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ハリウッドから全米へ… “N-word”事件
現在、アメリカでは、ある事件の話題で持ちきりです。2週間ほど前にウエスト・ハリウッドのスタンダップ・コメディ劇場で起こった、あるコメディアンの人種差別的発言。以来、様々な人々を巻き込み、大きく膨らむ一方のこの事件ですが、日本では殆ど報道されていません。そこで今回は、この事件の全容と現在までの経緯をレポートしてみたいと思います。
事の始まりは去る11月17日、サンセット大通りにある老舗スタンダップ・コメディ劇場”The Laugh Factory”で勃発。当日舞台に立っていた、人気TVシリーズ、”Seinfeld”のクレイマー役でお馴染みのコメディアン、マイケル・リチャード氏が、彼の公演中に”N-word”、いわゆる「ニガー」という言葉を何度も発言。それに腹を立てて文句を言った黒人の観客2人組に対してマイケルは更に、黒人に対するリンチをほのめかすような発言を、あまりに低俗な言葉とともに浴びせかけました。マイケルと客2人、三者の罵り合いは、マイケルが舞台を去るまで続けられ、多くの観客達は席を立ってしまったとのこと。そして、そこに居合わせた観客が携帯電話のビデオで撮影した模様が、TMZ.comというインターネットサイトに掲載され、この事件が明るみに出ることになりました。
この騒ぎを受けて”The Laugh Factory”は翌日、今後はマイケルを舞台に迎えないと発表。11月20日には、人気トーク番組”Late Show with David Letterman”にマイケル本人が出演し、カメラの前で深く謝罪しました。「私は人種差別主義者ではなく、ただ純粋な怒りにまかせた愚かな発言だった」との弁でしたが、当の二人はこの謝罪を一切受け入れず、現在では法的措置に踏み切る構えだそうです。その後、マイケルは今年4月にも、舞台上でのユダヤ人に対する人種差別的発言をしていたことも暴露されました。氏の代理人は「彼にはとても重要なユダヤ人の恩師が数人おり、彼はユダヤ哲学を崇拝している」と弁護に必死ですが、事態は色々なところに飛び火して、当分収拾がつきそうにありません。
この事件に対して公民権活動家や各黒人団体もすぐさま猛反発し、相次いで遺憾・憤慨のコメントを発表。多方面からマイケルに対する非難の声が上がっています。元来、この”N-word”は黒人英語としては今日でも多く使われ、ラッパー達によるHip-Hop音楽やポップミュージックにも多数登場します。ただ、あくまで黒人同士というのが前提であって、他の人種が使う言葉としてはみなされていないのです。
このところ、ラジオやテレビ番組ではとにかくこの話題で持ちきり。言語学者やアフリカン・アメリカン学研究家に”N-word”の詳しい由来を聞きに行ったり、アメリカで最も古く、そして影響力があるとされる公民権運動組織NAACP(National Association for the Advancement of Colored People: 全国有色人種地位向上委員会)による”N-word”撲滅運動・”Just Say ‘No’ to the N-word”キャンペーンに署名が集められるなど、日に日にその報道には拍車がかかっています。これに対して、公民権活動組織Community Advocates Inc. の副社長であり、当人も黒人であるジョー・ヒックス氏は「連日の加熱し過ぎた報道はあまりに馬鹿げている」とコメント。「”N-word”はあくまでブラック・コミュニティーで使われている言葉であり、確かに公の場で使われるべきものではない。しかし、黒人団体も無理やり現代の都市文化を変えようとするべきではない」と、行き過ぎとも取れる活動に対し、強く非難しています。
日本でも、外国人移住者や国際結婚が増えていますが、肌の色の違いがほとんど無い単一民族国家では、なかなか実感できない出来事が今回の”N-word”事件だと思います。今後は、この事件がどのような方向に向かうのか、本当に”N-word”を口にする人々がいなくなるのか、そして我々も含めた他人種が、この事件から何を学ぶのか。今後も目が離せない事件です。
TEXT BY アベマリコ
事の始まりは去る11月17日、サンセット大通りにある老舗スタンダップ・コメディ劇場”The Laugh Factory”で勃発。当日舞台に立っていた、人気TVシリーズ、”Seinfeld”のクレイマー役でお馴染みのコメディアン、マイケル・リチャード氏が、彼の公演中に”N-word”、いわゆる「ニガー」という言葉を何度も発言。それに腹を立てて文句を言った黒人の観客2人組に対してマイケルは更に、黒人に対するリンチをほのめかすような発言を、あまりに低俗な言葉とともに浴びせかけました。マイケルと客2人、三者の罵り合いは、マイケルが舞台を去るまで続けられ、多くの観客達は席を立ってしまったとのこと。そして、そこに居合わせた観客が携帯電話のビデオで撮影した模様が、TMZ.comというインターネットサイトに掲載され、この事件が明るみに出ることになりました。

この騒ぎを受けて”The Laugh Factory”は翌日、今後はマイケルを舞台に迎えないと発表。11月20日には、人気トーク番組”Late Show with David Letterman”にマイケル本人が出演し、カメラの前で深く謝罪しました。「私は人種差別主義者ではなく、ただ純粋な怒りにまかせた愚かな発言だった」との弁でしたが、当の二人はこの謝罪を一切受け入れず、現在では法的措置に踏み切る構えだそうです。その後、マイケルは今年4月にも、舞台上でのユダヤ人に対する人種差別的発言をしていたことも暴露されました。氏の代理人は「彼にはとても重要なユダヤ人の恩師が数人おり、彼はユダヤ哲学を崇拝している」と弁護に必死ですが、事態は色々なところに飛び火して、当分収拾がつきそうにありません。
この事件に対して公民権活動家や各黒人団体もすぐさま猛反発し、相次いで遺憾・憤慨のコメントを発表。多方面からマイケルに対する非難の声が上がっています。元来、この”N-word”は黒人英語としては今日でも多く使われ、ラッパー達によるHip-Hop音楽やポップミュージックにも多数登場します。ただ、あくまで黒人同士というのが前提であって、他の人種が使う言葉としてはみなされていないのです。
このところ、ラジオやテレビ番組ではとにかくこの話題で持ちきり。言語学者やアフリカン・アメリカン学研究家に”N-word”の詳しい由来を聞きに行ったり、アメリカで最も古く、そして影響力があるとされる公民権運動組織NAACP(National Association for the Advancement of Colored People: 全国有色人種地位向上委員会)による”N-word”撲滅運動・”Just Say ‘No’ to the N-word”キャンペーンに署名が集められるなど、日に日にその報道には拍車がかかっています。これに対して、公民権活動組織Community Advocates Inc. の副社長であり、当人も黒人であるジョー・ヒックス氏は「連日の加熱し過ぎた報道はあまりに馬鹿げている」とコメント。「”N-word”はあくまでブラック・コミュニティーで使われている言葉であり、確かに公の場で使われるべきものではない。しかし、黒人団体も無理やり現代の都市文化を変えようとするべきではない」と、行き過ぎとも取れる活動に対し、強く非難しています。
日本でも、外国人移住者や国際結婚が増えていますが、肌の色の違いがほとんど無い単一民族国家では、なかなか実感できない出来事が今回の”N-word”事件だと思います。今後は、この事件がどのような方向に向かうのか、本当に”N-word”を口にする人々がいなくなるのか、そして我々も含めた他人種が、この事件から何を学ぶのか。今後も目が離せない事件です。
TEXT BY アベマリコ
2006年11月30日 21:12
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