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『つぐない』より -脚色-

新コーナー、初回にご紹介するプロダクションノートは、『つぐない』から。脚色について、ジョー・ライト監督、原作者のイアン・マキューアン、脚本のクリストファー・ハンプトン、そしてプロデューサーのティム・ビーヴァンが語ります。この映画が何を語り、表現しているのか、その一端を垣間見るような示唆に富んだ言葉が続きます。

これは一種の破壊作業だ

ジョー・ライト監督は脚本のクリストファー・ハンプトンとじっくり時間をかけて、脚色に取り組んだ。「最初に送られてきた脚本は、原作の小説とはかなりかけ離れたものだった。僕はこの小説は卓越していると思っていたから、クリストファーとゼロから始めて、できる限り原作に忠実に脚本を書き直した。お互いに協力しながら円滑に作業できたよ。とても楽しくて、すごく夢中になった。小説がよくわかったと感じられたし、脚本が自分のものになって隅から隅まで理解できたような気がした、少なくとも、そうなるように努めた。 小説というのはひとつの幻想なんだ。1枚のページに書かれた記号の連なりで、心の中に一つの物語が創り上げられる。読者のひとりひとりが、その小説のそれぞれ異なった版を持っている。ぼくはこの小説を読んだときに頭に思い描いた物語から、この脚本を書いた」とライト。

原作のイアン・マキューアンは、これまでも数多くの自分の作品が映画に脚色される機会を経験してきたが、『つぐない』についてはそれほど簡単な作業ではないことはよくわかっていた。「これは一種の破壊作業だ。わたしの13万語の小説を2万語の脚本にまとめねばならない。それに、今度の場合、とくに脚本家にとって荷が重い。非常に内面的な小説だし、登場人物たち何人もの意識の中の物語だからだ。クリストファー・ハンプトンは小説全体を通して、かしこく上手に切り抜けたと思う」。

本当によい小説を脚色するのは、まずい小説を脚色するよりはるかに難しいと、クリストファー・ハンプトンも認める。「おそらく、『つぐない』はこの20年間でベストに入る作品だから、その高い質を維持するのが、ひとつの大きな義務だった」

現代と呼応し合う作品へ

『つぐない』は、ある時代を描いた映画だが、日常の経験や、人間関係、さまざまな感情、選択や決定という営みを描いている点で、現代と呼応し合う。クリストファー・ハンプトンはこう意見を述べている。「ある時代を描くことが厳密であればあるほど、物語の現代的な面がさらに鮮やかに見えてくる、というのがぼくの持論だ」

「この映画の核心にあるのは、感情の長くて興味深い旅路だという気がする。わたしたち人間はみな、自分の人生のどの時点でもやるべきことをやり、そのときの状況を乗り越えて生きていかなければならないし、この映画はそれがいったいどんなことなのかを非常に鋭く表現している」と、プロデューサー、ビーヴァンは要約した。

【つぐない公式サイト】
4/12(土)、新宿テアトルタイムズスクエアほか全国順次公開
 ※本作は、PG-12指定です
(c)2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

<後記>
今回は、プロダクションノートからは逸れますが、あるニュースについて触れさせてください。
アカデミー監督賞など9部門を制覇した『イングリッシュ・ペイシェント』(96)や『リプリー』(99)、『コールド マウンテン』(03)などでオスカー常連のイギリス人監督、アンソニー・ミンゲラが3月18日に急逝しました。監督としてだけでなく脚本家、『フィクサー』の製作総指揮などプロデューサーとしての活躍も知られていましたが、実は俳優として本作に出演しています。数多くのニュースの中でも俳優という部分はほんの一部で報じられただけでしたが、その姿を思い出してみても驚きを禁じ得ません。ご冥福をお祈りいたします。

2008年04月07日 15:38

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