カナダ、フランスなど世界各国で上演された、劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲「Incendies」を、2000年の官能スリラー『渦』で知られるケベックの気鋭監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが映画化。
30を超える世界各地の映画祭で絶賛され、カナダのアカデミー賞にあたるジニー賞において、作品賞、監督賞、主演女優賞など8部門を獲得。さらにはアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品です。
■STORY
初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワンは、ずっと世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌとシモンにも心を開くことがなかった。そんなどこか普通とは違う母親は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去った。その二通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられていた。
遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていくのだった……。
■傑作戯曲の映画化
カナダから中東へと舞台を移しながら、現在と過去を行き来する本作のストーリーは、原作の戯曲「Incendies」の作者ワジディ・ムアワッドが8歳のときに体験した、1970年代半ばのレバノン内戦から着想を得たもの。
戯曲でも映画でも、中東の舞台については具体的に言及されておらず、「中東の国」とされています。これについてドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は次のように語っています。
「場所を特定するべきかどうか、この問題は脚色作業の間じゅうずっと私を悩ませました。最終的には戯曲を踏襲して映画も想像上の場所を舞台にすることに決めました。コスタ=ガブラスの「Z」のように政治的偏見から自由であるためにも。映画は政治をテーマにはしていますが、同時に政治とは無関係でもあります。また『灼熱の魂』の舞台は歴史的な地雷源でもあるのです。」
■映画から観るカナダ
本作の主人公ナワル・マルワンは、カナダで暮らす中東系カナダ人という設定です。
カナダはかつてイギリス・フランス両国の植民地であったという背景から、イングランド系、フランス系、スコットランド系、さらには先住民族の血を引く人など、様々な人種・民族を抱える国家です。また、英語とフランス語の2つの言語が公用語として憲法で認められており、日本人の私たちにとっては不思議な環境かもしれません。
カナダは1988年に「多文化主義法」を制定し、国の基本方針として多文化の共存を掲げています。これはそれぞれの異なる文化や生活習慣を尊重、保護しようという政策です。こうした政策や国家の成り立ちもあり、カナダは年間約1万人以上の難民を受け入れています。受け入れによる様々な弊害を避けるため、難民認定に対するハードルを設ける国が多い中で、カナダは多くの難民を受け入れるだけではなく、生活支援やさまざまな公的サポートも提供しているそうです。
ぜひこのような背景にも注目して、本作をご覧ください!
■DATA
12/17(土)より、TOHOシネマズ シャンテほか
全国順次ロードショー!
2010年/カナダ・フランス映画/フランス語/131分
配給:アルバトロス・フィルム
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ルブナ・アザバル/メリッサ・デゾルモー=プーランほか
(c) 2010 Incendies inc. (a micro_scope inc. company) - TS Productions sarl. All rights reserved.
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カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『セレブレーション』などで知られる、デンマークを代表するトマス・ヴィンターベア監督の最新作にして最高傑作。2010年ベルリン国際映画祭コンペティション部門にて熱狂的に迎えられ、2011年デンマーク・アカデミー賞では、最多14部門にノミネートされ、見事に助演男優賞をはじめとする5部門を獲得しました。
■STORY
悲劇的な子供時代を過ごし、人を愛するすべも、愛されるすべも知らずに育った兄弟の物語。十代の頃に経験した幼い弟の死を受け入れられず、心に深い傷を残したまま大人になったふたりは、それぞれ哀しみや怒りにとらわれ、もがきながら毎日を生きていた。アルコール依存症だった母親の死をきっかけに再会した兄弟は、ふたたび気持ちを通わせようとするが…。
■ひとすじの希望
トマス・ヴィンターベア監督は、こう語っています。「兄のニックはどこにいてもアルコール依存症だった母親のおもかげを見ています。特に隣人のソフィーと接するときです。しかし、子供を虐待したニックの母親と違い、ソフィーはとても自己犠牲の精神を持っています。彼女はバランスのとれた中流階級の女性でしたが、何らかの理由で、人生を台無しにしてしまいました。彼女の狂気は、息子を失ったことが原因でしょう。世話をする対象を失ってしまい、彼女はニックの方に向かいますが、ニックはアナが忘れられずに、ソフィーと親密な関係を築けません。ニックとアナの愛は、本作におけるひとすじの光です。私たちは彼がかつては、人を愛することができたと知ることができます。私たちは、ニックの身に起こった過酷な運命を知りつつも、彼が人を愛することができるということ、そして再び人を愛したいという希望を持っていることに気がつくでしょう。」
■映画から観るデンマーク
デンマークといえば、世界一幸福度の高い国というイメージがあるはず。所得の半分以上を税金として持っていかれる代わりに、出産費用、教育費、医療費、介護サービスや葬式まで無料。子どもは18歳まで毎年約20万円の児童手当、失業給付金は月に約17万円、生活保護で月に約18万円が出ます。このような社会福祉が充実している部分は、本作では表立ってわかりません。ただ、兄弟の暮らしぶりから垣間見ることができます。子どもがいて経済的に負担が大きそうに見えても、実は生活保護を受けている弟のほうが、兄よりも立派な家に住んでいたりするのです。
本作から「福祉制度が充実している」ことがプラスに働かない、デンマークの実情が見えてくるかもしれません。
■DATA
6/4(土)より、シネスイッチ銀座ほか
全国順次ロードショー!
