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「13 thirteen DVD-BOX VOL.1」

新しい年を迎えて、意欲作ばかりのホラー作品集がリリースされます。冬のホラーの鑑賞方法として、暖かい部屋で背筋も凍るような恐怖を味わってみることをオススメします。

今作はホラー映画ファンを驚喜させた「マスターズ・オブ・ホラー」のシーズン2である。同シリーズは、中心人物で製作総指揮のミック・ギャリスが「人々に影響を与えたホラー映画を少なくとも1本以上監督している」と思う13人の監督が撮った1時間ほどのホラー作品集である。前シリーズにはジョン・カーペンター、ジョー・ダンテ、ダリオ・アルジェントなどが参加していたが、シーズン2の今作には上記の3人の監督などの続投組と新たに参加した監督もいて、とても楽しめる作品集になっている。


13 thirteen DVD-BOX VOL.1

先にリリースされた「VOL.1」では、ジョー・ダンテ、スチュアート・ゴードン、トム・ホランド、ジョン・カーペンター、ミック・ギャリス、ジョン・ランディス、鶴田法男の各監督の7作品が収録されている。この中ではトム・ホランドと鶴田法男の2人が新たに参加した監督である。
トム・ホランドは「フライトナイト」や「チャイルド・プレイ」で知られるが、収録の「アイスクリーム殺人事件」は超能力ホラーの「フューリー」の原作者のジョン・ファリスの短編小説を「テキサス・チェーンソー・ビギニング」のデヴィッド・J・スコウが脚本化し、主演は「デビルズ・リジェクト」のウィリアム・フォーサイスとホラー映画ファンには堪らない組み合わせになっている。
鶴田法男監督は前シーズンの三池崇史監督に続いての日本からの参加で、「リング」の鈴木光司の「夢の島クルーズ」を原作にした「ドリーム・クルーズ」である。「ドリーム・クルーズ」は長編バージョンが劇場公開されて3月にソフトリリースされるが、それに先立つリリースで、しかもこのテレビ放映バージョンは今作のセル版でしか見ることができない(他の作品は単独でセル及びレンタルあり)。
 
好きな監督でもあって、個人的にも楽しみにしていたのがジョー・ダンテ監督の「男が女を殺すとき」とジョン・カーペンター監督の「グッバイベイビー」。「男が女を殺すとき」はSFファンには広く知られたネヴィラ賞受賞のジェイムズ・ティプトリー・Jr.の名作短編小説「ラセンウジバエ解決法」の映画化である。脚本はシーズン1でもジョー・ダンテ作品の「ゾンビの帰郷」を書いた鬼才サム・ハムで、未知のウィルス感染で男性が女性を殺し出す現象を描く。
ジョー・ダンテ監督が80年代から企画していた念願の映像化で、原作の世界的規模を限定した地域にして描いているが、予想以上の見応えがあった。主演は「ビバリーヒルズ高校白書」で知られるジェイソン・プリーストリーとニューシネマ時代から最近の「オーシャンズ」シリーズにも出演するエリオット・グールド。「グッバイベイビー」は堕胎というヘヴィーな題材をテーマにした怪作で、ジョン・カーペンター監督の息子のコディ・カーペンターの音楽が、父親が書く音楽に似てきていて興味深い仕上がりだ。同監督の過去作品の「遊星からの物体X」のようなショットもあってファンならニヤリとすること受けあいだ。

 「黒猫」は、「死霊のしたたり」などで知られるスチュアート・ゴードン監督作品で、エドガー・アラン・ポーの同名の名作を見事な雰囲気で映像化している。「言葉なき殺人」は、「ブルーズ・ブラザーズ」のコメディで知られるが、ホラーの「狼男アメリカン」があるジョン・ランディス監督作品で、ランディス版「サイコ」とも言うべき佳作。「ヴァレリーの誘惑」は中心人物のミック・ギャリス監督作品で、クライブ・バーカーの原作を丁寧に映像化している。80年代のホラー/SF作品で知られるリチャード・バンドの音楽もホラー映画のファンには堪らないだろう。特典としてメイキングやSFXなどを解説した映像も収録されている。

ダリオ・アルジェント監督作品も収録される2/13発売のVol.2も楽しみだ。


●「13 thirteen DVD-BOX VOL.1」
  2008/1/13(日)発売
  価格 ¥13,440税込 単品各¥2,940税込
  発売元:角川映画
  販売元:角川エンタテインメント
  (C)2006 IDT Entertainment,inc.


TEXT BY わたなべりんたろう

【著者プロフィール】
映画・音楽・ファションのライター。雑誌「Elle Japon」、「映画秘宝」、「TV Bros」、「ミュージック・マガジン」、「CDジャーナル」などで執筆中。
ここ数年の作品では「トゥモロー・ワールド」をこよなく愛す。

2008年01月08日 19:00

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