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測定方法を変更・アメリカのTV視聴率が変わる!?

前回のコラムで、9月から始まった新番組をご紹介した矢先の出来事。去る10月9日、40ヶ国以上ものテレビ視聴率を測定する会社「ニールセン (Nielsen) 」(過去に日本国内でも測定を行っていましたが、2000年より撤退。現在日本ではビデオリサーチ社が一手に担っているようです)が、アメリカにおける視聴率測定方法の一部変更を発表しました。テレビ業界を駆け巡ったこのニュース。今後の視聴率をガラリと変えてしまいそうな新ルールの中身に、ちょっと詳しく迫ってみましょう。

テレビの視聴率というのは、選ばれた家庭に送信機を取り付け、今どんな番組を見ているかをチェックする事で計測します。ニールセン社では各地域・人種・家族形態などにより、出来るだけ国内での平均値となるよう選んだ世帯にメーターを設置し、その結果を統計学に基づき国内全体のものとして換算し、視聴率を割り出してきました。つまり、その家庭内の一台のテレビで見られた番組のみが集計されていたのです。この方法だと、その家の子供が見ている番組はカウントされません。テレビ局が一番知りたい、若者に人気のある番組についてはわからないという片手落ちになってしまいます。

新しい測定方法では、家族が別の場所に住んでいる場合でも換算対象に入ることになります。 今回、主な対象となるのが学生達。他州の大学や全寮制の学校など、家からはなれた場所に住んでいる子供達の視聴傾向も追うことができます。寮やアパートに住む学生のテレビにもメーターを設置し、より詳しい視聴率を測定します。あたかも同じ家庭にある別の部屋のテレビとして、子供達が見る番組もトラックしていくことになるのです。ちなみに、就職などで他州に渡り自立している子供達は、同じ世帯として換算されないようです。

長年に渡り、特にテレビ業界の重役達は今までの測定方法に強い疑念を抱いていた様子。視聴率とは彼らにとってある意味で「命」です。結果次第で番組の傾向や中身・スケジュールの調整がなされるだけでなく、より詳しい視聴傾向をとらえることによって、人気の時間帯にCMを流したい各スポンサーに適切な広告費用を請求できるようになるのです。先週のコラムでもお伝えしたように、ただでさえ激減している今日のテレビ界におけるスポンサー費用は、重役にとっては$1でも惜しいもの。今回の変更が、いくつかのチャンネルによっては起爆剤となるかもしれません。

今のところ、アメリカで最も視聴率を取っているチャンネルと言われているのがCBS。近年では、”CSI”/ ”CSI: Miami” / ”CSI: New York” などのCSIドラマシリーズが人気を博していますが、主に高い年齢層によるニュース番組やバラエティー・ショーの視聴率で安定しています。ここに若年層の視聴分が加われば、”Lost” / ”Grey’s Anatomy” / ”Desperate Housewives” など、ここのところかなりドラマに強いABCや、”American Idol”が大当たりしたFoxなどが頭角を現してきそう。特に頻繁にテレビをチェックしたり、広告や新商品に敏感なのも学生などの若者達。更にはクチコミをお得意とする世代なので、各チャンネルによる学生達をターゲットにした宣伝競争も過熱していきそうです。

ニールセン社にとっては、新しいメーターの設置など莫大な資金が必要とされることになりますが、より正確な数値を目指すためには大切な一歩。何世帯ぐらいの増加になるかはまだ未定のようですが、この新しい測定方法には一般的に期待が持たれているようです。視聴者としても、出来る限りリアルな情報が欲しいもの。来年以降のチャンネル・ランキングの変動に注目が集まりそうです。


TEXT BY アベマリコ

2006年10月12日 20:37

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