2010年/デンマーク/114分
配給:ビターズ・エンド
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:ヤコブ・セ―ダ―グレン/ペーター・プラウボーほか
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『バグダッド・カフェ』で世界中を熱狂させたパーシー・アドロン監督の最新作。天才作曲家マーラーと世紀末ウィーンの
■STORY
世紀末ウィーンを代表する大作曲家で、スター指揮者のグスタフ・マーラー。類まれな美貌と音楽的才能で、画家クリムトなどの芸術家を魅了したアルマ。誰もが羨む理想の夫婦であったが、19歳の年の差と、マーラーがアルマに作曲を禁じたことで生じた亀裂が、愛娘の死によって悪化してしまう。アルマは療養先で知り合った5歳年下のグロピウスに慰めを求め、その事実に困惑したマーラーは、精神分析医フロイトの元を訪れる…。
■世紀末ウィーンを見事に再現、壮麗なウィーン国立歌劇場で臨場感溢れる撮影
世紀末ウィーンが忠実に再現され、画家クリムトや指揮者ブルーノ・ワルターといった後に名を残す芸術家が次々と登場。華やかな時代の雰囲気やサロンに集う芸術家たちの交流をリアルに描いています。また、マーラーが音楽監督をつとめた世界三大オペラ座のひとつ、ウィーン国立歌劇場が全面協力。臨場感溢れるオペラ座の舞台裏が撮影されました。そして、映画のシナリオに共感した名匠エサ=ペッカ・サロネンがマーラーの楽曲を指揮、スウェーデン放送交響楽団が本作のために特別録音を行い、楽章を構成する個々の声部を分解・断片化した音楽なども使用。マーラーとアルマの心を感じる、かつてない映画体験がここに実現したのです。
■映画から観るオーストリア
19世紀後半、政治面における混乱と没落により、人々の関心が文化、芸術面に向かいました。その結果表れたのは、史上まれにみる文化の爛熟を遂げたオーストリア=ハンガリー帝国の首都ウィーンで展開された、第2次世界大戦勃発前ごろまでの多様な文化事業です。
このころウィーンの街は都市計画によってリングシュトラーセ(環状道路)などの改革が進み、オットー・ワグナーによる近代建築の傑作が次々と造られました。20世紀をリードする学術、思想が生まれ、とくにフロイトの思想は同時代の文化、芸術に多大な影響を与えました。繁栄した時代の末期の退廃の美学、デカダンスという概念により、多くの天才が芸術面で活躍しユーゲントシュティールが提唱されました。美術ではウィーン分離派の画家クリムトがモダンアートの先駆けとなります。また音楽ではマーラー、ブルックナー、シェーンベルクらが世紀末ウィーンに活躍したのです。
ぜひ歴史的背景にも注目して、世紀末ウィーンをご堪能ください。
■DATA
4/30(土)より、
渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開!
2010年/ドイツ・オーストリア/102分
配給:セテラ・インターナショナル
監督:パーシー・アドロン&フェリックス・アドロン
出演:ヨハネス・ジルバーシュナイダー/バーバラ・ロマーナー/カール・マルコヴィクスほか
(C)2010, Pelemele Film, Cult Film, ARD, BR, ORF, Bioskop Film GmbH
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大ヒット作『危険な関係』『クィーン』のアカデミー賞(R)監督、脚本、キャストが結集し、40億円の制作費をかけ、巨匠コレットの代表作「シェリ」が豪華完全映画化。主人公レア役には、3度のアカデミー賞(R)ノミネートに輝き、シャンデリアのようにきらめきその魅力を放っているミシェル・ファイファー。2009年ベルリン国際映画祭コンペティション部門にも出品された注目の作品です。
■STORY
舞台はベルエポックのパリ。富と名声を得た元ココット(高級娼婦)のレアは40代にして、なお輝き続け、引退し優雅な生活を送っていた。一方、レアの元同業のマダム・プルーの一人息子シェリは、19歳ですでに女遊びにも飽きているほどの“問題児”。母は秘めた魂胆で、二人の縁りを取り持つのだった。当然、2人は不釣合い!とゴシップ好きの仲間たちの激しい毒舌をも受け流し、“不覚にも”6年も暮らしてしまう。やがて、シェリの挙式を突然告げられた時、レアは一生に一度の愛だったことにはじめて気づくのだったが…。
■パリ、ベルエポック時代の再現に集結したスタッフ
「1906年、この時代のヨーロッパは、モダンへと移行する時代でした。マダム・プルーは過去のものを引きずっているのに対し、レアの目はモダンへと向いています」多くの受賞経験のあるベテラン撮影監督ポーランド人のダリウス・コンジィは、2人のコントラストを出すために、光の使い方を工夫したといいます。
『クィーン』でもフリアーズ監督と一緒に仕事をした美術担当のアラン・マクドナルドは、時代考証とともに、時代の雰囲気を2人の家にかかっている絵画などで表しました。レアの家には印象派、後期印象派の絵画を、マダム・プルーの家には、豪華な少しミスマッチの重厚なテーブルや絵画、重いビロードのカーテンが並べられました。
2人の衣装もやはりコントラストを出しています。レアのスタイルは飾り立てすぎずに、クールで軽やかさと彼女のシルエットの美しさを引きたてるもの。ソフトなヘアスタイルでもマダム・プルーは誇張されています。
サン=サーンス、ドビュッシー、ラヴェルなど、フランス音楽の豊かだったこの時代は東洋の神秘的な影響も受けており、『クィーン』でアカデミー賞を受賞している音楽担当のアレクサンドル・デプラは、フランス的な音楽のスコアにヴァイオリンのエキゾティックな音色を取り入れた音楽を作っています。
撮影、美術、衣装、音楽と、すべてにおいて、20世紀初頭のベルエポック時代を再現したこの映画は、スタッフがこだわり抜いて作り出した、ひとつの芸術作品といっても過言ではありません。
■映画から観るフランス
フランス・パリには今でも、ベルエポック時代を感じられるスポットがたくさんあります。その中から、この映画のロケ地も選ばれています。たとえば、レアの家は、アール・ヌーヴォーの大建築家エクトール・ギマールのヴィラ・メザラ(パリ、16区)がメインのロケ地となっています。レアが逃避行するのがビアリッツのホテル・ド・パレ。パリのホテル・レジーナはシェリの遊び場でもあり、シェリが結婚式をあげるのがパリの5区にある美しいサン・エチエンヌ・ド・モン教会、もちろんパリのレストラン、マキシムでも撮影しています。
ぜひ背景にも注目して、ため息がでるほど美しいフランス装飾美術をご堪能ください。
■DATA
Bunkamura ル・シネマほか絶賛上映中!
