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ティーンには目の毒?CWのドラマシリーズが絶好調

この秋、注目のスタートを切った”90210 (原題)”と、今期で第2シーズンを迎えた”Gossip Girl”。それぞれLAとNYのリッチな高校を舞台にした学園ドラマですが、これらはすべて、最近話題のケーブル局、CWによる放映という共通点があります。2006年開局と比較的新しいネットワークであり、これまでもティーン向けの番組を十八番にしてきたCWですが、今週、視聴者数の自己ベスト記録を更新しました。米国中の父兄をヒヤヒヤさせまくりの描写、押し寄せる抗議すら上手に「再利用」したマーケティング法など、アメリカ第5ネットワークの戦略に注目です。

CWは、2006年9月よりスタートしたアメリカ地上波放送局。UPNのオーナーであったCBSコープと、WBを所有していたワーナー・ブラザーズによるジョイントベンチャーとして誕生しました。2局の合併後、CBS Corp. とWarner Bros.の頭文字を取って「CW」へと生まれ変わり、今や通称Big 3のABC・CBS・NBC にFOXを加えた5大ネットワークに急成長。開局から、日本でもDVDが発売されたばかりの「ヴェロニカ・マーズ (邦題)」、WBから移動してこの9月で第6シーズンを数える「ワン・トゥリー・ヒル」、スーパーモデルを発掘するリアリティ・ショー”America’s Next Top Model”など、数々のヒット番組を輩出してきました。更に今年からは、土曜の午後に”CW4Kids”としてキッズ枠を設置して、日本のアニメ「遊☆戯☆王 5D’s/Yu-Gi-Oh! 5D’s」などを放送中です。

ティーン向けシリーズを数多く製作するCWにとっては、いかに若年層を惹きつけるかがカギ。よって、各番組の内容は彼らの好奇心をくすぐるために、過激なものへと年々エスカレートしています。本コラムでも特集を組んだ新ドラマ”90210”は、初回放送分からいきなり保護者テレビ審議会 (PTC: Parents Television Council )よりクレームが。TV業界の秩序を正し、特に青少年を暴力/ワイセツ表現から守ることを目的に発足されたNPO団体PTCとしては、運転席に座った男子高校生の股間から女子高生が顔を上げる…といった意味深?なシーンは、一瞬といえど言語道断に映った模様です。それでも、結局は放送してしまったのだから後の祭り。とりあえず謝罪の声明文を出したCWですが、今後の内容を自重するのかどうかは明言されていませんでした。

こうしたCW vs. PTCのバトルは今に始まったことではなく、この春夏に街中を席巻した”Gossip Girl”の広告にも非難は集中。一部では、撤去要請が入るほどの騒ぎになりました。数種類のポスターにはメインキャラクター達の際どいシーンばかりが選ばれ、業界紙などから拝借した「キャッチコピー」が添えられています。特にPTCは、ボストン・ヘラルド紙による番組へのコメント「保護者の悪夢」が載ったブレイク・ライブリー版に対して、明らかにティーンやポップティーンが関心を持つよう助長していると猛抗議。それに対応するかのようにCWが作成した新広告には、PTCによる”Mind-Blowingly Inappropriate (ヒドく不適切)”との声明が引用されていたというから笑えます。双方が過熱するばかりのいたちごっこは、一体いつまで続くのでしょうか。

バッシングすら利用するCW流の戦術が功を奏したのか、ここに来て”Gossip Girl”は過去最高の視聴率を獲得。第1シーズンの平均視聴数が240万だったところ、月曜に放映された第3話は延べ370万人がチャンネルを合わせる結果となりました。全体で昨シーズンより17%もアップ、特に18歳-34歳の女性層では27%、18歳から49歳までの女性で換算すると30%近くも上昇の大躍進。ちなみに、鳴り物入りで始まった”90210”の視聴数は、これまでの3エピソードを平均して445万人。CWの高笑いとPTCの歯ぎしりが聞こえて来そうな数字となっています。

写真は、現在もハリウッドに掲示されている看板の一部。大人の目には単純にホットですが、もし子供に突っ込まれたなら確かに言葉に窮するかも。ダメだ危険だと言われれば、逆にキッズ達は興味を示すもの。そこのところを保護者同様、CWも熟知しているのかもしれません。マスコミの反応をうまく使ったCWですが、今月末からは他局の新番組ラッシュ。これからの視聴率バトルに生き残れるのかが見どころです。

TEXT BY アベマリコ

2008年09月18日 14:11

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