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日本屈指のスタント・コーディネイター: 田渕景也氏

 来る11月19日より2週間に渡り、ハリウッドにて各週末3公演が予定されている本格時代劇「UTSUTSU-[現]-Genesis: Blind Swordsman」。当舞台のLA初公演を目前に控えて、総勢30余名を数える日本人キャスト達、そしてオープニングからクライマックスまでの随所に散りばめられた殺陣シーンが早くも話題となっています。そこで今回は、本作の殺陣師として現在ここLAに滞在されている田渕景也さんに密着インタビューを敢行。日本を代表するスタント・コーディネーターのこれまでと、残すところ2週間余りとなった本作への意気込みに迫りました。


 今回お話を伺ったStunt Japan/スタントチームGocoo
 所属の田渕景也さん。Photo by Mao Asou

 1973年生まれ、東京出身の田渕さんは、幼少期より体を動かすことが大好きな少年だったとか。そんなスポーツ好きが高じて、現役スタントマンや元器械体操の選手らが集まる「体操同好会」に唯一の小学生として参加しながら、バック転やトンボ返りといったアクロバットを習得しました。続いて中学校に上がる頃には、学芸会の演目「必殺仕事人」の殺陣シーンを自らプロデュース、更にはライブでの演技にこだわるなど、すでに今日の片鱗を示していたそう。そして16歳を迎えると、遊園地で行なわれていた中国獅子舞のショーにて初の「スタントマン・デビュー」を飾ります。その後には、日本の時代劇シーンをリードするアクション・チームK&Uに所属すると、京都の撮影地を中心とした時代劇の斬られ役として多数の作品に出演。また、同時にスタントマンとしての技術を磨く為、他のスタント・チームの出稽古にも通う日々が続きました。

 そして20歳でアメリカへ渡ると、念願のスタントマンとして半年間「パワーレンジャー」シリーズに参加。続く2ヶ月間はオーストラリアへと撮影地を移しますが、そこでワイヤーが切れ、頭から4メートル落下する事故に遭ってしまいます。大ケガに加え、責任を押し付けあう制作側とスタント・コーディネーターとの間に板ばさみとなり、後ろ髪を引かれながらも帰国を決意。そうした苦い経験もありながら、現在アメリカの第一線で活躍する著名スタントマンにもらった「ケイヤがナンバーワンだ」との言葉を胸に、帰路に着くこととなります。帰国後は、再び京都に戻って時代劇の撮影に明け暮れるも、東京出身である為に煙たがられることもしばしばだったとか。けれどもそんな逆境にもめげることなく、いかに自身をアピールするかを模索し続けたという田渕さん。「ワンカットで5度死ぬ」という気持ちで立ち回りに絡んで行ったところ、3年後には彼に眉をひそめていた先輩方も「シーンに映りたいなら田渕の対角線へ出ろ」と若手を叱咤するまでになっていったそうです。


Q. 海外と日本それぞれの経験はいかがでしたか?また、帰国後10年近くに及ぶ立ち回りと斬られ役のキャリアについてお聞かせ下さい。

「充実度で言えば、海外が断然ですね。週5日の撮影以外も、スカイダイビングやトレーニングで実践として動いていましたから。ただその時は、それまでやってきたアクロバットの技とスタントがうまく噛み合ってなかったんですけど(笑)。それから帰って5年位経ってから、やっと出来るようになったんです。それは何でかと言うと、人に教えるようになったからなんですよね、不思議なんですが。それと立ち回りや斬られ役に関しては、今でも一番ポリシーを持っています。いつも思うのは日常において死ぬこと以外、実際に経験が出来るんですよね。だから死ぬ芝居っていうものだけは完璧な想像である訳で、それを誰よりも多く経験出来るというのはすごく重みを感じますし、とても幸福なことだと思って演じていました。」


 殺陣の稽古シーンより。右手が田渕さん、左はLA在住
 アクターの県敏哉さん。Photo by Mao Asou
Q. 時代劇への出演と平行しながら26歳という若さで殺陣師としてデビューされていますが、いつ頃から殺陣師やスタント・コーディネイターという役職を意識されていたのでしょうか?