2009年/英・仏・独/90分
配給:セテラ・インターナショナル
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ミシェル・ファイファー/ルパート・フレンド/キャシー・べイツほか
(C)Tiggy Films Limited and UK Film Council 2009 All Rights Reserved
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■STORY
「人生は退屈の繰り返しに耐え忍ぶことだと思う」-ロボット型プラモデルオタクの青年レイは、誰とも深く関わらないことを信条に生きてきた。ところが母の葬儀の直後やむなく実家に舞い戻るはめに。そこには、4年間も引きこもりの生活を続ける、ピアノが弾けなくなったピアニストの兄モーリーと、ちょっと勝気な大学生の妹リサ、そして……“ばーちゃん”が暮らしていた。英語がまったく喋れないばーちゃんは自室にこもりきりで、トイレから出てくるたびに深いため息をつく。そんなばーちゃんを3兄弟は気になってしょうがない。レイは、その秘密を探ろうと奔走するが……
■キャストに日本人はひとり、全編トロントで撮影
アメリカン・インディーズ映画が再び盛り上がった時期に南カリフォルニア大学に6年間留学した荻上監督。それらのアメリカン・インディーズ映画が、映画の面白さを教えてくれ、映画を作りたくてしょうがない気持ちにさせ、「いつか北米で映画を撮りたい」という誓いに繋がったと言います。
本作の約20日間の撮影とその後のポスト・プロダクションはすべてカナダのトロントで行われました。兄弟役の3人はいずれもオーディションで選ばれ、やはり現地で選んだ撮影監督をはじめとするスタッフも、1972年生まれの荻上監督よりもほぼ全員が年下の若々しいチームになりました。「自分よりも年下のスタッフばかりという現場は初めてでしたが、それもあって、きっぱり命令口調になってしまうことが多かったかもしれません。みんな優しくて優秀で、英語がブロークンだからって馬鹿にされることは一切なかったけど、心のどこかで“なめられないようにしよう”と、気を張っていたかもしれません。」
でも若手俳優3人はいずれも「直子は細部まで自分のイメージを明確に持っていて、いつも的確なアドバイスを出してくれる」と、監督を賞賛しました。
そんな中、唯一の日本人キャスト、もたいまさこは、セリフがほとんどない中、孫たちの願いを心で感じとる賢者にしてパンク・スピリッツも併せ持つ老女を、悠然と演じています。
こうして荻上監督が「いつか北米で映画を撮りたい」と心に誓ってから10年、シナリオの構想を得てから5年を経て、ついに快心の作品が誕生したのでした。
■映画から観るカナダ
トロントはカナダ最大の都市であり、世界中の文化やエンタテイメントが集まる世界でも有数の多文化都市です。
特に、国内や海外の映画制作とテレビ制作は地元の大きな産業のひとつとなっており、CNタワーに象徴される商業地区や歴史的な建築物や住居が残る住宅地などでロケ現場に遭遇することも多いようです。『グッド・ウィル・ハンティング』『ヘアスプレー』など多くの映画で、トロントで撮影されたシーンを見ることができます。トロントを訪れるチャンスがあったら、ロケ地巡りを楽しむのもいいかもしれません。ハリウッド映画の撮影も多いので憧れのスターにバッタリ会えるかも?
また、毎年9月に開催されるトロント国際映画祭は世界の映画産業界においても重要なイベントのひとつ。オスカー・レースはここから始まると言われ、最近では、最高賞である観客賞(ピープルズ・チョイス・アウォード)を受賞した『スラムドッグ$ミリオネア』『プレシャス』などがレースを賑わせました。日本映画も出品されていますのでこれを機会にご注目ください。
■DATA
脚本・監督: 荻上直子
出演: アレックス・ハウス
タチアナ・マズラニー
デイヴィッド・レンドル
サチ・パーカー
もたいまさこ
2010年/日本・カナダ/109分
8/28(土)、新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
(C)2010"トイレット"フィルムパートナーズ
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実在のシスターを、次回クリント・イーストウッド監督作品への出演も決まっている実力派女優セシル・ド・フランスが熱演。情熱的で純真な<シスタースマイル>を体現したと世界中のメディアが絶賛しました。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた経験を持つ俊英ステイン・コニンクス監督が、女性の自立が困難であった時代に、愛と自由を求めたひとりの女性を、優しいまなざしで描き出します。
■STORY
1950年代後半のベルギー。誰もが自由を求めていた時代。ジャニーヌ・デッケルスは親の望む結婚や家業を継ぐことよりも、シスターになる道を選ぶ。
厳格な修道院での生活の中、彼女の音楽の才能に気がついたシスターたちに励まされ、
ジャニーヌは聖ドミニコの教えを歌にした「ドミニク」を作ります。その美しいメロディと歌声が評判となり、やがて<謎の歌うシスター>として前代未聞のレコードデビューを果たすことに。
「ドミニク」は瞬く間に世界中に広がり、当時ハリウッドで『歌え!ドミニク』という映画が製作されるほど彼女は大スターとなりました。そして、もっと自由に歌いたいと願った彼女は修道院を去ることを決めるのですが…。
■セシル・ド・フランスから見た<シスタースマイル>
「彼女はまさにとんでもない人でした!“自分”というものを譲らない人でした。母親に支配されることを拒み、次に修道院の先輩に反発し、世の中の常識を受け入れようとしませんでした」
セシル・ド・フランスは<シスタースマイル>の世論に立ち向かう反体制的な一面に興味を持ったと言います。
「彼女は攻撃的で、野性的な荒っぽい一面を持っていました。ですから、私は撮影のとき、表情に野性味を持たせることを提案しました」
そして<シスタースマイル>に関する資料を読み、こう分析します。
