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2012年03月29日
この秋のトレンドを予測!2012年秋のアメリカンTV
世界的に見ても、各世代におけるTVの視聴時間がとりわけ長いとされているアメリカにて、多くの人々が心躍らせる「秋の改変期」。この人気シーズンを約6ヶ月先に控えた今月、ネットワーク各局はイチオシのプレミア・シリーズを発表し始めたところです。気になるタイトルをまじえながら、本年度のトレンドとなるキーワードをご紹介していきましょう。

昨年度のベストヒット・シリーズ”New Girl”の
ゾーイ・デシャネルとジェイク・ジョンソンのコンビ。
Photo by Genevieve719 on Flickr
アメリカ国内で火が付くや、すぐさま世界各国へと「輸出」されていくアメリカンTVシリーズ。もちろん日本も例外ではなく、「海ドラ」こと海外ドラマと呼ばれて人気の高いTVシリーズのほとんどは、米国製の独壇場となっています。古くは「スタートレック (邦題/NBC)」「ナイトライダー (NBC)」、90年代の「Xファイル (FOX)」「フレンズ(NBC)」「ビバリーヒルズ高校白書/青春白書 (FOX)」などといった日本でもお馴染みのドラマシリーズ、そして近年の「24 (FOX)」「LOST (ABC)」「CSI: 科学捜査班 (CBS)」フランチャイズなど、作品名を挙げ出したらキリがない程。さらに、TVネットワーク各局が自信作をぶつけてくる秋シーズンには、上記タイトルのような大ヒット作が最も生まれやすくなっており、本年度の新シリーズにも俄然注目が集まっています。
2012年秋のキーワード、まずひとつ目は「ウーマン・コメディ」。昨シーズンに誕生したヒット作、ゾーイ・デシャネル主演の”New Girl (FOX/原題)”や「セックス・アンド・ザ・シティ (HBO)」の製作陣が揃った”2 Broke Girls (CBS)”に見られる女性中心のコメディが、引き続き主要トレンドとなっています。話題に上ること必至の作品は、女優ロザンヌ・バー主演の”Downwardly Mobile (NBC)”。こちらには、往年のTVシリーズ「ロザンヌ (ABC)」で共演していたジョン・グッドマンの出演も実現しています。その他、前出の「セックス・アンド・ザ・シティ (HBO)」の「若かりし頃」編として展開されていく”The Carrie Diary (CW)”、そしてメアリー・マコーマック主演の”The Unprofessional (ABC)”なども、かなり内容が気になるところ。いずれも女性脚本家が手掛けたウーマン・コメディであり、引き続きTVシリーズをリードしてくれそうな予感です。
ふたつ目のキーワードには、これまた昨年度にプレミアが放送されてヒットを飛ばした”Grimm (NBC)”や”Once Upon a Time (ABC)”に見られる「おとぎ話系」。NYの街並に、普通の人々には見えないマジカル・ワールドが誕生する”Gotham (ABC)”は、警官シリーズとおとぎ話系のミクスチャーといったユニークな設定が注目を集めそうです。また、「ゴシップガール」などを中心としたティーン・ドラマを数多く世に出したCW局が新たに投入するのが、80年代のCBS作品の現代版リメイク”Beauty and the Beast”。気になる美女には、カナダ出身の人気上昇中女優であるクリスティン・クルック、野獣ポジションにはイケメン俳優ジェイ・ライアンが決定したと伝えられています。
そして最後のキーワードには、本年度の賞レースを賑わせた「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」の題材となっていた「お手伝いさん」。「デスパレートな妻たち (ABC)」の制作者マーク・チェリーによる、その名も”Devious Maids (ABC)”では、ビバリーヒルズで働くメイド4名をフィーチャーするのだとか。また、NBC局の”Notorious”も、家政婦さんを仮の姿とした女性が殺人事件の「潜入操作」を行うという、これまた奇をてらった筋書きで物語が展開していく模様です。さらに同局の新シリーズでは、人間がロボットに使用人として仕えるという内容の”Beautiful People”を投入。ちなみに、本タイトルの制作および脚本は、「クーガータウン (ABC)」などで俳優としても活動を行っているマイケル・マクドナルドが務めています。
秋のプレミア・シーズンなんてまだまだ先!と思いつつ、気がつけばシーズンも真っ只中…なんていうケースは良くあること。これから秋の改変期へ向けて、新情報や気になるニュースはどんどんアップデートして参りますので、海ドラファンの皆さんはぜひともお楽しみに。
TEXT BY アベマリコ
2012年03月22日
かつての人気リアリティTVシリーズが惨敗!世代交代の兆し?
