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大和魂 in Hollywood!DP: 今井俊之氏

米アカデミー賞の技術/作品/俳優部門などにおいて、たびたび日本人の名前が聞こえてくるようになった近年。今日の我らが日本勢による活躍は、狭き印象のあったハリウッドの間口をグッと広げています。そこで本コラムでは「大和魂 in Hollywood」と題して、海を渡った日本人クリエイターをご紹介。パイオニアの知られざる素顔とその活動内容に、スポットを当ててみたいと思います。


 “Pig People (2009)” 撮影風景
 Photo by Bruce Heinsius

今回お話を伺ったのは、ハリウッドを拠点に「DP = Director of Photography / Cinematographer」として活躍されている今井俊之 さん。日本では主に「撮影監督」と呼ばれるこのポジション、監督や俳優陣などに比べるとフィーチャーされづらい役どころかもしれませんが、ハッキリと分業されたアメリカの映画制作においては、特に花形と見なされるポジションなのです。

カメラに写るもの全ての配置や構図 (ミザンセーヌ)、光の明暗やバランスを操りながら、観客が実際に目にする映像を作り上げる彼ら。監督が描くイメージを忠実に映像化する役割を担うため、技術のみならず柔軟性も要求されます。






1992年にアメリカに渡った今井さんは、ウエスト・ヴァージニア州で語学を学んだ後に、オハイオ州の大学でシアター・アートを専攻。94年にサンフランシスコの名門美大アカデミー・オブ・アートへ移り、本格的に映画制作を学びました。

従兄弟の影響から漠然と渡米した映画好きの野球少年は、製作/監督/編集/脚本/俳優といった様々なポジションに触れる中、DPという役職と出会うことに。当時はまだ知名度の低かったステディカム・オペレーターの資格も習得して、97年にはM. C. ハマーのカムバック作”He Brought Me Out”のPV撮影に携わるなど、数々のインターンをこなします。卒業後は、主にインディーズ映画の製作に参加。そしてサンフランシスコ生活も5年目に入った1999年、待望だったロサンゼルスへと移り住みました。

その後、約3年間は映像製作会社に勤務。ドラマやコマーシャルの撮影業務にとどまらず、語学力を生かしてコーディネーター職に着くなど着実に経験を積んでいきます。そして2002年、三木聡監督の「ファイ (PHI)」でいよいよDPとして長編デビュー。フリーランスとなったその後は、CMコンペで2作品が観客賞に (Toyota CFilm Awards / 2005)、撮影を任されたPV “Flowers for My Baby”がフロリダのアニメイベントMetrocon 2006にて最優秀撮影賞を獲得するなど、メキメキと頭角を現していきます。

ジャンルを問わない日米両方のプロジェクトから声がかかるようになった頃には、その映像力が買われてドキュメンタリー撮影にも着手。National Geographicにて日本の「わんぱく相撲 (2007)」を紹介したり、WOWOWの「CG進化論- 歴史でたどるCG45年史」や「クエスト~探求者たち~」のエピソードでもカメラを回しました。


 “Little Mail Man” 主演トニー・コックスを囲んで

数々の短・長編インディーズ映画/CM/PV撮影に携わりながら、近年は”Arrested Development (FOX / 原題)”、「名探偵モンク (USA Network / 邦題)」、”The Office (NBC)”といった人気ドラマの助監督を務めたロス・ノーヴィ氏とタッグを組み、大手Sony Pictures Televisionや「アメリカン・アイドル (FOX)」等のヒット番組を手掛ける北米FremantleMedia配給のウェブドラマを制作。すでに”Treasure Trails (仮)”、”Secret Girlfriend”などは、米TV局にて放送が予定されているそうです。

また、サウスHip-Hop界の重鎮であるマスターPことパーシー・ミラーが監督、トニー・コックスを主演に迎えた長編映画”The Little Mail Man (2008)”にもDPで参加しており、公開が待たれているところ。こうしたアメリカ映像業界の第一線で、続々とクレジットを重ねています。

ハリウッドに住む日本人として、インターナショナルな活躍をみせる今井さん。競争の激しい世界をいかに勝ち抜くかは、技術を併せ持ちながら意思表示が出来る正直な人間性が求められると語られました。撮影後の微調整を最小限に抑えるため、監督とのコミュニケーションと丁寧なプランニングは必須だとか。そういったプロセスを重視することが、最善の結果に繋がるようです。

しっかりと作品のイメージを掴み、判断の連続といったプレッシャーにも立ち向かう「DP」。エゴを通すより、作品への尊敬とチームワークを大切にしたいと語る笑顔に野球少年の面影を、そして「自身のシグニチャーを確立するのが目標」と話す横顔にアーティスト性を垣間見た気がします。

日本にルーツを持ち、アメリカから発信する今井俊之さんは、現在もいくつかのプロジェクトを進行中とのこと。今後の活躍から、目が離せなくなりそうです。



TEXT BY アベマリコ


2009年03月13日 10:29

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