「彼女はかなり不安定な思春期の状態のまま大人になりきれなかった女性で、そのため現実に向き合うことができなかったのだと思います」
ステイン・コニンクス監督が<シスタースマイル>に一番興味を持った点は、彼女が愛を必要としていたということでした。その点について、セシル・ド・フランスもこう語っています。
「偉大なアーティストのように皆から扱われた時に、彼女には大きな愛情が必要だったし、愛し愛されたいと願っていたのです」
■映画から観るベルギー
カトリック教徒が大半を占めるベルギーにおいて、1950年代は離婚や中絶などが絶対に許されず、ジャニーヌの母親のように「好きな男性と結婚して子どもを生むことが、女の幸せ」という保守的な価値観が常識でした。しかし、現在のベルギーは、女性の地位向上においてもっとも高水準と言えます。
ベルギーは世界でもいち早く女性が国会議員になった国(1921年)で、女性の大臣就任率も高い(2000年データで55%)。日本と同じように立憲君主制ですが、王位継承権は性別に関係なく第一子となり(1991年)、現皇太子ご夫妻は二男二女に恵まれていますが、第一子エリザベート王女がその第一号となります。夫婦別姓が定着しており、女性も生まれたときの姓を、結婚・離婚・死別などに影響されずに持ち続けます。女性の雇用者率は欧米諸国の中でも高い方で、特に、子供がいても率が下がらないそうです(OECD、2002年データ)。
こうした成果は、保守的な価値観を破り、社会的権利や自由を求めて立ち向かった女性がたくさんいたからなのでしょう。<シスタースマイル>ことジャニーヌは、そうした女性たちの象徴なのかもしれません。
本作は時代を超えて、きっと現代女性にも勇気と希望を与えてくれるはずです。
■DATA
7/3(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
2009年/フランス=ベルギー/124分
配給:セテラ・インターナショナル
監督:ステイン・コニンクス
出演:セシル・ド・フランス/サンドリーヌ・ブランク/マリー・クレメールほか
(C) 2009 PARADIS FILMS - LES FILMS DE LA PASSERELLE - EYEWORKS FILM & TV DRAMA - KUNST & KINO
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教師フランソワを演じるのは、元教師で自身の体験を基に綴った原作「教室へ」の著者フランソワ・ベゴドー。監督は、常に社会と人間を描いて高い評価を得ているローラ・カンテ。フランスで150万人を動員し、さらにヨーロッパ、北米でも興行的成功をおさめた作品です。
■STORY
舞台は、パリ20区にある中学校の教室。主な登場人物は、ひとりのフランス語教師と出身国も生い立ちも、将来の夢も異なる24人の生徒たち。カメラが追いかけるのは、1年間の国語の授業だ。国語とは生きるための言葉を学ぶこと。それは他人とのコミュニケーションと、社会で生き抜く手段を身につけることでもある。
言葉の力を教えたい教師フランソワにとって、生徒たちとの何気ない対話の一つ一つが授業であり、真剣勝負だ。フランソワはどの生徒にも真正面に向き合おうとして、悩み、葛藤する。一方、多感な24人の生徒たちは、率直な言葉、はじけるような笑い、抑えられない怒りでフランソワに応じる。さまざまな個性を持った彼らは、この教室で何を学ぶのだろうか?
公式サイト
■ドキュメンタリーだと思わせた驚異のリアリティ
監督が出演者に選んだのは、映画の舞台となるパリ20区のフランソワーズ・ドルト中学校で実際に学ぶ演技経験のない24人の生徒と、その教師たち。監督は生徒たちと週1回、7ヶ月のワークショップを行い、映画のために必要な彼らの内面を引き出したり、彼らが偶然発した言葉を脚本に取り込んだりしたといいます。
生徒たちが演じた人物のほとんどが役作りによるキャラクター。にもかかわらず、自然体で演技ができたのは、学校生活で無意識にテクニックを磨いているからだと、フランソワ役のベゴトーは分析します。「生徒たちにとって学校は、いくつもの役柄を演じたり、隠しごとをしたり、インチキをする誘惑にさらされる場所。彼らは学業上の困難を言葉巧みな反論や言い逃れ、機転で埋め合わせしなくてはならないからね」
撮影には、3台のHDカメラと16本ものマイクを使いました。1台目のカメラは常に教師を、2台目はその場面の中心になる生徒、そして3台目は本題には直接関係しない周囲の映像を撮影しました。だからこそ、教室で起こることすべて、どんな些細な出来事(偶然発せられた言葉、表情、仕草など)も逃さず、その場のリズムを捉えることに成功したのです。
■映画から観るフランス
パリ20区は、フランスの首都・パリ市を構成する20の行政区のひとつ。市の東部にあり、セーヌ川の北側に位置しています。区内にはショパン、マリア・カラス、モリエールなど多くの著名人が眠るペール・ラシェーズ墓地があり、さらにエディット・ピアフの生まれた地でもあります。アラブ系、アフリカ系、ユダヤ系(労働者系)、中国系(華僑)など、主に労働者系の多くの移民が暮らす地域で、安くて異国的なレストランなどが集中する雑多で庶民的な界隈と言えます。
本作にもパリ20区の特徴である多人種の生徒が登場し、移民問題もテーマに内包されています。日本の学園ドラマのような大団円は用意されていませんが、小さなひとつひとつのエピソードに静かな感動が呼び起こされる小粋な作品です。
■DATA
6/12(土)より岩波ホールほかロードショー
2008年/フランス/128分
配給:ムヴィオラ
© Haut et Court – France 2 Cinéma
監督:ローラン・カンテ
脚本:ローラン・カンテ/フランソワ・ベゴドー/ロバン・カンピヨ
出演:フランソワ・ベゴドー ほか
貧乏劇団の情熱的な俳優であり劇作家だった若き日のモリエールが身を投じた奇妙な冒険と、マダムとの秘められた恋。めくるめく体験にモリエール作品のエッセンスを散りばめて、笑いながら涙する、心揺さぶる一大エンタテインメントに仕上がりました。
フランス本国では180万人動員、アメリカ、イギリスでも大ヒットを記録しています!