今週19日スタート、第14シーズンに突入した社交ダンスバトル・シリーズ「Dancing with the Stars」。ここに来て、自己ワーストとなるプレミア視聴率を更新してしまい、ライバル局のオーディション番組に水をあけられる恰好となっています。

ブレイク・シェルトン、シーロー・グリーン、
クリスティーナ・アギレラ、アダム・レヴィーンと、
コーチ陣も豪華な「The Voice」第2シーズン
のポスター。
ABC局の看板リアリティ番組のひとつ、各界著名人が社交ダンスの技量を競い合う長寿シリーズ”Dancing with the Stars (原題/以下DWTS)”は、かつてFOX局の元祖国民的リアリティ番組”American Idol”と視聴率トップ争いを繰り広げた程の大ヒット番組。しかし、第14シーズンを数えた今期、これまでのプレミア放送(=初回放送)におけるワーストナンバーを記録、昨年春の同数字と比べて約34%ダウンのおよそ1850万人の視聴者がチャンネルを合わせるにとどまりました。
その一方、この夜の視聴率王者となったNBC局は、同じ時間帯に新たなシンガー発掘オーディション番組”The Voice”を投入。ちなみに、現在セカンド・シーズンを迎えている当番組は、今期のプレミア放送にて驚異の3760万人以上という視聴数を達成しており、第1シーズンのそれより2500万人以上もアップさせています。
旧シリーズと同様に、エンタメ界にスポーツ界、そして奥様方の支持率がグッとあがる「イケメン・マッチョ枠」=ソープオペラ&テレノベラ俳優を盛り込んだ第14シーズンのDWTSキャスト。何ともはや、これまでにも出演者のグレードダウンが囁かれてはいましたが、今期はそれ以上の地味さが否めません。昨年度に白羽の矢が立ったとされる元大統領ビル・クリントンが出演していれば、もう少し華を添えられたのかも?しかし、昨シーズンの覇者J.R. マルティネスのように、ほぼ無名のソープオペラ俳優/退役軍人がスターダムを掴み、多くの視聴者ならびにファンを獲得するケースもDWTSにおける定番セオリー。今後10週に渡り、どの出演者がミラーボール型トロフィーを、またそれよりも更にオイシイ「各媒体への露出キップ」を手にすることになるのでしょうか?
ギャヴィン・デグロウ(シンガーソングライター)
ドナルド・ドライヴァー(NFLグリーン・ベイ・パッカーズ選手)
ロション・フィーガン(ディズニーチャンネル俳優)
メリッサ・ギルバート(女優)
キャサリン・ジェンキンス(メゾソプラノ歌手)
グラディス・ナイト(ソウル・シンガー)
ウィリアム・レヴィ(テレノベラ俳優)
マリア・メノウノス(TVパーソナリティ)
マルチナ・ナブラチロワ(元テニス選手)
シェリー・シェパード(女優/TVパーソナリティ)
ジャック・ワグナー(ソープオペラ俳優)
ジャリール・ホワイト(俳優)
飛ぶ鳥を落とす勢いの”The Voice”、そして先週レポートしたデザイナー発掘ショー”Fashion Star”など、新しく投入したリアリティ・シリーズが絶好調なNBC局。特に”Fashion Star”は第2週目にして約13%も視聴率を上げ、更には番組直後にオンラインおよび店舗にて販売される勝ち抜きデザインも、参加スポンサーであるサックス・フィフス・アベニュー、メイシーズ、エイチ・アンド・エムの各ストアにてすでに完売。下は19.95ドル、上は350ドルのプライスタグが付いた先週のラインナップのうち、中には販売開始12時間以内に売り切れた商品もあったそうで、期待以上の好セールスを誇っていると報じられています。
しかし、今日のリアリティ・シリーズ全体像を見てみると、上記のような新シリーズの大躍進は例外中の例外。CBS局のサバイバル・ゲーム・ショーの草分け的存在である”Survivor”フランチャイズや、同局にて11年目を迎えた一般勝ち抜きレース・シリーズ”The Amazing Race”といった長寿番組が横這いの数字をたどる傍ら、ABC局の花嫁探しシリーズ”The Bachelor”の今期フィナーレでは史上最低視聴率を更新、AIこと”American Idol”は過去数年比25%以上の視聴率ダウンとかつての勢いを失い、さらにポスト・AIとして昨シーズンにスタートを切った”X Factor”においては、本家の約半分の視聴数でファースト・シーズンを終了するなど、芳しくない結果の連続となっています。
