コメディアン、文筆業等、多彩な才能でノミネートされているステファン・フライは、ロンドンの高級住宅地ハムステッド出身で、いわゆるええとこのボンボンだが、夏に放映された同じBBC2のドキュメンタリー「Comedian Fry reveals suicide bid」 では、幼少期から極度のmanic depression(躁うつ病)だということをカミングアウトしていた。ウェストエンドの芝居を抜け出し、自殺未遂を企てた経験もあるのだそうで、役者としての成功や名声の裏にあるとんでもなく「ダーク」な面をこれでもか!というくらいにさらけ出していたのが、印象的だった。
ドキュメンタリーの回想シーンで、良家の子女が集まるボーディングスクールを飛び出したティーンの彼は親のカードで高級ホテルに滞在し、豪遊の限りを尽くす(後につかまって服役)。やがて、あとになって「あれは病気の症状だった」と気がついたのだという。番組では、同じ病に苦しんでいるというハリウッドセレブ(『スター・ウォーズ』女優のキャリー・フィッシャーや俳優のリチャード・ドレイファス)を訪ねて話を効き、「病気になったことは、悪いことばかりではないのではないか」と自問するところで終わっている。
昨年のBAFTA授賞式のときも、かなり悪い状態だったらしいが、私を始めお茶の間の人々は。おそらく微塵もそんな気配を感じなかったに違いない。
このドキュメンタリーの視聴率がどうだったかは知らないが、私のなかでフライへの「偉いなぁ」感がアップしたのは間違いない。セレブだ、なんだと華やかなのも楽しいが、カルチャー界の人々には、人間としての苦悩や深遠さがあって然るべき! というわけで、個人的にはフライに一票入れたい今回の投票である。
英国カルチャーの厚みを感じさせるこの投票結果は、12月7日に発表の予定。結果が楽しみだ。
TEXT BY シラヤナギリカ ]]>
eigafan
2006-12-06T15:01:16+09:00
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英コメディアン presents 過激な毒舌MOVIE
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2006/11/post_22.html
笑いの本場、イギリス
ここ数年、日本では関西を中心しとしたお笑い芸人さんがブームとか(もしかすると、もう下火?)。ドラマや映画界に進出する芸人さんも少なくないようだ。
さて、イギリス・ロンドンといえば、ヨーロッパはもちろん、世界のコメディの本場。ロンドンには、笑いに厳しい英国人相手に格闘している若きコメディアンが集まっているのだ。
そんな卵コメディアンの登竜門に当たるのが、日本の演芸場に当たるコメディクラブ。パブ内に設けられたその舞台では、お子様お断りのキツいジョークや、ちょっと頭を捻らないと笑えないマニアなお笑い世界が繰り広げられている。テレビで冠番組を持つような人気のコメディアンにも、コメディクラブでの下積み経験を持つものが多く、クラブの舞台で笑いを取ることはサクセスへの第一歩なのである。
そこまでやって大丈夫? ビターな笑い『ボラット』
これまでイギリス発のコメディ映画といえば、Mr.BEANやモンティパイソンが有名だったが、ただいま英国内で公開中の『ボラット BORAT』は英国コメディ映画の歴史を塗り替えそうな話題作である。
映画のプロデューサーと主役を務めるのは、人気のTVコメディショー「Da Ali Show」のサシャ・バロン・コーエン。映画の主役は、このショーに登場するカザフスタン出身の偽ジャーナリスト・ボラットで、なまりたっぷりの英語を話し、社交性を無視した態度でアメリカ各地を旅していく。
このショーのおもしろいところは、無知なのか過激なのかわからない、とぼけたボラットのインタビューに油断して、”US and A(番組内ではいつもこのように説明される)”の著名人や一般人がついつい「本音」をもらしてしまうところにある。
私が見ていた回のTVショーでは、アメリカの南部のバーで「ジューイッシュ(ユダヤ人)は金が大好き、金をひとりじめ♪」と歌って観客の喝采をあびたり、アメリカの結婚事情の取材と称して結婚相談所に行き、「好みの女性は顔がよくて、農業ができること。あとはカラダがいいこと!」「アメリカでは、女性に何をあげればHできますか?」と率直すぎる発言で、相談員を無言にさせたり。
かなり、田舎もの丸出しで垢抜けないキャラクターのボラットだが、演じるサシャ・バロン・コーエンは、実はオックスフォード出身の超秀才で、最近ではハリウッドのアニメーション映画の声優を担当。やはり、切れる頭と才能がないと、ここまでシニックで切れ味の鋭いギャグは生み出せないのかも?