■STORY
1644年、若き22歳のモリエールは駆け出しの劇作家であり劇団を率いた役者だった。劇団の借金がふくれあがり、債権者から訴えられて投獄されたモリエールは、潰れそうになった劇団を救うために、お金持ちの商人ムッシュ・ジュルダンの家に家庭教師として雇われることになる。
そこで彼が見たものは、貴族になりたいがために剣や乗馬の練習をし、貴婦人セリメーヌに恋文を送ろうと必死になっているムッシュ・ジュルダンと、そんな夫にうんざりしている気丈なマダム・ジュルダンだった。
モリエールはムッシュ・ジュルダンに演技指導や恋文の書き方を教える役目を得る。ムッシュ・ジュルダンのお金目当てですり寄る貧乏貴族のドラントや、親の目を盗み青年と恋をしているジュルダン家の娘の姿を目にしたり、自身もマダム・ジュルダンと思いがけず恋に落ちたりと、予想もできない冒険や出来事に巻き込まれていく…。
■『モリエール 恋こそ喜劇』制作秘話
本作を撮ることにしたきっかけを、監督ローラン・ティラールはこう語っています。
「私が長い間モリエールのファンで彼のことを映画化するのが夢だった…と想像されるでしょうが、実は偶然から起こったことでした」
時代をさかのぼった他に例のないコメディを撮りたいと思い題材を探していたローラン・ティラール。中学生のときに好きだったモリエールの「人間嫌い」をもう一度読んでみたところ、成長した今のほうが理解でき、夢中になって他の作品も次々に読んだといいます。
「言葉の使い方のうまさ、それぞれのシチュエーションは世界に通用し、時代を問わず、人間のありのままの本質を復元している」
そこでローラン・ティラールと共同脚本家のグレゴワール・ヴィニュロンは、モリエールの書いたものと、彼の人生を融合させて、想像も含めて組み立てることにしたのです。
「古典的なイメージのモリエールが突如として息を吹き返し、もっと生き生きした、もっと面白く、もっと感動的で時代を超えた存在になりうると思いました」
■映画から観るフランス
17世紀のフランスは、まさに流行の発信地でした。女性のドレスは色鮮やかに、以前まで首を覆っていた高い襟は、胸元を大きく開けたデザインへと変化しました。袖口や裾元にはレースやフリルがあしらわれ、さらにスラッシュ開きから下生地をのぞかせるなど、工夫を凝らしていきました。
男性のファッションでは、この頃、現代の襟の構造と同じ、折り返し式の襟が登場しました。現代よりも大きく、レースでトリミングされた襟は肩まで覆われていました。
本作の見どころのひとつ、絢爛豪華な衣装。
ばっちり着こなしている俳優たちに、誰もがうっとりしてしまうのではないでしょうか。
■DATA
3/6(土)、Bunkamura ル・シネマほか
全国順次ロードショー
2007年/フランス/120分
配給:セテラ・インターナショナル
監督:ローラン・ティラール
出演:ロマン・デュリス/リュディヴィーヌ・サニエ/ファブリス・ルキーニ/
ラウラ・モランテ/エドゥアール・ベール ほか
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■STORY
エマは夢を描いて医者のシャルル・ボヴァリーと結婚するが、凡庸な夫との田舎での生活はひたすらに単調で退屈。失望したエマはうつ状態になるが、シャルルはエマの状態に気が回らない。そんな時に出会ったレオンとの恋も成就せずに終わる。
失意のエマの前に現れたドンファンのロドルフはエマを弄んだだけだ。時を経ずしてエマはレオンと再会し情事を重ねる。逢引などのために浪費を重ねたエマの行く末は…。
公式サイト
■原作『ボヴァリー夫人』と自作に寄せて
アレクサンドル・ソクーロフ監督は、なぜフローベールの小説をテーマに映画を創ったかという問いにこう答えています。
「中学生の頃、読んだ文学の中で、『ボヴァリー夫人』が、最も明快な印象を与えられた1冊だったのです。8年生(日本の中学2年生)でした。同じ時期に、ラジオドラマでも放送され、それも聴きました。人間が人生でそれほどの悲劇に遭遇するということに、私はひどく驚いたのです。」
本作は1989年に完成していますが、当時のロシア国内の政治変動=ソ連崩壊のために、小規模な公開に終わっていました。しかし、フローベール没後130周年にあたる2010年に先駆けて、日本のファンのために監督自身がディレクターズカット版として再編集。日本での公開が決定したのです。
監督は日本での映画公開に向けてこう語ります。
「ロシアでこの映画が上映されている時期、国内で大変シリアスな政治変革が起こっていたので、資料は何も残っていません。ですから日本での上映は、この作品の新たな出発のように思っています。」
■映画から観るフランス
監督への取材によると、エマが着ている衣装はフランスのデザイナーが手掛けている、世界で最も有名なブランドのひとつ、クリスチャン・ディオールだそうです。本作が完成したのは1989年ですが、エマが着ている服は時代にとらわれず着ることのできるハイセンスなデザイン。田舎町で暮らしながらも高いプライドを持ち続けるエマの姿がファッションからも感じ取れます。
エイジレスで斬新なセンスは、この作品のテーマが時代を超えて
普遍性をもつことを表現するのに、一役買っています。
■DATA
10/3(土)、シアター・イメージフォーラムほか
全国順次ロードショー
1989年=2009年/ソ連=ロシア/128分
配給:パンドラ
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:セシル・ゼルヴダキ/R.ヴァーブ アレクサンドル・チェレドニク/B.ロガヴォイ ほか
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ジャッキー・チェン、ウォン・カーウァイ作品で知られる女優マギー・チャンと、
フランス人監督オリヴィエ・アサイヤスが、『イルマ・ヴェップ』以来、再びタッグを組んだ感動作。
マギー・チャンは本作で第57回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞。審査員全員が彼女を支持し、
あのクエンティン・タランティーノも、「世界で最も素晴らしい女優のひとり」と、
マギーの演技を絶賛しました。
■STORY
歌手として成功することを夢見るエミリーは、ある日突然、ロックスターとして名を馳せてきた夫・リーをドラッグの過剰摂取により亡くしてしまう。
一部の友人とリーの母親は、事故を防げなかったエミリーを責め、リーとの出来た幼い息子ジェイも今は義父の元に預けられ、何年も会えない日々が続いていた。
「息子を取り戻すためにはなんでもする」。そう決意はしたものの、愛する人の残像、引き裂かれたプライド、捨てきれない歌手の夢…、様々な想いが交錯し、望んだ仕事を得ることも、息子と一緒に暮らすことも出来ずに、虚しい日々を過ごすエミリー。
