« イギリスの映画関連スポット2 | メイン | 5月のイベント雑感 カンヌとユーロ・ビジョン2007 »

始まりました! 第60回カンヌ国際映画祭


ベルリン、サンダンス、トロント、ベニスなど、国際的な映画祭のなかでも歴史が古く、メディアの注目度も高いカンヌ国際映画祭。60回目の開催となる今年の映画祭にも、4000を越えるジャーナリストと世界の映画人が詰め掛けた。

オープニングはウォン・カーォイの新作から

 17日、オープン上映となった『マイ・ブルーベリー・ナイト』はウォン・カーォイ初の英語作品。カフェの店長(ジュード・ロウ)と失恋した女性客(ノラ・ジョーンズ)が織り成すラブ・ロードムービー、というこの作品だが、ジャーナリストからは「ありきたりなアメリカ映画」という厳しい声もあがり、反応は上々とはいえないようだ。が、オープニング作品がパルム・ドールに選ばれるのもカンヌではよくあること。まだまだ先はわからない。
 恒例のレッドカーペットには、この作品で映画デビューしたノラ・ジョーンズとジュード・ロウの姿も。映画のなかのロマンティックなキスシーンさながら(?)2ショットで登場した。このほか、『オーシャンズ13』のジョージ・クルーニー、ブラット・ピット、ジュリア・ロバーツやインド人女優のアイシュワリヤ・ライ(『ジーンズ』)、ジュリエット・ビノシュ等も上映会に現れた。
 ハリウッドの豪華絢爛なレッドカーペットと違い、リゾートならではのリラックスした雰囲気も、フレンチ・リビエラのカンヌならでは。20日には、フェスティバル開催60回を祝うため、レッドカーペット近くの3Dスクリーンをバックに英のロックバンドU2のライブパフォーマンスも行われた。海辺のリゾートとU2、は何となく合間見えない気もするが、フランス語で祝いの挨拶するボノに映画ファンも熱狂。「Encore, encore!」の声が上がるほどだったとか。

22作品のなか、どの作品が栄光に輝くか

 今年、審査をリードするのは、映画「クィーン」の監督、スティーブン・フリアーズ。英国人監督が審査員長を務めるのは60回の歴史のなかで始めてのことだ。
 全22作品(リストはこちら:http://www.festival-cannes.fr/index.php/en/archives/films/year/2007#inCompetition )には、開催国フランスからは、ガス・ヴァン・サント監督の『パラノイド・パーク』、エミール・クリストリツア監督の『ザ・ラブ・ソングス』『プロミス・ミー・ディス』などがコンペティション作品に選ばれた。
 共産主義政権化にあったルーマニアの田舎町が舞台の『4 Months, 3 Weeks and 2 Days』(ルーマニア)は、妊娠した少女とその友達を描いたストーリー。主演女優アナマリア・マリンカは、英BAFTATVアワードで新人女優賞を受賞したルーマニアの女優で、彼女の出演した「セックス・トラフィック」は、ドキュメンタリータッチの問題作だ。

 そのほか、昭和天皇をモデルにした『The Sun』が話題になったアレクサンドル・ソクーホフ監督の『アレクサンドリア』、アジアからは『サマリア』『春夏秋冬、そして春』でヨーロッパの映画ファンをうならせたキム・ギドク監督の『ブレス』や日本の河瀬直美監督作品などがリストに上がっている。

 コンペティション作品以外で最も話題にあがっているのが、マイケル・ムーア監督の『SICKO』。国ではなく、民間企業が主導権をとるアメリカの医療制度に切り込んだ問題作だ。とにかく、すべてに金次第で収入によって受けられる治療が決まってしまうアメリカの医療制度への疑問符を投げかけると同時に英国やフランスの無料医療制度も取材されており、NHS(英国の医療保険制度)で出産する夫婦のワンシーンも。私自身もその制度で出産をしたばかりなこともあって(実際は無料医療にもさまざまな問題はあるのだけれど)、ぜひ見てみたい一本である。

 開催国のフランスはこのところ、パルム・ドールの受賞とはごぶさた。アジア映画の受賞の可能性も高そうな今年。27日の授賞式が楽しみ!

オフィシャルサイト:http://www.festival-cannes.fr/index.php/en


TEXT BY シラヤナギリカ

2007年05月23日 11:27

この記事へのトラックバックURL:
http://blog.eigafan.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/461

 
東宝東和株式会社