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2008年02月29日
アメリカ発『スルース』
1972年アカデミー賞4部門でノミネートされた傑作ミステリー映画『探偵<スルース>』が新たなアプローチでリメイクされました。新生『スルース』では、名匠ケネス・ブラナー監督、ノーベル賞作家ハロルド・ピンターの脚本のもと、名優マイケル・ケインと本作のプロデューサーでもあるジュード・ロウが、壮絶な心理戦を繰り広げます。
■STORY
ロンドン郊外に豪邸をかまえる年老いた推理作家、アンドリュー・ワイク(マイケル・ケイン)のもとに若くて美しい男、マイロ・ティンドル(ジュード・ロウ)がやって来ました。自分の妻がマイロと不倫関係にあることを知っているアンドリューは、そのマイロに“ある提案”を持ちかけます。
──が、それは、ひとりの女をめぐって、ふたりの男が挑発し合う、高貴で不健全なゲームの幕開けだったのです。
アンドリューの提案を受け入れ、宝石を盗み出すマイロは・・・。
■リメイクを楽しむ
●主役のふたりは・・・
1972年の映画に主演したマイケル・ケインが再度、出演しています。ただしその役は、かつての相手役、ローレンス・オリヴィエが演じた老作家役。プロデューサーでもあるジュード・ロウの熱烈なオファーを受け実現したのでした。そして以前ケインが演じた作家の妻の愛人役は、ジュード・ロウ。「映画化することに頭が一杯で、急にとんでもないことになったんだ。最初は不安になった。マイロには色んな面がある。演じるのは簡単じゃない、と知っていたからね。」
ローレンス・オリヴィエ(1972)
→マイケル・ケイン(2007)
──アンドリュー・ワイク
初老の推理小説家。
スタイルにこだわる知性的な紳士。
尊大で無慈悲。
マイケル・ケイン(1972)
→ジュード・ロウ(2007)
──マイロ・ティンドル
若い俳優。
女はもちろん、男も惑わす美貌の持ち主。
野卑にして繊細。
ふたりのゲームは、実はアンドリューがマイロを家に迎え入れたときにはすでに始まっていたのです。その後、ゲームが進むにつれ、ジュード・ロウの妖しさVSマイケル・ケインの怪しさ、が際立ち・・・。そんな危うい対決にも注目です。
そして、物語が終わったとき、30年後のジュード・ロウのアンドリュー・ワイクを期待してしまうのは尚早でしょうか?
●そのひと言には100通りの意味がある・・・
ノーベル賞作家ハロルド・ピンターの精緻な脚本で、キャラクターに、より複雑さと陰影が増しました。
さらに、二転三転する展開、そっけないようで暴力を秘めてるセリフ、行間ひとつにまでこだわった会話劇は、観るものを混乱させ、疑心暗鬼にします。本心か策略か?罠を仕掛け合い、シーンごとに取って替わられる主導権。果たして勝者は?
■DATA
3月8日(土)、シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか全国順次公開
2007年/アメリカ/89分
監督:ケネス・ブラナー
出演:マイケル・ケイン、ジュード・ロウ
配給:ハピネット
(C) MRC II Distribution Company LP
2008年02月13日
ロシア発『デイ・ウォッチ』
前作『ナイト・ウォッチ』に続き、ロシアで国民的ヒットを記録したダーク・ファンタジー第2章。
光と闇の勢力が「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」として互いの行動を監視しながら危ういバランスを取っている中、やがて人類の存亡をかけた熾烈な闘いへと発展していくことに…。
最新VFXを駆使した斬新な映像表現でも話題になりました。
■STORY
物語は中世、ウズベキスタン東部のサマルカンドにある難攻不落の砦から伝説の「運命のチョーク」
が名将ティムールによって奪われた顛末のプロローグから、一挙に現代のモスクワへ。
主人公のアントン(コンスタンチン・ハベンスキー)は、いつしかまた悲劇しかもたらさない光と闇の戦いの渦中に立たされるはめに。唯一の希望は、正しく使えばその人間の過去をも変えることのできる
「運命のチョーク」。アントンはそれを見つけだし、運命を正しい方向に導くことができるのでしょうか?
■作品イメージの創造
『デイ・ウォッチ』の世界では、荒廃した古いアパートがバンパイアの隠れ家に使われ、モスクワの平均的な修理工が身分を隠した魔術士に扮していたり…。ベクマンベトフ監督にとって、シャープで薄気味悪く、内臓を抉りだすようなビジュアルと感覚が、最優先すべき要素だったとのこと。
ビジュアル的にめくるめくこの作品世界で、さらにモスクワの姿を活動的で若々しい都市として紹介したいと監督は考えたそう。
「モスクワのイメージは、どこまでも灰色で憂欝な都市だ」と監督。「そんなイメージを刷新して、愉快でクールで様々なことが起きてる都市を描こうと考えた。元々のロシア文化は、非常にカラフルで感情の起伏が激しく、ドラマチックなんだ。そんな昔の視覚的に緊張感あふれるロシアを描くことに決めたんだ」
ロケは実際のモスクワの200 以上の場所で行われ、その中には世界的に有名な観光地の赤の広場、広大に張り巡らされた地下鉄網が含まれ、またサマルカンドでも撮影されました。
撮影の大半は、モスクワの北西地区にあるオスタンキノ・タワー周辺で行われ、高く聳えたつコミュニケーション・タワーは、モスクワにとっても、今回の物語にとっても、中心となる場所です。
■映画から観るロシア●ロシアの映画界に活気が!
ソ連時代末期に国産映画を守り育ててきたシステムが崩れ、アメリカ映画が大量に流入したロシア。
その時期に、国産映画は資金難などの要因が重なり、壊滅的状況に陥ってしまいます。国産映画を
積極的に上映する劇場は皆無に近く、ロシア映画の興行収入全体に占める割合は10%にも満たない状態が続いていました。
その状況に風穴を開けたのが、前作『ナイト・ウォッチ』。『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』や『スパイダーマン2』といったその年の話題作を大きく引き離し、歴代興行記録を樹立しました。
これをきっかけに、劇場で国産映画が増え始めます。モスクワなどの街中にも、国産映画のポスターや看板が多くなり、興収に占める割合も2005年度には30%にまで上昇しました。
●VFXとデジタル化
ロシア映画ではハイテク視覚効果を求められる機会はほとんどなく、国内のVFXスタジオの大半が小規模で、何百ものVFXショットを扱うことに慣れていませんでした。このため、『ナイト・ウォッチ』の1年間のポストプロダクション期間中、何十ものロシアのVFX施設をまとめて、ひとつの視覚効果会社を設立。
製作のコンスタンチン・エルンストによると、「すべてのCG効果をロシア国内で作ることが重要だった」
とのこと。
VFX会社の所在地は、モスクワからセント・ペテルスブルグ、さらにキエフまで広がり、それぞれの会社
がCGモデルやアニメーションなどの得意分野をもっていたので、リレー方式で、ひとつひとつのショット
を完成させていくことに。
この方式によって、わずかな予算でも、驚くほどハイクォリティのVFXを完成させることができました。
■DATA
2月16日(土)、お台場シネマメディアージュほか全国ロードショー
2007年/ロシア/131分
配給:20世紀フォックス映画
(C)2007TCF