TV局サイドとしては、コストがかかる上に当たり外れの大きい新ドラマ・シリーズを発表するよりも、割安な製作費にして好視聴率といった費用対効果の高いリアリティ番組でひと山当てたいところ。老舗シリーズの巻き返しを視野に入れることはもちろん、数字的にひさびさの大ヒットを記録した”The Voice”、そしてTV画面を飛び出してのスポンサーとのコラボレーションが功を奏した”Fashion Star”を超えるような、斬新なアイディアが求められていくことでしょう。
TEXT BY アベマリコ
2012年03月15日
ファッション系リアリティTVに新風?NBC局『Fashion Star』
今月13日、いよいよ全貌が明らかとなった新TVシリーズ”Fashion Star”。その豪華キャストにも前評判が集まっていた当番組は、これまでのファッション系リアリティ・ショーとは一線を画す番組構成が話題となっています。

若年層の視聴者向けか、番組内ではTop40と
呼ばれるポップチャート曲に乗せてショーを開催。
Photo by Art Comments on Flickr
昨年度、新感覚シンガー・オーディション番組”The Voice (原題)”を発表するや、第2シーズンにして初回放送3800万人にも迫る最高視聴率を記録したNBC局。元祖国民的リアリティ番組「アメリカン・アイドル (FOX/邦題)」の最新シーズン11による初回プレミア視聴数を軽く上回る快挙を遂げた同局が、またもやリアリティ・シリーズ業界に新風を吹き込むこととなりました。3月13日にパイロット(=第1エピソード)が放映された”Fashion Star (以下FS)”は、ファッション系リアリティ・ショーの先駆け「プロジェクト・ランウェイ (Lifetime)」に代表される、デザイナー発掘TVシリーズ。いかにもベタなタイトルとは裏腹に、ファッショニスタの名に相応しい講師陣や、大手デパートメント・ストアや人気ショップといったスポンサー、そして視聴者をも「参加」させてしまう目新しい手法を取り入れることで、飽和状態であった同系のリアリティ番組に一石を投じています。
クリスティーナ・アギレラ、シーロー・グリーン、アダム・レヴィーン (マルーン5)、ブレイク・シェルトンら歌唱コーチを招いた”The Voice”と同様、まずは番組の華となるMentor(=講師)の召集に力を入れたFS。すっかり昨今のトレンドとなっている「セレブ・ブランド」の第一人者として、初めて年商10億ドル級ビジネスへと成長させたジェシカ・シンプソン、気が付けば「問題児セレブ」からオシャレママに変貌を遂げ、今では2つのブランドを抱えているニコール・リッチー、カルバン・クラインやラルフ・ローレンにてデザイナーを務めた後、自身のブランドを立ち上げたジョン・ヴァルヴェイトスらを迎えています。そして番組進行を務めるのは、当番組の製作総指揮のひとりとしても名を連ねる元スーパーモデルのエル・マクファーソン。彼女も20年以上に渡ってランジェリー・ラインをプロデュースしており、この度のパイロット版においては、同ラインのファッション・ショーがオープニングを飾りました。
ハイディ・クルムが番組の顔である「プロジェクト・ランウェイ」や、世界的なファッション・アイコンとして人気の高いアレクサ・チャンを司会に抜擢した”24 Hour Catwalk (Lifetime)”など、これまで放送されてきた数々のデザイナー発掘シリーズでは、勝ち抜いた勝者のみがコレクションを発表できるのが通例でした。つまり、ファイナルまで応援し続けたデザイナーが敗退してしまえば、彼らのコレクションを入手することは大変難しくなっていました。しかし今回のFSでは、タッグを組んだアパレル・スポンサーによる「入札方式」を取ることで、週ごとに勝ち抜きデザインを選出。さらに、オンエア直後の各店オンライン・ストアおよび翌日の店頭にて、そのデザインの洋服を実際に購入することが出来るのです。日本においては、ドラマ内で使用されたドレスやバッグなどを番組終了後に購入可能にするシステムがすでに取り入れられていますが、ここアメリカではかなり画期的。しかもスポンサーには、アメリカを代表する高級百貨店サックス・フィフス・アベニュー、全米に800店舗以上を構えるデパートメント・ストアのメイシーズ、そしてリーズナブルでありながらトレンドを追うエイチ・アンド・エムと、幅広いファッション層をカバーした3社が名乗りを上げています。