そんな中、たった2日だけ息子とのデートを楽しむ機会を得る。数年ぶりに再会した2人は、広がってしまったお互いの距離を少しずつ縮めていったが、距離が縮まった途端、思いがけず衝突してしまうのだった。
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■エミリーとマギーの共通点
本作で、自らの夢と息子への想いの間で苦悩する女性、エミリーを演じたマギー・チャンは、
たとえ人に嫌われたとしても、自分で納得する生き方がしたいというエミリーの気持ちに
共感を覚える、といいます。
「私は女優として生きていくためだからと、自分の真意を伝えてくれない記者に媚びようとは思いません。断固として意味のない取材は拒否しています。それをわがままな女優、と受け取る人がいるかもしれないけれど、私はそれにひるんだりしません。
エミリーは歌手になる夢を捨てきれずに生きています。どんなことがあっても、彼女は歌を捨てきれない。だから歌のシーンでは私自身が歌っています。私は何でも自分で実行して納得しなくてはならない性分なのです。エミリーのほうが私よりずっとエゴイストですね。彼女は歌手として成功するだけの歌唱力、頂点を極めるだけの才能はないでしょう。でも、目の前に訪れたチャンスに向かっていく強さがあるから、きっとエミリーは幸せをつかむと思います。」
■映画から観るフランス
エミリーが全てをやり直そうと訪れるパリのシーンでは、フランスの主要ターミナル駅のひとつであるパリ北駅や、コーマルタンの美しい風景が登場しますが、中でも印象的なのが息子と2人で行くヴァンセーヌの森の動物園。
ヴァンセーヌの森はパリの最東端にあるとても大きな公園で、パリに暮らす人々の憩いの場となっています。ここには動物園のほかにもヴァンセーヌ城や植物園など様々な施設があります。
移動遊園地や、ジャズやクラシックのコンサートなど、
季節ごとに行われる様々なイベントもこの森の魅力のひとつ。
恋人や家族とゆったりとした時間を楽しめるパリの有名なスポットです。
■DATA
8/29(土)、シアター・イメージフォーラムにてロードショー
2004年/フランス・イギリス・カナダ/111分
配給:トランスフォーマー
(c) 2004 - Rectangle Productions / Leap Films / 1551264 Ontario Inc / Arte
France Cinema
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
出演:マギー・チャン/ニック・ノルティ/ベアトリス・ダル/ジャンヌ・バリバール ほか
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ダミアンは、仕方なくエンゾと共に生活を始めることに。初めはエンゾをお荷物と思っていたが、寒さと飢えをしのぎながら生活を共にするうち、ふたりの間にはいつしか本当の親子以上の情愛が芽生えていくのだが…。
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■フランスの「今」を演じた2人の俳優
ピエール・ショレール監督は、ダミアンを演じたギョームを、
“彼の世代で唯一、ダミアンを演ずることのできる俳優だった”と語ります。
「この役はかなり難しく、ギョームは素晴らしく役を捉えてくれました。撮影の初日から最後まで、彼は映画の波長に合っていました。ギョームを撮影するのは驚嘆すべきことなんです、なぜなら彼は千の表情を持っているからね。彼は豊かな演技力をこの役に注いだ。さらに、彼はとてもよくマックスを助けてくれました。映画の中で、子どもの存在感が際立っているのは、一部はギョームのおかげなんです。」
また監督は、映画初出演にもかかわらず、カンヌ国際映画祭で多くの観客の涙を誘った恐るべき名子役、マックスのことも大絶賛しています。
「子供についていえば、我々は非凡なマックスに偶然出会いました。このように若い俳優と2カ月以上にわたって働くのは非常に大きなリスクです。マックスは、火も、イバラも、冷たい水も嫌いでした。ゲームみたいにだましだましでやりましたよ。そのうえ、彼は自分自身を見失わずに役を演じなければなりませんでした。撮影後、音声収録をしたとき、彼は、フィルムに写っている自分を、マックスとしてではなく、エンゾとして見ていました。この混同が起こらなかったことは大事なことです。マックスはとても強い眼差しと存在感を持っていました。彼はヒーローです。よくやった、マックス!」
■映画から観るフランス
100年に1度ともいわれる世界的不況に見舞われている現代社会。フランスの黄金期を象徴するパリ郊外の世界遺産、ベルサイユ宮殿のはずれには、現在多くのホームレスが暮らしています。
宮殿のみに関わらず、仮小屋、テント、トレーラー、車庫、ビニールハウスなど…仕事がなく住む家もない、約90万人もの人々が当座しのぎの避難所住まいを強いられ、中には劇中のダミアンのようにベルサイユ宮殿を囲む森の中に隠れ家を見つけ暮らしている人々もいます。
本作は、ダミアンがエンゾと出会い、愛に目覚めていく姿を描きながらも、
失業・貧困やそこから来る人権問題などのテーマにも取り組んでいます。
■DATA
5/2(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
2008年/フランス/113分
配給:ザジフィルムズ
(c)Les Films Pelléas 2008
監督・脚本:ピエール・ショレール
出演:ギョーム・ドパルデュー/マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ/ジュディット・シュムラ ほか
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クローディは麻薬中毒者。偽りの結婚でも、ロルナを慕い、彼女を希望の光に麻薬を断とうとしている。そんな彼と共に暮らすうち、ロルナとクローディの間にはいつしか本当の愛が芽生え始めていた。しかし、彼女には決して彼に知られてはならない秘密があった…。
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■ロルナが見出す未来と希望
ダルデンヌ兄弟の作品は必ずテーマに「裏社会」が絡んできます。本作でも偽装結婚、という裏社会に関することを描いていますが、それを重点において物語を作っていったわけではないと言います。
「裏社会との関係を中心に据えているわけではありません。人間のジレンマを描いています。夢を叶える為に、払わざるを得なくなった代償、犠牲を描いています。それが、たまたまマフィア、裏社会と関わっている。そしてこの映画は、道徳についての話であると同時に、ラブストーリーでもあります。失われたラブストーリーと、新しく生まれるラブストーリーです。」
裏社会に足を踏み込んでいたロルナが真実の愛を知り、その愛を貫こうとします。
彼女の祈りが届く時、愛の奇跡は訪れるのでしょうか?
