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大和魂 in Hollywood: “Lily”の中島央監督が世界へ!

世界屈指のショート映画祭LA Shorts Festなど、数々のフィルム・フェスティバルにて脚光を浴びた短編映画『リリィ (2007 / 37min.)』。同年9月に当コラムでもご紹介した本作が、長編化されて新たなスタートを切ります。更にこちらの新作は、今月13日に開幕する第62回カンヌ国際映画祭においてワールド・プレミア上映が決定。ハリウッド狭しと世界を駆け巡る両作の監督/脚本家である中島央さんに、長編版『リリィ』の製作秘話や見どころを伺いました。


ヴィンセントを演じるジョシュ・ロング
今回の長編化では、運命の相手を探す可愛らしい女性を描いた短編「リリィ」とは異なる角度からアプローチ。「人間が人間に対して抱く愛」を掘り下げるテーマはそのままに、男性をメインキャラクターに迎えています。監督のみならず脚本の執筆も兼任する中島監督は、この主人公をご自身の「同業者」である脚本家に設定。特殊でありながら、なかなかその日常を目にすることがない職業にスポットが当てられ、主人公は物語と同時進行でストーリーを書き上げていきます。観客がともに目撃していく出来事の数々が、彼にどんな影響を及ぼすのか。脚本家の実生活や経験は否応なしに作品に反映されるという真実が浮き彫りになり、同じいち人間として多くが共感を覚える役柄となっています。




奥行きを使った効果的なミザンセーヌ
あらすじ:新進気鋭の若手脚本家として、華々しいデビューを飾ってから5年。すっかりスランプに陥ってしまったヴィンセントは、行き詰った自分や周囲の期待に焦燥感を抱いている。傍らには、時に辛く当たることがあるにも拘らず、今なお献身的に支えてくれる長年の恋人。彼は、自身と彼女との経験をもとにしたラブ・ストーリーに着手する。順調にみえたものの筆は止まり、更なるプレッシャーに苛まれるヴィンセント。その行動はまるで作品のアイディアを求めるかのように豹変して、遂には彼女との関係にも変化をもたらす。そうした経験さえ取り込まれた物語は、いつしか現実と交錯していくのだった。



確かなケミストリーを感じさせる主演のふたり
中島監督は、長編『リリィ』の主要キャラクター4名の為に延べ400人の俳優をオーディション。特に、主演のジョシュ・ロングとその彼女役にレベッカ・ジェンセンを選んだ決め手は、役柄のイメージはもちろん個々の人間性だったと語ります。3週間に及ぶリハーサルでは、登場人物の作中には無い背景まで討論を重ね、俳優達の意見をふんだんに取り入れながら、ストーリーの肉付け作業を行なったとか。キャラクターの無意識下にある複雑な心理を「ドリーム・シークエンス」という、映画ならではの方法で演出した中島監督の手腕も光ります。



街中のネオンを光源に
また、撮影が行なわれたロサンゼルス周辺にて、前もってロケ地の候補に絞ったのは「LAっぽくない場所」。こちらは、どこにでも起こりうる普遍的な物語を描きたいという狙いがあったようです。撮影期間中は人工的な照明器具を極力避けて、自然光での撮影を敢行。あくまでナチュラルな質感を残し、観客にあたかもその場所にいるような臨場感を与える為の配慮でした。細部までこだわり、徹底した映画作りの姿勢を見せてくださった中島監督。彼の作品がなぜ世界中で高い評価を受けているのか、垣間見ることが出来たような気がします。



『リリィ』中島央監督
栄えあるカンヌ国際映画祭でのワールド・プレミアを前に、中島監督が開口一番に語るのは本作に携わった人々への感謝の気持ち。「紆余曲折を経て、この物語に共感してくれた人達と出会いのおかげで、この映画を完成させる事ができたと思っています。」カンヌの地でも、新たな共感者が増えそうです。また、映画祭へ向けて着々と準備を進める中、中島監督のもとに驚きの朗報が。5月29日より開催のメキシコ国際映画祭において、シルバー・パルム・アワードの受賞が決定したそうです。本賞は、世界50カ国よりエントリーされた作品から、最優秀長編映画に選ばれた20本のみに贈られる栄誉。ワールド・プレミア目前に舞い降りた幸先の良いニュースに、より期待が高まります。そして2011年の発表を予定しながら、すでに次回作”Arcade Decade (原題)”も視野に入れている模様。精力的に活動する中島監督の今後からも目が離せません。

「どんな犠牲を払っても、この物語を伝えなくてはならない。」こうした強い決心から生まれた渾身の長編作品『リリィ』は、カンヌを皮切りに世界中の映画祭にて上映されます。お近くで試写会がある際はお見逃しなく。そしてまずは、以下のホームページから本作を先取りして下さい。

【『リリィ (2009 / 89min.)』公式HP】
・第62回カンヌ国際映画祭ワールド・プレミア: 2009年5月18日20:30pm / Palais Eにて



TEXT BY アベマリコ

2009年05月07日 18:40

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