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フランス=日本発『不完全なふたり』

『不完全なふたり』は、『M/OTHER』『H Story』が2作続けてカンヌ映画祭に出品され、『パリ、ジュテーム』でも唯一の日本人監督として、ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォーを演出した、諏訪敦彦監督の、4年ぶりとなる長編最新作。フランス公開時には、「沈黙によって豊かになっている、ショパンの夜想曲の映画版」とも称され、3万人以上を動員するヒットを記録しました。

■STORY
マリー(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)とニコラ(ブリュノ・トデスキーニ)は結婚15年目になる夫婦。友人の結婚式に出席するためにパリへやって来た彼らは、周りからは「理想のカップル」として見られていました。ですが、実は彼らは離婚することを決めていて…。パリ滞在の数日間にも、たびたび口論を繰り返すふたりに、新たな道は見つかるのでしょうか?

公式サイト

■ 完成された脚本を使わない即興的演出

本作はオール・パリロケ、全編フランス語ダイアローグによる、フランス=日本合作となりました。完成された脚本を使わずに、キャスト・スタッフとのディスカッションから映像を紡ぎあげる監督の手腕は、異国を舞台にした本作でも遺憾なく発揮されています。

異国での即興的演出、撮影となると、言葉の問題が心配されるかと思うのですが、それに対しても、諏訪監督は「言葉の問題がハンディキャップになるとは全く思わなかった」とのこと。
と言うのも、「(自身は)撮影という現実の中では触媒のようなものに過ぎず、それぞれの様々なリアクションを引き出す」のが諏訪監督の作り方だからなのだとか。

その言葉どおり、レストランの場面などを見ても、会話が必ずしもきちんと聞き取れない時もあり、言葉の意味そのものよりも、身体や表情、身振りや音を大切に撮られていることが伝わってきます。その結果、男と女の心の揺れ動きを表情豊かに描いた、味わい深い作品となりました。

■映画から観るフランス
●ロダン美術館
パリのホテルでの滞在中、ニコラとの口論で、つい言い過ぎてしまったマリー。その翌日、彼女が訪れるのがロダン美術館です。
あたかも溶け合おうとする女と男を描いた彫像に惹きつけられながら、今までの、そしてこれからの自分たちに想いを巡らすマリー。
この美術館の展示作品の中には、石がそのまま手を加えられずに残されているものもあります。一見、未完成のように思われますが、ロダンにとっては気持ちのこもった完成品なのでしょう。
後日、再びロダン美術館を訪れたマリーは、知り合いのパトリックに偶然出会い、語らいの時間を持ちます。パトリックが連れていた息子は、その間、楽しそうに美術館内を歩き回ったり、模写をしたりしています。そこには、生活の中に自然に溶け込む美術館の姿があります。

●カフェやレストランでの会話
カフェは、17世紀中頃にオデオンで誕生して以来、フランスの人たちの生活と深く結びついてきました。
上流階級の人々の社交場として、学生、画家たちの議論の場として発展していったカフェは、今ではクリエイターによってデザインされた新しいスタイルのものも多数登場しています。

友人の結婚式が終わった後のレストランでのパーティー、夜にニコラが訪れた街角のカフェ…。劇中にも、カフェでの語らいのシーンが印象深く登場します。

■DATA
6月30日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
2005年/フランス=日本/108分
配給:ビターズ・エンド

監督:諏訪敦彦
出演:ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ/ブリュノ・トデスキーニ ほか



2007年06月12日 19:01

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