ここで、FSの流れを詳しくご説明しましょう。一般公募で選ばれた14名の「未来のデザイナー」達は、毎週出されるお題に沿ったデザインで、ミニ・ファッションショーを開催。それを見た各ストアのバイヤー3名は、気に入ったデザインがあれば入札します。つまり、購入額を提示するか「No Offer」として見送るかを決めます。ここで入札があったデザイナーは、自動的に翌週へと進出。その一方、どのバイヤーからもオファーを受けられなかったデザイナーは「敗退候補」となり、講師とバイヤー計6名によってワースト3が選び出されたのち、講師陣にもバイヤー側チームからもチャンスをもらえなかったデザイナーが、その週の敗退者となります。なお、パイロットでのお題は、彼らの自信作を発表する「シグネチャー・ルック」。14人中8人が入札ゼロ、そこから絞られた3名から更に1名が、第一敗退者として番組を去りました。なお、入札を受けた6名によるデザインは、現在オンラインならびに各ストアにて販売中。このようなフォーマットに従い、最終的に勝ち残ったひとりのデザイナーには、3社による合計発注額600万ドル分のコレクションが買い取られることになります。
参加者達がデザインを行ない、ランウェイ・モデルが身につけたコレクションを実際に手に取ることが出来る” Fashion Star”。ファッション好きは必見、興味が無い人は完全スルーであろう内容ではありますが、こうした制作サイドもスポンサー側にもオイシイ「Win-Win関係」の番組構成が、今後のTV業界でのトレンドとなっていくのでしょうか。リアリティ・シリーズ人気の停滞が囁かれる中、より多くの新商法あの手この手が生まれていきそうです。
TEXT BY アベマリコ
2012年03月08日
次回の出演作&共演者は?オスカー受賞後のお仕事
さまざまな新記録の樹立やベテラン勢の大躍進、はたまたアンジェリーナ・ジョリーの美脚まで、本年度のアカデミー賞はさまざまな話題を振りまきながら幕を降ろしました。長かった賞レースも終演、ハリウッドの視線はすでに次のプロジェクトへ。そこで、パーティが明けた今週は「オスカー俳優」の仲間入りを果たした顔ぶれのこれからに注目してみましょう。

イケメンでユーモア溢れるジャン・デュジャルダンに、
すっかりハマる女性が続出中。
Photo by Nivrae on Flickr
映画芸術アカデミー (AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Sciences )主催、現在大ヒット公開中「ペントハウス」の凄腕プロデューサーであるブライアン・グレイザーらが製作を務めたThe 84th Academy Awards。前年比4%アップの高視聴率を獲得し、大成功を収めたオスカー・セレモニーは、受賞インタビューやゲストの豪華ファッションなど、月がかわった今日でもまだまだ話題が尽きません。そんな中、やっぱり気になるのが「オスカー俳優」の肩書きを加えることとなった俳優陣の今後。あちこちのメディアに引っ張りだこの彼らは、ビッグ&スモール・スクリーンや演劇界にも活躍の場を広げる予定です。
本年度オスカーにて主要5部門を制した「アーティスト」。劇中、サイレント・フィルムスター役で観客を魅了したジャン・デュジャルダン。フランス人男優として初のオスカー像を手にした「フランスのジョージ・クルーニー」は、早速この4月より2013年公開予定のロマンティック・スリラー”Mobius (原題)”の撮影に入るそうです。そして今年中には、同じくフランス映画”The Player (米題)”で、彼のコメディ・センスはもとより「声」も堪能できることになりそう。なお、本作のアメリカ国内での配給は、すでに「アーティスト」をヒット作へと育て上げたザ・ワインスタイン・カンパニーに決定しています。
続いて主演女優部門にて、29年振り3つ目のオスカーを獲得したメリル・ストリープ(「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」)は、この夏公開予定のコメディ作品”Great Hope Springs”に主演。トミー・リー・ジョーンズやスティーヴ・カレルらと共演するコメディ・ドラマでは、どうにか夫の気を引こうと奮闘する主婦を演じるそうです。また秋口には、2013年度公開”August: Osage Country”の撮影が開始され、ジュリア・ロバーツの母親役を務める予定だとか。オスカー獲得女優同士の競演に、話題沸騰となること必至です。