■映画から観るベルギー
ベルギーをはじめとしたEU諸国は、現在移民労働者の問題で悩み続けています。
第2次世界大戦後、西欧諸国は不足する労働者を移民で補充する政策に転換。母国よりも賃金が稼げるため、移民たちはどんなに辛い仕事にも耐え、そのうちに家族呼び寄せるというケースも増えました。結果、移民労働者による共同体が作られ、納税者である彼らの発言力も強化されました。
ベルリンの壁崩壊以降も増え続けていた移民労働者ですが、不況に入ると失業率も上昇。リストラされ、路頭に迷う移民労働者が街に溢れました。犯罪も増え、当然治安も悪化。非難の矛先が移民に全体に及び、当局は移民労働者の帰国を促すと共に受け入れにも制限を加えました。
移民労働者と本国労働者との壁が高くなり、移民の人権問題にまで発展しています。
■DATA
恵比寿ガーデンシネマほか全国にて絶賛上映中!
2008年/ベルギー=フランス=イタリア/105分
配給:ビターズエンド
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:アルタ・ドブロシ/ジェレミー・レニエ/ファブリツィオ・ロンジョーネ ほか
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■STORY
ベイルートの街角にある小さなエステサロン。ここに集まる5人の女性は、それぞれ人には言えないある悩みを抱えている。オーナーのラヤールは既婚男性との恋に振り回され、そんな彼女の姿を心配顔で見ているスタッフのニスリンも婚約者に打ち明けられない過去に苦しんでいた。
もう一人のスタッフのリマはサロンにやってきた美しい女性に惹かれていく自分に戸惑い、サロンの常連であるジャマルは外見を過剰なまでに意識し、老いていく自分を受け入れられない。
サロンの向かいで、年老いた姉の面倒をみながらひっそりと仕立て屋を営むローズは、自分の人生を諦めている…。
年代の違う5人がこの小さなサロンで肩を寄せ合い、支えあいながら新たな人生を歩み始める。
■甘くほろ苦い『キャラメル』の世界
ナディーン・ラバキー監督は本作を製作するにあたり、多くの人々の協力を得て撮影を進めました。
例えば、女性たちが着ている美しい衣装は、ラバキー監督の姉妹がデザインを担当したそうです。
「彼女は色々なスタイルの混じった奇妙な服をたくさんデザインしてくれました。彼女のユニークな観察力に感謝しています。服の色や生地の選択は、出演者たちのキャラクターを現実的で自然なものにしてくれました。」
また、シーンごとの表情を変えるのに重要な音楽を担当したのは彼女の最も身近な人物でした。
「この音楽を担当した人を、私はよく知っているのです…。彼は私の夫となった人ですから。(※映画の完成後に結婚)彼は作詞家であり作曲家で、フランス語の歌を入れた最初のCDをリリースしたばかりです。彼の音楽はいつも私にイメージを呼び起こしてくれます。彼はこの映画とともにすべての冒険を私と経験しましたので、どういう音楽が必要か、説明する必要がありませんでした。彼は『キャラメル』の中に東洋と西洋の混じった音楽を提供してくれて、音楽はこの映画の重要な要素になりました。」
このほかにも脚本・撮影など、細かなところにまで気を配り、『キャラメル』の世界は完成したのです。
■映画から観るレバノン
私たちの目から見ると、比較的自由な国に見えるレバノン。しかし、劇中の女性たちが抱える問題をはじめ、未だ昔からの風習が色濃く残っている国でもあります。
映画の中でラヤールは愛人と過ごすためにホテルを予約しようとしますが、どこへ行っても身分証明証の提示を求められます。これは、現在のレバノンでは未婚女性がホテルに宿泊することが許されていないためです。
同性愛の禁止や、処女であることの重要性など、宗教上の決まりを幼い頃から
教育されて育つレバノンの女性たち。
今日も彼女たちはまわりからの批判を恐れ、常に緊張しながら暮らしているのです。
■DATA
1/31(土)、渋谷・ユーロスペースほか
全国順次ロードショー
2007年/レバノン・フランス/96分
配給:セテラ・インターナショナル
(C) Les Films des Tournelles - Les Films de Beyrouth
- Roissy Films - Arte France Cinema
監督・主演・脚本:ナディーン・ラバキー
出演:ナディーン・ラバキー/ヤスミーン・アル=マスリー/ジョアンナ・ムカルゼル ほか
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■STORY
夫に先立たれ9ヶ月が経過しても、元気も出ず毎日をただ何となく過ごしている80歳のマルタ。
そんなマルタの事を心配した友人たちが、彼女の長年の夢、“自分のお店を持つこと”を実現させれば良いと提案するのですが、マルタがオープンしようとしていたのは、何と「ランジェリー・ショップ」!
