TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 ファイル交換ソフトの配布は合法?(2)

 ファイル交換ソフトの登場によって、インターネット上で音楽や映画などのコンテンツを無料でダウンロードして使うことが可能になった。コンテンツが無料配布されてしまうことを懸念する大手映画会社や音楽会社は、P2Pを開発したグロックスターらを相手取って訴訟をおこしたが…。

 ファイル交換ソフトの配布は合法。著作権間接侵害にあたらないと判断したアメリカの第9控訴裁判所。今回はその判決を解説する。
 アメリカでは著作権間接侵害の責任を問うためには以下のような要件を満たさなければならない。

(1) 使用者が著作権を直接侵害していること;
(2) その侵害の事実を知っていること
(3) その侵害に重要な貢献をしていること。

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(1) 使用者が著作権者からの許諾なく著作物をダウンロードする場合、著作権を直接侵害していることについては、異論がなかった。許諾のないコンテンツの利用はフェアユースでない限り著作権侵害となりうるからだ。
 
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(2)  ファイル交換ソフト会社の間接侵害を問うためには、侵害の事実を知っていることを証明しなければならない。侵害の事実とはどの程度の心理状態を意味するのか? 第9控訴裁判所は、1984年のユニバーサル対ソニーの判決(※録画機能をもったビデオ機はコンテンツを合法に録画することが可能になった)を引用して、「合法的に録画する機能をもっているということだけで、利用者が非合法的に録画する場合にも使用するであろうと知っていたと判断することはできない。」という。

 合法的にコピーすることを目的として作られたソフトである以上、原告側は著作権侵害しているコンテンツの具体例を証明し、被告に侵害事実について合理的な知識があったことや利用者による侵害行為を知りながらブロックしなかったことを証明しなければならない。ナップスターの判決と異なる点は、ナップスターが管理しているサーバー中に侵害コンテンツが含まれていて、著作権者から侵害のクレームを受けていながらブロックしなかったことだ。本件で争われたファイル交換ソフトでは、利用者同士の直接やりとりでサーバーを仲介することはないので、被告側としては著作権侵害があったかどうかの認識はないし、利用者の侵害ダウンロードだけをブロックしようする管理機能もないのでは……。裁判所が要件とする「侵害の事実を知っていること」とは、「可能性があるかも知れない」のレベルよりも高い。具体的な侵害事実を知っていることが必要とされるようだ。
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(3) 侵害行為に貢献していること。ナップスター事件では、利用者がサーバーにアクセスすれば、交換可能なファイルのインデックスが提供されており、勝手にダウンロードすることができた。ナップスターはサーバーの内容を管理する立場にあった。セントラル・サーバーをもたない被告側のサービスでは、利用者同士がどんなファイル交換をしているのか管理することはできない。といった理由で、著作権侵害に手を貸していないと判断されたわけだ。
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 ファイル交換ソフトと圧縮技術の登場によって、いとも簡単に他人の著作物を無料でダウンロードすることができるようになった。海賊版なので著作権者に使用料は支払われない。ひとつの集金対策として、コンピューター本体に課金するとか、ネット使用料金の一部をプールして、著作権管理団体に使用料を支払うといった方策も可能かと考える。技術の進歩を止めることはできない。著作権侵害の横行を許すことは、人間の創作意欲を失わせることになりかねない。国が権利者に独占的な権利を与えることによって、科学と有益な芸術の振興を促進するという根幹を守るためにどうすべきか考えなければならない。


配給側からみたファイル交換ソフトについての意見とは…?
<映画業界の豆知識>第88回 海賊版

<映画業界の豆知識>第105回 海賊版2


■判決はここから。 > http://news.findlaw.com/hdocs/docs/mgm/mgmgrkstr81904opn.pdf


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