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英コメディアン presents 過激な毒舌MOVIE

笑いの本場、イギリス

 ここ数年、日本では関西を中心しとしたお笑い芸人さんがブームとか(もしかすると、もう下火?)。ドラマや映画界に進出する芸人さんも少なくないようだ。
 さて、イギリス・ロンドンといえば、ヨーロッパはもちろん、世界のコメディの本場。ロンドンには、笑いに厳しい英国人相手に格闘している若きコメディアンが集まっているのだ。
 そんな卵コメディアンの登竜門に当たるのが、日本の演芸場に当たるコメディクラブ。パブ内に設けられたその舞台では、お子様お断りのキツいジョークや、ちょっと頭を捻らないと笑えないマニアなお笑い世界が繰り広げられている。テレビで冠番組を持つような人気のコメディアンにも、コメディクラブでの下積み経験を持つものが多く、クラブの舞台で笑いを取ることはサクセスへの第一歩なのである。

そこまでやって大丈夫? ビターな笑い『ボラット』 

 これまでイギリス発のコメディ映画といえば、Mr.BEANやモンティパイソンが有名だったが、ただいま英国内で公開中の『ボラット BORAT』は英国コメディ映画の歴史を塗り替えそうな話題作である。  映画のプロデューサーと主役を務めるのは、人気のTVコメディショー「Da Ali Show」のサシャ・バロン・コーエン。映画の主役は、このショーに登場するカザフスタン出身の偽ジャーナリスト・ボラットで、なまりたっぷりの英語を話し、社交性を無視した態度でアメリカ各地を旅していく。

 このショーのおもしろいところは、無知なのか過激なのかわからない、とぼけたボラットのインタビューに油断して、”US and A(番組内ではいつもこのように説明される)”の著名人や一般人がついつい「本音」をもらしてしまうところにある。
 私が見ていた回のTVショーでは、アメリカの南部のバーで「ジューイッシュ(ユダヤ人)は金が大好き、金をひとりじめ♪」と歌って観客の喝采をあびたり、アメリカの結婚事情の取材と称して結婚相談所に行き、「好みの女性は顔がよくて、農業ができること。あとはカラダがいいこと!」「アメリカでは、女性に何をあげればHできますか?」と率直すぎる発言で、相談員を無言にさせたり。
 かなり、田舎もの丸出しで垢抜けないキャラクターのボラットだが、演じるサシャ・バロン・コーエンは、実はオックスフォード出身の超秀才で、最近ではハリウッドのアニメーション映画の声優を担当。やはり、切れる頭と才能がないと、ここまでシニックで切れ味の鋭いギャグは生み出せないのかも?

 笑うのがためらわれるような性的、差別的、毒々しいジョークも飛び交うボラットのショー。映画になると、そのあたりの毒気はどうなってしまうのか、気になるところだが、魅力であるギリギリの“あぶなっかしさ”は健在のよう。アメリカ国内ではすでに公開され、意外にも興行成績は良好で、各地で爆笑の渦を巻き起こしているとか。好き嫌いの分かれそうな笑いのせいか、日本での公開は未定のようだが、はまる人にははまること間違いなし!イギリス人の笑いへの寛容さ(皮肉っぽさ)が感じられる一作である。

TEXT BY シラヤナギリカ

2006年11月14日 20:32

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