マルタ達が暮らす伝統的な小さな村では、マルタの計画に人々は驚き、中には軽蔑する人も出てきてしまいます。夢を諦めないマルタと、そんな彼女をサポートする友人たち。次第にマルタの夢の輪が村に拡がってゆき…。
■『マルタのやさしい刺繍』は現代の「ふるさと映画」
監督ベティナ・オベルリは、この映画の着想を、自身の祖母から受けたといいます。「祖母の住んでいた小さな村には、高齢者がたくさん住んでいて、しかもその多くは夫に先立たれた妻たちでした。」
彼女は、その村の様子をこう語っています。「その女性たちは夫の死後も模範的な生き方をしていて、<憧れ>や<欲求>という言葉には馴染みがありません。そんな中、一人暮らしをしているある女性が真っ赤なフォルクスワーゲンを買ったのです。自分のためだけに、何かをぱっと手に入れてしまった彼女のことを、密かに妬んでいる人もいました。」
この物語を発展させて、ある小さなコミュニティの物語を作ろう…との構想から生まれた本作。現代にまだ残る「ふるさと」的な情景を描きながらも、変化を恐れるのではなく、それをチャンスとも捉える様が、あたたかく描かれています。
そして、この作品が映画館で上映されることになって、4人の女優たちは思いがけず、堂々とスクリーンに登場することになりました。そして、シュテファニー・グラーザーは彼女の長いキャリアの中で、80歳を越えた今、初めて映画の主役を演じています!
■映画から観るスイス
●窓辺の花々~バルコニーフラワー~
美しく飾られた窓辺の花々もスイスの代表的な風景です。初夏から秋にかけて赤やピンクの鮮やかな色を見せるゼラニウムの花は代表的なもの。
世界遺産に選ばれたベルンのような中世の建物や、グリメンツやアッツペンツェル、エメンタール地方のような伝統的な木造の農家や、民家に飾られた花は、ひときわ美しく街を彩ります。
●刺繍王国、スイス
時計とならんでスイスで有名なのが実は刺繍。スイスは精密な工芸に秀でた国と言えます。刺繍の切手、テーブルクロス、ハンカチなどにかわいいモチーフやレースを施したものが主流です。作品の中でも、かわいらしい刺繍の施された小物がたくさん登場します。
■DATA
10/18(土)、シネスイッチ銀座ほか
全国順次ロードショー
2006年/スイス/89分
配給:アルシネテラン
(C) 2006 Buena Vista International
(Switzerland)
監督:ベティナ・オベルリ
出演:シュテファニー・グラーザー/ハイジ=マリア・グレスナー/アンネマリー・デュリンガー ほか
★本作のマスコミ用プレスを3名さまにプレゼント!
詳細は【プレゼントページ】をチェック!(10/24締切)
■STORY
現在の中国。延々と続く巨大な工場の様子を、8分間収め続けた横移動ショット。
そのあまりの巨大さに、息をするのを忘れてしまうほど衝撃的なオープニング。
産業の発展によって極端なまでの変化を強いられた中国の風景が、バーティンスキーの残酷で美しい写真によって私達の意識に強く訴えかけます。
とてつもない大きさで大地に穴を開けた鉱山、真っ赤に汚染された川、別の惑星かと見粉うような黒々とそびえる石炭の山、見渡す限りに瓦礫の山が続く街・・・。
急激な都市化が進む中国で、今なにが起きているのでしょうか。地球という惑星の未来、私たちが今暮らしている世界に大きな問いを投げかけます。
■監督が求めたもの
ジェニファー・バイチウォル監督は今回、よくある人物の描写の映画ではなく、彼が撮り続けている題材についての映画が作りたかったと言います。
「私が作りたかったのは、どこにでもあるようなアーティストの描写ではありません。本当に重要なことは写真を出発点として扱い、その意味を映画という媒体まで拡げることです。エドワードの写真は非説教的なやり方で意識を変化させようとしています。お説教したいわけでもメッセージを伝えたいわけでもなく、ただ単に私たちがこの星に与えた影響を振り返る場にいざなうだけです。」
また、「彼の写真は間近で見ると大勢の人間のそれぞれの活動が見えます。そこで私たちは人々の顔を近くで捉えることによって、この完璧に威厳のない景観の中にいる個人に威厳を与えようと、物語的な文脈を追うことを試みました。」とも。
そんな監督の強い思いと、バーティンスキーの残酷ながらも美しい写真が重なり、多くを語らずとも、私達の意識に危機感を覚えさせる衝撃的な映画に仕上がっています。
■映画から観る現在の中国
●都市化が与える影響とは
急速に発展していく産業や、加速していく都市化は、そこに暮らす人々や環境に大きな影響を与えています。
『長江哀歌』で有名になった三峡ダムでは、その世界最大となる水力発電量によって原子力発電と火力発電を抑制する一方で、13もの町を水底に沈め、環境にも多大な影響を与えました。
そのほか産業廃棄物である電子機器のゴミなどがたまり、水質汚染や大気汚染が懸念され、産業の影響によって貧富の差も次第に広がりつつあるのです。
中国は、単にほかの国と同じことをしただけ。この映画に映し出される風景は果たして“地球の壊されかた”というべきでしょうか。それとも“人類繁栄の足あと”なのでしょうか。
■DATA
7/12(土)東京都写真美術館ホール、シアターイメージフォーラムほか、全国順次ロードショー!
2006年/カナダ/87分
配給:カフェグルーヴ/ムヴィオラ
COPYRIGHT EDWARD BURTYNSKY
監督・製作:ジェニファー・バイチウォル
撮影監督・音響デザイン:ピーター・メトラー