「20歳頃にはもうなりたかったですね。自分自身が出ることに、あんまり喜びを感じなくなったりもして。というのは自分でやると、当たり前ですけど自分が思った通りになってしまって限界がありますし、まずダメ出し出来ないじゃないですか(笑)。自分より上手いなって思う若手のスタントマンが出て来たっていうのもあって。要するに、自分で出るより更に良いものを作りたいし、無限の可能性を見てみたいんです。」

Q. 念願の殺陣師になられてから、その後はいかがでしたか?

「デビュー後に自信を失った時期もありまして、チームを離れて印刷屋さんでカリスマになりかけたこともありましたね(笑)。ほんの2週間位だったんですけど、その時に今の社長から『殺陣師は出来る人にしか出来ないけど、お前にはやれる』とのラブコールを頂きました。それから映画「ラストサムライ (2003/邦題)」にスタントマンとして参加して、帰国後1発目に3時間ドラマの「さとうきび畑の唄 (TBS)」でスタント・コーディネイターに就いたのですが、その功績を認めて頂きまして、それ以降は本当に多くのオファーを受けられるようになりましたね。」

Q. キャリアのほんの一部ですが、近年のドラマでは「逃亡者」、「輪舞曲―RONDO―」、「華麗なる一族」、「ブラッディ・マンデイ」や「ルーキーズ」、映画では「ゼブラーマン」、「クローズZERO」シリーズ、本年度ヴェネチア国際映画祭のコンペ出品作「十三人の刺客」や来年公開予定の「のぼうの城」や「マイ・バック・ページ」といった名立たる作品に参加されていますが、この度の「UTSUTSU-[現]-Genesis: Blind Swordsman」を含めた舞台作品の経験は?

「これまでにTVドラマと映画では100本以上お仕事させて頂いてるんですけど、撮影時間には制限があり、そうした場合にはアクションシーンがカットされやすいことがあって、お芝居って何だろうって悩んだ時期があったんです。そんな時に、もともと「殺陣師嫌い」で知られていて、お仕事したら意気投合しちゃったという(笑)監督さんに薦められて、その方の初舞台で殺陣を付けたんです。そこで、やったことが一切カットされない責任感とか、舞台では全てが見えていること、お客さんの反応と反響の早さというのをものすごく強く感じまして。そこでやっぱり、芝居の原点は舞台にあるんだなって、それを切り取って映像にしていけば良いんだなっていう新しい発見がありましたね。それから、舞台のお仕事としては15本前後に携わっています。」


 田渕さんが殺陣師を務める
 「UTSUTSU-[現]-
 Genesis:Blind Swordsman」
 ポスター
Q. 2年前に恵比寿にて初演が行なわれた「UTSUTSU-[現]-Genesis: Blind Swordsman」ですが、今回のLA公演の見どころをお願いします。

「まずは立ち回りですね。きっと日本の同じものよりも面白いですよ!(笑)そして、人間の持つ不自由さでしょうか。目が見えなくなる主人公の道蔵だったり、不自由さが無ければ自由って感じられないと思うんですけど、葛藤の中で大事なことを伝える為に、役者みんなが頑張っているんだと思います。あとは演劇をやるにあたって、殺陣だったり踊りって、役者としてやるべきものだと僕は思うんです。だから今回彼らは本当に大変だと思うんですけど、これをやり切った時の充実感を味わってもらいたいという気持ちもあります。役者には僕の持っている愛を全部あげるんですよ(笑)。本番までの残り2週間で彼らに魔法をかけて、そして僕は抜け殻になって日本に帰ります!」

 少年の面影を残すやんちゃな笑顔から一転、殺陣を付けながらの鋭い眼差しが強く印象に残る田渕景也さん。木刀でありながらまるで閃光が走るかのような一太刀、斬られ役として瞬時に生気を失って崩れ落ちるさまなどは、まさに筆舌に尽くし難い迫力です。この度、田渕さんのプランに賛同して渡米を果たしたスタント仲間であり同志の後藤健さんが称する通り、「ルービックキューブのような」無限の動きが盛り込まれた「UTSUTSU-[現]-Genesis: Blind Swordsman」。英語公演は11月19・20・21日、残る26・27・28日は日本語での公演を予定しています。LA近郊にお住まいの方々は、ぜひとも下記のリンクより詳細とチケット情報をご確認下さい。今後、日本のスタント界を背負って立つこと必至の田渕さん渾身の殺陣アクション、くれぐれもお見逃しなく!


粋Company主催「UTSUTSU-[現]-Genesis: Blind Swordsman」公式HP



TEXT BY アベマリコ

2010年11月04日 11:19

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