笑うのがためらわれるような性的、差別的、毒々しいジョークも飛び交うボラットのショー。映画になると、そのあたりの毒気はどうなってしまうのか、気になるところだが、魅力であるギリギリの“あぶなっかしさ”は健在のよう。アメリカ国内ではすでに公開され、意外にも興行成績は良好で、各地で爆笑の渦を巻き起こしているとか。好き嫌いの分かれそうな笑いのせいか、日本での公開は未定のようだが、はまる人にははまること間違いなし!イギリス人の笑いへの寛容さ(皮肉っぽさ)が感じられる一作である。
TEXT BY シラヤナギリカ ]]>
eigafan
2006-11-14T20:32:06+09:00
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渋め、文芸ドラマでイギリスの秋
http://www.eigafan.com/yomueiga/from_eu/archives/2006/10/post_23.html
THE OSの影響? おぼこい高校生が激減
週末、テレビをつけるときらびやかなセレブ・ティーンがきゃぁきゃあ、とプールで泳ぐ映像が目に入った。その瞬間「あ、これはイギリスのドラマじゃないね」と気づく私。年がら年中天候の悪いイギリスでは、たとえ庭にプールがあるお金持ちでも、そうそう泳ぐ機会などあるわけがないのだ。案の定、それは常夏(かどうかはしらないけど)のLAドラマ、THE OCであった。
イタリアやフランスなど、ヨーロッパ各国で放映中のこのドラマ、個人的には「21世紀版の『ビバヒル青春白書』かぁ」という程度にしか興味がわかないが、どうもイギリス国内では、大人気らしく、英国ティーンの間では「あんな風になりたいわ…」という憧れのドラマだという。
私が見ていた番組は、こうした米国ドラマはティーンに悪影響だ!というマジメなドキュメンタリーだったのだが、番組によれば、ファッション雑誌の「○○みたいになれるコーディネート」とメイクをまねし、パーティでドラッグやアルコールに手を染める、セレブ憧れのおばかさんがイギリス中に大増殖しているのだという。フットボーラー、ルーニーの恋人のコリーンがどこかの新聞で、セレブのまねをするティーンへの警告として「高い服を着なくても素敵になれるわ」とコメントしていたこともあったし(…全身ブランドまみれの彼女が言っても説得力は0なのだが)、ティーンのUSA憧れは実は深刻な問題なのかもしれない。
古典・文芸ドラマ『ジェーン・エア』
さて、その一方でイギリスらしい古典ドラマや長寿ドラマ『イーストエンダー』『コロネーションストリート』も健在。正直、毎回いろいろな問題が起きては解決、起きては解決する、この手のドラマ(英国版『渡る世間は…』のような?)には食指が動かなかったのだが、ティーンのドラマについていけない歳になった今、次に進むべきはこの道のような気もしないでもない。
この秋に放映中の古典ドラマの注目株といえば、ブロンテ原作の『ジェーン・エア』。小さい頃から苦労の多い人生を歩んできたジェーンが教師の職を得てお屋敷で暮らしだすのだが、そこでは不可思議な出来事が…。
BBCの文芸ドラマといえば、映画にもなった『高慢と偏見』が有名だが(主演のコリン・ファースは『ブリジット・ジョーンズの日記』にも出演した正統派二枚目)、今秋の『ジェーン・エア』もさすがにBBCらしいマジメかつ見ごたえのあるドラマである。ジェーン役のルース・ウィルソンは、クラッシクなコスチュームもしっくり着こなす普遍的な色気と美しさがあり、インテリおばさんだけでなく、世の男性にも好評のよう。これまでは何本かのショートフィルムと舞台が活動の場だった彼女だが、これを機にTVスターへの道を歩くことになるか?
こうした文芸ドラマを見るのはインテリ女性ばかりかと思っていたが、番組のレビュー欄には「高校生だけど毎週欠かさず見ている」という女子もいるので驚き。さらには「私の愛読書をこんなドラマにするなんてひどい!」という不満の声、「今までになく素晴らしい」という賛同の声などなど、日本の大河ドラマよろしく、文芸ドラマには厚~い固定ファンがいるようだ。コスチュームものはどうも…と敬遠していたものの、食わずキライをやめてみると、案外毎週欠かせないmustドラマになっていくのかも。
HPはこちら から。
TEXT BY シラヤナギリカ ]]>
eigafan
2006-10-26T11:50:54+09:00