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「天使の歌声」に捧ぐ: 第54回グラミー賞

栄えあるグラミー賞のセレモニー前日。レッドカーペットの準備に追われていたロサンゼルス、そして世界中をも揺らしたホイットニー・ヒューストンの訃報。2012年度のGrammys は当初のプログラムを変更し、世紀のディーヴァへ手向けるトリビュートとして催されました。


  正確なピッチと圧倒的な美声を誇った
  ホイットニー・ヒューストン、享年48歳。
  Photo by zennie62 on Flickr
グラミー賞を前日に控えた2月11日午後、前夜祭におけるパフォーマンスを控えたまま、一人ひっそりと息を引き取っていたホイットニー・ヒューストン。彼女の遺体が発見されたビバリー・ヒルトンホテルには、報道陣および大勢のファンがつめ掛け、一時はパニック状態となりました。翌12日、LAダウンタウンに構えるステープルズ・センターに集まったアーティスト達の多くはブラックのドレス/タキシードに身を包み、未だ信じられないといった顔つきでヒューストンを偲んでいます。


ブルース・スプリングスティーンとEストリート・バンドとのコラボレーションで幕が上がり、続いてステージに立ったのは、本年度のホストを務めたLL・クール・J。「我々ファミリーに、不幸がありました」と口を開くと、会場を埋め尽くしたゲストやファン達とともに、ヒューストンへ黙祷を捧げました。彼によるこの日の司会進行は、突然の悲報にも努めてポジティブに受け留めたもの。今は亡き歌姫へのリスペクトを湛え、彼女がもたらした美声を祝福する様子には、各媒体より賞賛の声が上がっています。その後、豪華ゲストによるパフォーマンスでは、ブルーノ・マーズ、アリシア・キーズ、リアーナ、スティーヴィー・ワンダーといった顔ぶれが、声高らかに楽曲をヒューストンに捧げており、ジェニファー・ハドソンが言わずと知れたあの名曲 ”I Will Always Love You”を歌い上げると、ステージは満場の拍手に包まれました。

<第54回グラミー賞: ゲスト・パフォーマー/出演順>
ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド、ブルーノ・マーズ、アリシア・キーズ&ボニー・レイット、クリス・ブラウン、ケリー・クラークソン&ジェイソン・アルディーン、フー・ファイターズ、リアーナ&コールドプレイ、ビーチボーイズ&マルーン5&フォスター・ザ・ピープル、ポール・マッカートニー、ザ・シヴィル・ウォーズ、テイラー・スウィフト、ケイティ・ペリー、アデル、トニー・ベネット&キャリー・アンダーウッド、ジェニファー・ハドソン、デヴィッド・ゲッタ&クリス・ブラウン、フー・ファイターズ&デッド・マウス、ニッキー・ミナージュ、(トリ)ポール・マッカートニー&ブルース・スプリングスティーン&ジョー・ウォルシュ&ラスティー・アンダーソン&ブライアン・レイ、デヴィッド・グロール

受賞結果を見てみると、2012年度は圧倒的な強さを見せつけた「アデル・イヤー」。最多7部門のノミネートを数えたカニエ・ウェストの次点6部門に迫っていた彼女ですが、年間アルバム賞、レコード賞、楽曲賞といった主要部門全制覇となる6冠に輝いています。昨年に受けた声帯手術から初めてとなるパフォーマンスは、この日のハイライトのひとつ。弱冠23歳にして聴く者を魅了してしまう貫禄の歌声は、同胞であるポール・マッカートニー、そして各ポップ部門で同時にノミネートされていたリアーナらアーティストによるスタンディング・オベーションを浴びています。失恋の痛手を「The Voice」と謳われる歌声で紡いできた彼女ですが、この先4~5年間は静養しつつ、会場にも同伴していた新恋人とゆっくり過ごしたいと語っているとのこと。これにはファンの悲鳴が聞こえてきそうですが、次のアルバムは幸せいっぱいのラブソング尽くしになるかもしれません。そんな乙女なアデルに続いて、フー・ファイターズは5部門を獲得、カニエ・ウェストは4部門にてグラモフォン(蓄音機)型トロフィーを持ち帰っています。

第54回グラミー賞: 主要部門受賞リスト

年間アルバム賞: アデル「21」
年間レコード賞: アデル “Rolling in the Deep”
楽曲賞: アデル&ポール・エプワース “Rolling in the Deep”
ポップ・ボーカル・アルバム: アデル「21」
ポップ・ソロ・パフォーマンス: アデル “Someone Like You”
ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス: トニー・ベネット&エイミー・ワインハウス「Body and Soul」
ロック・パフォーマンス: フー・ファイターズ “Walk”
ロック・アルバム: フー・ファイターズ「Wasting Light」
R&Bソング: シーロー・グリーン&メラニー・フィオナ “Fool for You”
R&Bアルバム: クリス・ブラウン「F.A.M.E」
ラップ・コラボレーション: カニエ・ウェスト “All of the Lights”
ラップ・アルバム: カニエ・ウェスト「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」
カントリー・ソング: テイラー・スウィフト “Mean”
カントリー・アルバム: レディ・アンテベラム「Own the Night」
新人賞: ボン・イヴェール

3時間半に渡ってCBS局にて放映された、The 54th Grammy Awards。トロフィーをさらったアデルを始め、会場を訪れた誰もが惜しんだホイットニー・ヒューストンとの「お別れ会」は、故マイケル・ジャクソンが8冠を制した1984年度に次ぐ過去ベスト2の視聴率を樹立、およそ3900万人もの人々がチャンネルを合わせたと報じられています。グラミー賞を総ナメにしたベスト・セラー ”I Will Always Love You”のタイトル通り、彼女自身と奇跡の歌声はこれからもずっと愛され続けていくことでしょう。”Voice of An Angel”を持ったディーヴァのご冥福を、心よりお祈りいたします。


TEXT BY アベマリコ

2012年02月16日 10:24

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