助演男優部門で82歳にして最年長オスカー受賞者となったクリストファー・プラマー(「人生はビギナーズ」)は、まだまだその歩みを緩める気配はなし。ケーブル局HBO制作のTVムービー、かのモハメド・アリのバイオグラフィ”Muhammad Ali’s Greatest Fight (2012)”において、最高裁判官に扮すると報じられています。さらにこの夏は、故郷カナダはオンタリオ州トロントへと舞い戻り、恒例のストラトフォード・シェイクスピア・フェスティバルに参加、ご自身がペンをとった一人芝居”A Ward or Two”を上演するとのこと。チャーミングな人柄でファンを増やし続けるプラマーの舞台となれば、チケット即完売は間違いありません。
その一方、同女優賞獲得によって一躍スターダムを手に入れた「ヘルプ~ 心がつなぐストーリー~」のオクタヴィア・スペンサーは、向こう2年ですでに5本以上ものオファーが舞い込む多忙さ。近日中には、2013年公開予定のディアブロ・コーディ作品(タイトル未定)がクランクイン、ラスベガスのカード・ディーラーをコミカルに演じるというから楽しみです。「JUNO/ジュノ」(2007)や「ヤング≒アダルト」(2011)の脚本家であるコーディの初監督作品は、先日ケイティ・ペリーとの離婚申請が話題になったラッセル・ブランドらが出演するコメディ・ドラマ。その他、インディー作品や短編などへの参加を続け、同2013年公開予定の”Snow Piercer”においては、クリス・エヴァンスやティルダ・スウィントンら豪華キャストと肩を並べることになるようです。
2011年公開映画の顔として、観客に笑顔と感動を届けてくれたオスカー俳優4名。今後ますますの活躍に期待しましょう。気付けば、すでに4半期が過ぎた本年度の映画ラインナップ。これから夏にかけて超大作&話題作が続々と公開されますので、追って注目タイトルをご紹介していきます。
TEXT BY アベマリコ
2012年03月01日
ハリウッド最大のパーティ!第84回アカデミー賞
2月26日、ここハリウッドにて開催された「映画の祭典」第84回アカデミー賞。世界中のシネフィルが待ち焦がれたこの日、レッドカーペットは華やかなセレブリティ達で埋め尽くされました。ニューカマーとベテラン勢が入り混じった本年度のオスカーは、見応え満点!トロフィーの行方にちょっとしたトリビアを交えながら、エピソード満載で特集していきます。

コダック・シアター改め、所在地を指す
「ハリウッド・ハイランド・センター」にて
開催された第84回アカデミー賞。
そしてステージに現れるや開口一番、会場となった「元コダック」シアターに突っ込み。コダック社による米連邦破産申告が受理されたことを受けて、「破産法シアター」「あなたの名前が付くかもシアター」などと称し、ゲストの笑いを誘っています。更には、ジョークを繰り出しながらの「必殺Deadpan(=無表情)」も健在で、全体的に落ち着いた司会進行はさすがベテランの貫禄といったところ。
また、現在同シアターにて「Iris」を公演中のシルク・ドゥ・ソレイユによるパフォーマンスや、追悼モンタージュをバックに名曲”What A Wonderful World”をしっとりと歌い上げたエスペランサ・スポルディングなど、観る者を圧倒するステージも充実。その甲斐あってか、ABCで3時間の予定を20分近くも延長して全国放映されたセレモニーは、昨年比4%アップの3930万人もの視聴数を記録しています。
本年度アカデミー賞の主役となったのは、主要部門5冠を制した「アーティスト」。全編LAにて撮影された本作は、フランス映画界初となる作品賞を始めとして、主演男優賞、監督賞、衣装デザイン賞、作曲賞に輝きました。なお、主演のジャン・デュジャルダンは、フランス人男優としてこれまた初のオスカー像を獲得。また、白黒&サイレント作品が作品賞を獲るのは1927年度以来初めて、更にアカデミー賞と仏セザール賞を同時受賞した初作品と、初めて尽くしが続いています。
その一方、最多11部門のノミネートを数えていた「ヒューゴの不思議な発明」は、撮影賞や視覚効果賞など含む技術部門において、同じく5冠を達成。また、作品賞候補にも挙げられていた「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」と「ファミリー・ツリー」は、それぞれひとつずつトロフィーを持ち帰っています。
そして大本命と見られていた男女助演俳優部門は、ともに満場一致のスタンディング・オベーションを受けたオクタヴィア・スペンサー(「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」)とクリストファー・プラマー(「人生はビギナーズ」)のもとへ。御年82歳、オスカー像とほんの2歳違いであるプラマーは、初の受賞にして最年長オスカー獲得者として名が刻まれることになりました。
