"The Voice" 第3シーズンの巨大ビルボード。左からレヴィーン、グリーン、アギレラ、シェルトン。


今期"The X Factor"のサンフランシスコ・オーディションにおける風景。Photo by rocor on Flickr

米2大オーディション番組「夢の」ガチンコ対決!その勝者は?

2012年秋のアメリカンTV改編シーズンも佳境に入り、ドラマ/コメディおよびリアリティ番組の新旧シリーズがエンタメ業界を盛り上げている今日この頃。つい先週には、アメリカ国内にて人気を二分しているシンガー発掘オーディション番組の「同日オンエア対決」が実現、TVファンを沸かせたところです。熾烈を極めたバトルの行方やいかに?両シリーズの見どころとともに、白熱の視聴率争いをレポートしていきましょう。

今月23日の開催まであと2週間を切った、第64回プライムタイム・エミー賞。この「TVの一大祭典」における大々的な扱いにも見られるように、アメリカのTV業界の看板となるのはやはりドラマシリーズと言えるでしょう。さかのぼれば日本における海外ドラマ人気の先駆け的存在、ここアメリカにおいても社会現象を巻き起こした「ツイン・ピークス (ABC / 邦題)」や「ビバリーヒルズ高校・青春白書 (FOX)」、医療系ドラマというジャンルを確立した「ER緊急救命室 (NBC)」「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学 (ABC)」、そして映画並みの迫力とストーリー展開がファンの心をガッチリと掴んだ「LOST (ABC)」に「24 –TWENTY FOUR- (FOX)」などなど、挙げ始めたら何時間でも続きそうなライブラリーを誇っています。そんなアメリカンTV界における数々の傑作ドラマにまたひとつ名を連ねるべく、各ネットワーク発の新シリーズが続々とスタートを切るところ。アメリカンTVの改編期である今月から10月にかけてのこの時期は、どの家庭においてもTVがフル回転、熾烈なチャンネル争いが繰り広げることは確実です。

遡ること9月の第3週、まず先陣を切ってプレミア放送を迎えたのが、今やNBC局の冠番組のひとつにまで成長した"The Voice (原題)"。クリスティーナ・アギレラ、アダム・レヴィーン (マルーン5)、シーロー・グリーン、ブレイク・シェルトンらコーチ4名によるスター発掘シリーズは、いよいよ今期で第3シーズン目を迎えました。月曜から水曜までの3日間に渡り、それぞれ120分・60分・60分の尺で放映されたプレミアは、連日の時間帯視聴率にてトップを記録。初日の10日には、最多1228万人の視聴数を集めています。本年度のNFL頂上決戦=スーパーボウルの後番組として放映された第2シーズン・プレミアと比較すると37%ものダウンを喫していますが、翌週の月・火曜の2夜連続放送ではそれぞれ1300万人越えと、プレミア初日を上回る視聴率を獲得。セレブリティ・シンガー4名が「巧みな話術」によって自らのメンバー16名を招集、賞金10万ドルとレーベル・デビューをかけてしのぎを削りあうリアル&エモーショナルなガチンコ・バトルは、着実に新たなファンを 増やしているようです。さらに今週に入ってからは、アギレラとグリーンが来春放映予定の第4シーズンを休養することが確定。それぞれアルバム発表とツアー、そして音楽ならびに自身の生い立ちをベースにしたTVコメディの制作が理由に挙げられており、代役にはセクシー歌姫として人気の高いシャキーラとR&Bシンガーの実力派アッシャーが決定しました。第5シーズンでのカムバックを誓っている両者ですが、これを受けて今後より一層の「伸び」にも期待できそうです。

そんな強豪"The Voice"に対してFOX局が打ち出した大型リアリティ・シリーズこそが、シンガー・オーディション番組"The X Factor"。米版「アイドル」フランチャイズをヒットさせた第一人者、サイモン・コーウェルが再びイギリス本国より持ち込んだ当シリーズも、早いもので第2シーズン目を数えています。なお、ご当地UK版"The X Factor (ITV)"の第7シーズン出演がきっかけでデビューを果たした5人組ボーイズバンド「ワン・ダイレクション」は、現在アメリカおよび日本国内でも飛ぶ鳥を落とす勢い。先に行われたケーブル局MTV主催のMTV Video Music Awardsにおいては、新人賞を獲得するなどノリに乗っています。それに続けとアメリカでも盛り上がりを見せていた米版"The X Factor"のプレミアは、先週水・木曜の2夜連続で放映。初日である12日が"The Voice"のプレミア最終日とガッツリ重なったことで、第1シーズンから23%ダウンとなるおよそ873万人の視聴数にとどまり、ライバル・シリーズに200万人以上もの差をつけられてしまいました。辛酸をなめる恰好となったサイモンは、"The Voice"制作陣がプレミアを以前の2時間ずつ/2夜から3分割にしてぶつけてきた事実にかなりご立腹であった模様。第1シリーズのジャッジに迎え入れていたポーラ・アブドゥル("American Idol (FOX)の元審査員)とニコール・シャージンガー(プッシーキャット・ドールズ)らをあっさりと切り、自らとL.A.リード(エピック・レコードCEO)のコンビに、あのブリトニー・スピアーズと若手人気歌手デミ・ロヴァートを加える策を打った氏。「最強ジャッジ陣」を自負していただけに、今回の敗北にはかなりのダメージを受けたのでは?優勝者に与えられるレーベル契約は500万ドル相当!と類を見ないほどの破格、これからの巻き返しに期待したいところです。

今週末に予定されているプライムタイム・エミー賞においては、リアリティ・シリーズのコンペティション部門を含む4つのノミネートを果たした"The Voice"に対して、"The X Factor"は皆無。なお"American Idol"を見てみると、照明などの技術カテゴリーにおいて3部門の候補入りとなっています。来年の1月より審査員チームを新装、古株のランディ・ジャクソンだけを残してマライア・キャリー、キース・アーバン、ニッキー・ミナージュの投入が決定したばかりの"American Idol"シリーズと同じフォーマットを持つ"The X Factor"。ひどい音痴さんや自作ソングを引っさげた個性派など、多種多様な出演者をフィーチャーした演出が垣間みられる当シリーズに対して、片や"The Voice"では応募ビデオによる事前審査をくぐり抜けた精鋭達のみがオーディションに参加、どちらもコーチ陣をうならせてしまう実力派ばかりによるバトルが続いています。同じ「一般参加型オーディション・シリーズ」といえど似て非なる内容に、今後はどのような視聴率合戦が繰り広げられていくのでしょうか?