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これぞオスカー前哨戦?SAGアワード

去る1月28日、ハリウッドにあるShrine Auditoriumにおいて、第13回SAG(Screen Actors Guild=(全米)映画俳優組合)賞のセレモニーが開催されました。情報の早い読者の方々はすでに結果をご存知かもしれませんが、今年はノミネートが殆どオスカーとかぶるという、近年稀に見る「アカデミー前哨戦」となりました。ちょっと物足りなかった感があるのは否めませんが、それはともかく、「役者による役者の為の」SAGアワードを詳しくご紹介していきます。

今年で13回目となるSAG賞は、アメリカの映画俳優組合によって運営されています。アカデミー賞では、現アカデミー会員に合わせ、1500人ほどの俳優メンバー達が演技部門に投票していきますが、SAG賞においては、11万人とも言われるSAGメンバーの中から2100名をランダムに選出、彼らだけで投票を行います。つまり、SAG賞では俳優達による投票のみで各受賞結果が決まるのです。こういった投票制度が、SAG賞に「ピュア」で確かな結果をもたらし、また「役者による役者の為の授賞式」と呼ばれる所以となっています。

さて、今年のSAG賞ですが、ノミネート者達は限りなくオスカー候補者と同じで、受賞者も数週間前に行われたゴールデン・グローブ賞の結果にとことん重なる結果となりました。本年度のアカデミー候補となっている20人の俳優のうち、19名がSAG賞でもノミネート。SAG賞での3つのカテゴリー(主演男優・女優賞、助演女優賞)では、アカデミー賞のものと完全に一致しました。過去12年間でのSAG賞の結果をさかのぼると、8回の主演男優賞と10回の主演女優賞がオスカーでも合わせて獲得。助演男優賞は50%、助演女優賞は60%の確率でアカデミー賞を受賞しているころになります。SAG賞が「アカデミー前哨戦」と呼ばれる訳がわかります。
今回のSAG賞で最優秀主演男優賞を獲得したフォレスト・ウィテカー(”The Last King of Scotland” / 原題)や、またもや「クイーン」(邦題)とTV部門の”Elizabeth I”(HBO)で最優秀主演女優賞をW受賞のヘレン・ミレン、最優秀助演男優賞に輝いたエディー・マーフィーや同女優賞のジェニファー・ハドソン(ともに「ドリームガールズ」:邦題)辺りは、ほぼ満場一致の結果。残念ながら「バベル」(邦題)の菊池凛子さんはゴールデン・グローブに引き続き、受賞を逃すこととなってしまいました。

トロフィーを受け取りまくっているハドソンですが、この人のサクセスストーリーは波乱万丈、「国民的人気番組(American Idol: Fox) 落選→映画に初出演→各賞ノミネート→各賞受賞」まさにアメリカン・ドリームを地でいくストーリーは、アメリカ国内でも話題沸騰。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いです。SAG賞授賞式での、プラム色のドレスの身を包んだ彼女の佇まいは、もはや貫禄といったところ。でも、日本人としては菊池さんのアカデミー賞での健闘を祈りたいところです。

今回のSAG賞で目新しかったのは、各賞での最優秀作品賞に当たる「最優秀配役賞=アンサンブル」を持ち帰ったのが”Little Miss Sunshine”(邦題:リトル・ミス・サンシャイン)のキャスト達だったこと。家族がモチーフとなっている本作品。SAG賞とアカデミー賞の助演女優賞枠にノミネートされているアビゲイル・ブレスリンちゃんの愛くるしい表情と、同じく2つのセレモニーにおいて助演男優賞の候補となっているアラン・アーキンの「毒舌おじいちゃん」はまさに必見です。

TV部門では、HBOの”Elizabeth I”から最優秀主演男優・女優賞 / TV版映画・ミニシリーズ部門が選出されました。それぞれ、ジェレミー・アイアンズと上記のヘレン・ミレンが獲得。ふたり揃っての受賞という快挙となりました。最優秀主演男優・女優賞 / ドラマ部門には、”House” (Fox)のヒュー・ラウリーと”Grey’s Anatomy” (ABC)のチャンドラ・ウィルソンが受賞。ここでも「Grey’s旋風」の兆しです。コメディ部門には”30 Rock” (NBC) のアレック・ボールドウィンと”Ugly Betty” (ABC) のアメリカ・フェレラがトロフィーを持ち帰っています。ゴールデン・グローブ賞に引き続き、大好きな「Betty」の受賞に筆者は再度大興奮でした。そして、ドラマ/コメディ部門の各アンサンブルは、やっぱり大人気の”Grey’s Anatomy”と、シニカルなブラックコメディが満載で、年齢を問わずにチャンネルが合わせられる”The Office” (NBC)に輝きました。この辺りは、全米が納得!の受賞結果となった模様です。

今年のSAG賞の結果はいかがでしたでしょうか?やっぱり…が多かったかもしれませんが、この結果が約1ヵ月後に迫るアカデミー賞にどう反映されるのか、とても楽しみです。更に詳しいSAG賞の各受賞者・候補者達は、下記の公式ホームページでご覧下さい。参加した俳優達の様々な表情も見どころです。ちなみに近年、授賞式ラッシュのこの時期に、各会員や関係者に作品のDVDを送るという戦略が主流となっているとか。昨年、アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した「クラッシュ」(邦題)は、SAG会員11万人余りにDVDを送付。その効果もあってか、栄えあるオスカー受賞の運びとなりました。本年度は、「ディパーテッド」(邦題)、”Venus”(原題)、「リトル・ミス・サンシャイン」(邦題)の3作品が、すでにDVDを発送済みとのこと。こうした戦法がどう作用するのか、こちらも注目となっています。

SAG公式ホームページ
候補者全リスト
受賞者全リスト

TEXT BY アベマリコ

2007年02月06日 22:01

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