« 次回の出演作&共演者は?オスカー受賞後のお仕事 | メイン | かつての人気リアリティTVシリーズが惨敗!世代交代の兆し? »

ファッション系リアリティTVに新風?NBC局『Fashion Star』

今月13日、いよいよ全貌が明らかとなった新TVシリーズ”Fashion Star”。その豪華キャストにも前評判が集まっていた当番組は、これまでのファッション系リアリティ・ショーとは一線を画す番組構成が話題となっています。


  若年層の視聴者向けか、番組内ではTop40と
  呼ばれるポップチャート曲に乗せてショーを開催。
  Photo by Art Comments on Flickr

昨年度、新感覚シンガー・オーディション番組”The Voice (原題)”を発表するや、第2シーズンにして初回放送3800万人にも迫る最高視聴率を記録したNBC局。元祖国民的リアリティ番組「アメリカン・アイドル (FOX/邦題)」の最新シーズン11による初回プレミア視聴数を軽く上回る快挙を遂げた同局が、またもやリアリティ・シリーズ業界に新風を吹き込むこととなりました。3月13日にパイロット(=第1エピソード)が放映された”Fashion Star (以下FS)”は、ファッション系リアリティ・ショーの先駆け「プロジェクト・ランウェイ (Lifetime)」に代表される、デザイナー発掘TVシリーズ。いかにもベタなタイトルとは裏腹に、ファッショニスタの名に相応しい講師陣や、大手デパートメント・ストアや人気ショップといったスポンサー、そして視聴者をも「参加」させてしまう目新しい手法を取り入れることで、飽和状態であった同系のリアリティ番組に一石を投じています。

クリスティーナ・アギレラ、シーロー・グリーン、アダム・レヴィーン (マルーン5)、ブレイク・シェルトンら歌唱コーチを招いた”The Voice”と同様、まずは番組の華となるMentor(=講師)の召集に力を入れたFS。すっかり昨今のトレンドとなっている「セレブ・ブランド」の第一人者として、初めて年商10億ドル級ビジネスへと成長させたジェシカ・シンプソン、気が付けば「問題児セレブ」からオシャレママに変貌を遂げ、今では2つのブランドを抱えているニコール・リッチー、カルバン・クラインやラルフ・ローレンにてデザイナーを務めた後、自身のブランドを立ち上げたジョン・ヴァルヴェイトスらを迎えています。そして番組進行を務めるのは、当番組の製作総指揮のひとりとしても名を連ねる元スーパーモデルのエル・マクファーソン。彼女も20年以上に渡ってランジェリー・ラインをプロデュースしており、この度のパイロット版においては、同ラインのファッション・ショーがオープニングを飾りました。

ハイディ・クルムが番組の顔である「プロジェクト・ランウェイ」や、世界的なファッション・アイコンとして人気の高いアレクサ・チャンを司会に抜擢した”24 Hour Catwalk (Lifetime)”など、これまで放送されてきた数々のデザイナー発掘シリーズでは、勝ち抜いた勝者のみがコレクションを発表できるのが通例でした。つまり、ファイナルまで応援し続けたデザイナーが敗退してしまえば、彼らのコレクションを入手することは大変難しくなっていました。しかし今回のFSでは、タッグを組んだアパレル・スポンサーによる「入札方式」を取ることで、週ごとに勝ち抜きデザインを選出。さらに、オンエア直後の各店オンライン・ストアおよび翌日の店頭にて、そのデザインの洋服を実際に購入することが出来るのです。日本においては、ドラマ内で使用されたドレスやバッグなどを番組終了後に購入可能にするシステムがすでに取り入れられていますが、ここアメリカではかなり画期的。しかもスポンサーには、アメリカを代表する高級百貨店サックス・フィフス・アベニュー、全米に800店舗以上を構えるデパートメント・ストアのメイシーズ、そしてリーズナブルでありながらトレンドを追うエイチ・アンド・エムと、幅広いファッション層をカバーした3社が名乗りを上げています。

ここで、FSの流れを詳しくご説明しましょう。一般公募で選ばれた14名の「未来のデザイナー」達は、毎週出されるお題に沿ったデザインで、ミニ・ファッションショーを開催。それを見た各ストアのバイヤー3名は、気に入ったデザインがあれば入札します。つまり、購入額を提示するか「No Offer」として見送るかを決めます。ここで入札があったデザイナーは、自動的に翌週へと進出。その一方、どのバイヤーからもオファーを受けられなかったデザイナーは「敗退候補」となり、講師とバイヤー計6名によってワースト3が選び出されたのち、講師陣にもバイヤー側チームからもチャンスをもらえなかったデザイナーが、その週の敗退者となります。なお、パイロットでのお題は、彼らの自信作を発表する「シグネチャー・ルック」。14人中8人が入札ゼロ、そこから絞られた3名から更に1名が、第一敗退者として番組を去りました。なお、入札を受けた6名によるデザインは、現在オンラインならびに各ストアにて販売中。このようなフォーマットに従い、最終的に勝ち残ったひとりのデザイナーには、3社による合計発注額600万ドル分のコレクションが買い取られることになります。

参加者達がデザインを行ない、ランウェイ・モデルが身につけたコレクションを実際に手に取ることが出来る” Fashion Star”。ファッション好きは必見、興味が無い人は完全スルーであろう内容ではありますが、こうした制作サイドもスポンサー側にもオイシイ「Win-Win関係」の番組構成が、今後のTV業界でのトレンドとなっていくのでしょうか。リアリティ・シリーズ人気の停滞が囁かれる中、より多くの新商法あの手この手が生まれていきそうです。


TEXT BY アベマリコ

2012年03月15日 23:43

この記事へのトラックバックURL:
http://blog.eigafan.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/3069

 
東宝東和株式会社