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リアリティ・シリーズ「Real Housewives」に悲劇

90年代に人気が爆発して以来、米国のテレビ界にすっかり定着したリアリティーTV。時を経るに従いその内容は次第にエスカレート、過激なものもたくさん登場しているのは、この連載でも紹介してきた通りです。こうした中、ついにというか、やっぱりというか、悲劇が起こってしまいました。

今月半ば、ケーブル局Bravoのリアリティ番組”Real Housewives”シリーズ出演者のひとりが自らの命を絶つという事件が起こりました。これを機にエンタメ業界では、リアリティ番組の在り方を問う声が上がっています。


  番組外のイベントにも仲睦まじく参加していた、
  在りし頃のアームストロング夫妻。
  Photo by TaylorArmstrongFans on Flickr

「ケーブル局で最も視聴されている料理番組」と称される”Top Chef (原題)”を筆頭に、数々の人気リアリティ番組を抱えているBravo局。なかでも”Real Housewives(リアルの主婦)”シリーズは、これまでにオレンジ・カウンティ、ニューヨーク、アトランタ、ニュージャージー、ビバリーヒルズ、D.C.、マイアミと、アメリカ7都市でスピンオフが制作されるほどの人気番組になりました。パロディ元であるヒットドラマ「デスパレートな妻たち (ABC / 原題: Desperate Housewives)」を彷彿とさせるような、各都市に暮らすリッチな主婦達の日常描写は、回を追うごとに固定ファンを獲得。また、ニューヨークシリーズに出演した女性実業家/料理人であるベサニー・フランケルのように、同局にて自身の冠番組を持つ程の「リアリティ・スター」をも生み出しました。

悲劇が起こったのは、シリーズの中でも特に人気の高かった”Real Housewives of Beverly Hills(ビバリーヒルズのリアル主婦)”。出演者の主婦、テイラーの元夫ラッセル・アームストロング氏が今月15日、ハリウッドヒルズの自宅にて自殺しているのが発見されました。番組内では昨年末、氏の方からテイラーに別居を告げるなど、二人が破局に到る経過がそのまま番組で流されていました。今年7月、DV/ドメスティック・バイオレンス被害を理由にテイラーが離婚届を提出した矢先に起こった不幸に、同シリーズの出演者を始めとして、関係者やファン達は動揺を隠せない状態です。

投資家であったアームストロング氏の訃報によって次々と明らかになったのは、自己破産歴や違法な株取引など、トラブル続きの人生。金銭的にも困窮しており、テイラーとのゴージャスな生活は虚像であったことも明らかになってしまいました。また、生前には「結婚生活を破綻に追いこんだ」とBravo局を批難するコメントを出していたことも発覚。さらには、アームストロング氏の母親まで登場、“息子は視聴率の為に人の名誉を平気で傷つけるテレビ局に、「悪役」に仕立て上げられた”と同局に抗議しています。批判の高まりをよそに、Bravo局からのコメントは未だ発表されていません。9月5日にプレミア予定であった”Real Housewives of Beverly Hills”第2シーズンの再編集のみが告知され、同日に放送されるかどうかは未定です。一方、奇しくも”Real Housewives of Miami”の出演者アレクシアの13歳になる息子さんが交通事故で重症を負うなど、”Real Housewives”シリーズは波乱続きとなっており、ついに”Real Housewives of New York City”の新シリーズが制作延期になりました。

実は、リアリティ番組の出演者が自殺へと追い込まれたケースは初めてではありません。2008年には国民的アイドル発掘シリーズ”American Idol (FOX)”の出場者が、敗退後に審査員ポーラ・アブドゥルの自宅前にて薬物の過剰摂取を図るという衝撃的な事件が起こっています。また、美容整形などを含む「お直し」番組”Extreme Makeover (ABC)”では、2005年に出演予定だった女性の姉妹が、2010年にはレストラン救済シリーズ”Kitchen Nightmares (FOX)”の出演者が自身の生命を絶つなど、近年のリアリティ番組は問題続出です。

今月20日、1500万ドル越えとされる豪華絢爛な結婚披露宴を行なったキム・カーダシアンら一家のように、私生活の切り売りを「生業」とする人々がいる傍ら、今回のような悲劇さえ生みかねないリアリティ・シリーズ。テレビ局サイドによる編集次第で、出演者は善人にも悪人にも映る為、一度定着した公のイメージに悩む出演者は多数おり、数字の為に「ドラマ」を演出する詐欺にも近い編集に、批判が続出しています。今後のリアリティ番組の製作に向けて、出演者に向けられた配慮や脚色のモラルなどが検討されることを強く願います。


TEXT BY アベマリコ

2011年08月25日 15:14

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