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テレビ業界は火の車?秋の新番組、続々スタート

日中の日差しはまだまだ強いですが、少しずつ秋の訪れを感じるようになってきたロサンゼルス。映画界では、夏休みの大作ラッシュが一段落し、今後は年末にかけてアカデミー賞候補の作品が続々と封切られるシーズンに突入です。映画ファンにとってはちょっと一休み、といった雰囲気の中、アメリカのテレビ界では9月から始まる新番組が次々とスタートを切りました。

今秋の新番組の数々はどれを取ってもハイコストで、尋常ではないお金のかけ方は過去に前例が無いほど。1シーズン分の制作費は平均72億円となっており、昨今の大作映画まるまる1本分か、それ以上とも言われています。更に、この秋スタートの14作品のうち半分は、初回の「パイロット版」と呼ばれる第1話だけに平均7億円以上も費やしています。2年前と比べると50%以上の上乗せということに。このようにどんどん加熱しているテレビ番組の制作費ですが、実際はどうやら新番組よりも、”CSI: New York” (CBS) や”ER” (NBC)、”Grey’s Anatomy” (ABC) のような以前からある番組の新シリーズの方が、初回の放送では好成績を収めているようです。

なぜ、今日のテレビ業界では白熱した制作費競争が繰り広げられているのか?その理由のひとつに、大人気ドラマ”Lost” (ABC) の影がちらついている模様。日本でも最近DVDレンタルが開始され、どっぷりとハマっている方々も多いことでしょう。このシリーズ、実は2年前のパイロット版をほとんどハワイで撮影するなど、初回の1話に総額16億円以上もかけていたのです。その効果がどれ程だったかは定かではありませんが、結果として今のような大ヒットに恵まれ、各チャンネルはこぞって「Lost効果」ともいうべき効果を狙っているようです。

更に、アメリカで大人気の”TiVo”やHDD&DVDレコーダーなどの普及により、各番組に対するスポンサーの出資が激減。ゴールデンタイムのCM30秒に2000万円以上も支払うスポンサーとしては、見て欲しいCMが結局カットされてしまうのに、多額の投資をするのはいかがなものかと躊躇しているようです。その結果、スポンサー達は若年層の集客が見込めるインターネット上の宣伝に移行。この風潮は自社の番組宣伝についても同じことで、テレビCMをあまり見てもらえない今日では、雑誌・新聞・ケーブルテレビ・看板・ラジオなどのあらゆるメディア媒体を通し、自腹で宣伝活動をするようになってきているのです。その広告費用は、ABC・CBS・Fox・NBCなど各メジャーチャンネルの平均で、およそ110億円。こちらは、3年前と比べて2倍にも膨れ上がっています。

まるで新作映画の宣伝のように、街の至る所でテレビ番組の看板を見掛けるようになりましたが、公開数週間で分かりやすい結果が出る映画業界とは違い、テレビ番組は数ヶ月も続く長期戦。以前は”Friends” (NBC) のように、徐々に人気に火が付いて利益を上げていく番組が主流とされていましたが、今日では最初の数エピソードが決め手となり、その話題性と集客が重要になってきている模様です。テレビマン達は、なんとか番組を売れないかと頭を抱えている様子。インターネットでのダウンロードやiPodでの視聴など、新しいメディアによる様々な試みもされていますが、その効果はまだまだ神のみぞ知るといったところ。アメリカの熾烈なテレビ番組戦争は、もうしばらく続きそうです。


これが”Ugly Betty”の主人公、ベティー
そんな厳しい状況下で、健闘しているのが”Heroes” (NBC) と”Ugly Betty” (ABC)の新作2本。普通の生活を送っていた人々が、突然”普通”じゃないパワーを身に付けてしまうという”Heroes”は、他の番組のように有名俳優がいないものの、そのユニークなストーリーと特殊効果で、特に若者からの人気を集めているようです。一方、ものすごいタイトルの”Ugly Betty”は、近年ドラマが次々と大当たりしているABCからの新作。コロンビアで大ヒットしたドラマの原作をもとに、新米ベティーが華麗なるファッション業界の荒波にもまれながらも成長していくコメディードラマです。新進女優、アメリカ・フェレラ演じる赤縁メガネ・矯正のブリッジ・ぽっちゃりとした姿のベティーはコミカルかつとてもチャーミング。今後もますます注目を浴びそうです。

他の新番組のように、ビッグスター達をキャストしていないこの2作品が健闘しているのは、少し意外かもしれません。もちろん、製作者達は大ヒットを信じて番組をじっくり練り上げてきている訳ですが、当たるか否かはどうやら”Who Knows?” 誰にも分からないようです。今後も、話題となっているテレビ番組をその都度チェックして、どんどん特集していきたいと思います。


TEXT BY アベマリコ

2006年10月10日 13:21

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