そして、今回のアカデミー賞において唯一とも言えるサプライズを演出してくれたのが「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」で主役を張ったメリル・ストリープ。多くがヴィオラ・デイヴィスの勝利を確信していた中、まさに17回目のノミネート(過去最多)にして通算3度目(「クレイマー、クレイマー」(1979/助演女優賞)「ソフィーの選択」(1982/主演女優賞))、29年振りとなるオスカー像を手にしています。さすがの大女優にとっても期待値は低かった様子で、スピーチでは「アメリカ国民大半の『何で?また彼女?』って声が聞こえた気がしたけど、何でもいいわ!」とジョーク。そして真っ先に旦那様への感謝を伝えると、これまで培ってきた映画業界に生きる同胞達とのフレンドシップを讃えました。現時点での最多アカデミー受賞女優は、4つのオスカー像を獲得したキャサリーン・ヘプバーン。現代に生きる女優の最高峰とうたわれるストリープは、この記録に追いつけ追い越せとなるのでしょうか。
第84回アカデミー賞: 全受賞リスト
作品賞: 「アーティスト」
監督賞: 「アーティスト」
主演男優賞: ジャン・デュジャルダン「アーティスト」
主演女優賞: メリル・ストリープ「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
助演男優賞: クリストファー・プラマー「人生はビギナーズ」
助演女優賞: オクタヴィア・スペンサー「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」
脚本賞: 「ミッドナイト・イン・パリ」
脚色賞: 「ファミリー・ツリー」
衣装デザイン賞: 「アーティスト」
美術賞: 「ヒューゴの不思議な発明」
撮影賞: 「ヒューゴの不思議な発明」
編集賞: 「ドラゴン・タトゥーの女」
メイクアップ賞: 「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
作曲賞: 「アーティスト」
歌曲賞: “Man or Muppet” 「ザ・マペッツ」
音響編集賞: 「ヒューゴの不思議な発明」
録音賞: 「ヒューゴの不思議な発明」
視覚効果賞: 「ヒューゴの不思議な発明」
長編アニメーション賞: 「ランゴ」
短編アニメーション賞: “The Fantastic Flying Books of Morris Lessmore (原題)”
外国語作品賞: 「別離」イラン作品
長編ドキュメンタリー賞: “Undefeated”
長編ドキュメンタリー賞: “Saving Face”
短編映画賞: “The Shore”
ゲスト/プレゼンター(登壇順)
モーガン・フリーマン、トム・ハンクス、キャメロン・ディアス、ジェニファー・ロペス、サンドラ・ブロック、クリスチャン・ベール、ティナ・フェイ、ブラッドリー・クーパー、グウィネス・パルトロウ、ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・ロック、ベン・スティラー、エマ・ストーン、メリッサ・レオ、ペネロペ・クルス、オーウェン・ウィルソン、ウィル・フェレル、ザック・ガリフィアナキス、アンジェリーナ・ジョリー、ミラ・ジョヴォヴィッチ、クリステン・ウィグ、マーヤ・ルドルフ、メリッサ・マッカーシー、ローズ・バーン、エミリー・ケンパー、ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ、マイケル・ダグラス、メリル・ストリープ、ナタリー・ポートマン、コリン・ファース、トム・クルーズ
年に一度、映画ファンの熱い視線がハリウッドに注がれるこの日。例年に違わず良作に恵まれた本年度は、5つのトロフィーが遥か海を渡り、フランスの地へ届けられる結果となっています。ビリー・ワイルダーやジョルジュ・メリエスといった映画史のパイオニア達にインスピレーションを受けた作品が、それぞれモノクロ・サイレントと3Dで一騎打ちを展開。新旧それぞれのかたちで、映画の面白さを再確認させてくれました。第85回アカデミー賞獲得に向けて、すでに動き出しているハリウッド。さらなる感動作に巡り合えることに期待しましょう。
TEXT BY アベマリコ