『かけひきは、恋のはじまり』より ~企画が実現するまで~
プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回は、スリリングな“恋のかけひき”を描く、
大人のラブ・ストーリー『かけひきは、恋のはじまり』から。
■企画が実現するまで
アメリカン・フットボールが現在のような未曾有の巨大産業になるずっと昔。純粋にゲームを愛するという理由だけでプレイしていた男たちがいた。荒くれ者で、口は悪く、一度言い出したらテコでも動かない石頭な連中。彼らは試合中にかぶる皮製のヘッドギアから「レザーヘッド」と呼ばれていた。
80年代の後半、アメリカン・フットボール・リーグの起源を調べていたスポーツ・イラストレイテッド誌の記者ダンカン・ブラントリーは、プロ・フットボールの創成期がそのまま映画になると考えた。というのも、1920年に始まったとされるプロ・フットボールの世界は「事実は小説より奇なり」を地で行くサプライズの連続だったからだ。中でも印象的だったのが、ジョン・マクナリーという当時のスター選手。大学生だったマクナリーは、創設されたばかりのナショナル・フットボール・リーグ(NFL) のダルース・エスキモーズに「ジョニー・ブラッド」の偽名で参加していた。そのおかげで、カレッジ・スポーツの選手資格を剥奪されずにプロとして活躍できたというのだ。
「酒好きでサイドカーバイクを乗り回していたマクナリーの豪傑ぶりが、そのまま主人公のドッジになった」とブラントリーは明かす。さらに同僚記者だったリック・ライリーを脚本の執筆作業に巻き込んだ。ライリーにはブラントリーが認めるユーモアのセンスと、フットボールの深い知識があった。
「20年代当時のオーナーはかなりのケチで、選手にユニフォームを着せたままシャワーを浴びさせ、脱いでからも浴びさせた。洗濯代を浮かせるのが狙いで、濡れたユニフォームは列車の窓から吊るして乾かしたんだ。あの頃はカレッジ・フットボールこそスタジアムに何万人と客を呼べる花形スポーツだったけれど、プロ・フットボールは「まともな仕事じゃない」と思われていたんだ」とライリーも語る。
2人の初脚本はスティーヴン・ソダーバーグ監督に持ち込まれ、『アウト・オブ・サイト』(98)でソダーバーグと仕事をしたばかりだったジョージ・クルーニーが興味を示したものの、15年以上も実現を待つことになる。
2006年の夏、クルーニーは新たに立ち上げた製作会社スモークハウス・プロダクション・カンパニーで『かけひきは、恋のはじまり』熱を再燃させた。
「突然、このキャラたちを生かす方法を思いついたんだ。それまでは新しいことをやろうとしているのに、どうしても古臭いテーマをなぞっている気がしていた。そこで基本に返り、脚本の一番古い稿を引っ張り出したんだ。やっぱり『フィラデルフィア物語』(40)や、『フロント・ページ』(31)みたいな、僕の大好きな時代のコメディ風にするべきだと思い直した。ある特定の時代を描くには、その時代に一番ピンとくる枠組みを持ってくるべきなんだよ」
クルーニーとはスモークハウスのパートナーでもあるプロデューサーのグラント・ヘスロフは、ジョージ・キューカー、プレストン・スタージェスやビリー・ワイルダーらが手がけたハリウッド黄金期のスクリューボール・コメディ以外にも、60年代末から70年代に製作された『スティング』(73)、『明日に向って撃て!』(69)、『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』(76)を参考にしたと付け加える。
「これらの映画は正確にその時代を描いていた。いかにもハリウッドでございという風じゃなく、人間関係やストーリーの面でとても新しいんだ。この映画も、今の時代におけるそういった作品になると思ったよ」
ジョージ・クルーニーの突然のひらめきからようやく企画が実現した本作。
いよいよ今週末公開です。ぜひ劇場でお楽しみください!
【かけひきは、恋のはじまり 公式サイト】
11/8(土)、日比谷みゆき座ほか全国ロードショー
(c) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
『デス・レース』キャスティングに当たって、制作者たちはアンダーソンが想像した常軌を逸した世界のリアリティを体現できる演技者を捜した。英国の俳優ジェイソン・ステイサムと話した後、監督はこれぞ主人公ジェンセン・エイムズだと思った。「大切なのは、肉体労働者的なヒーロー像だ。ジェイソンが理想的だと思った。彼なら不運な人生を背負った男を、充分に演じられる。」
主人公エイムズと対極にある、刑務所長も大きな存在感が必要だ。トニー賞の受賞者で、3度のアカデミー賞ノミネートを受けたジョアン・アレンは、ターミナル・アイランドの全権を掌握するヘネシー所長役を依頼された。
今回、出色の存在といえばナビゲーター役のナタリー・マルティネスであろう。彼女は密かな目的を持ってこのレースに参加してる。「彼女は女受刑者だし、目の前で刑務所長に自由という飴をぶら下げられ、彼女の策謀に手を貸してしまうの。」
そして桁外れの無慈悲な殺人者でフランケンシュタイン最大のライバル、マシンガン・ジョーを演じるのが、複数のプラチナ・ディスクを誇るミュージシャン、タイリース・ギブソンだ。彼は余りに無慈悲な殺人者の役作りに苦労したという。
アンダーソンとオースタベリーはこの作業を始めるに当たって、二人のコンセプト・イラストレーターに依頼した。「まず、レース中の闘いのさなかでも、すぐに判別できるような、それぞれが異なったシルエットを持つ車」であり、「それから、幅広い年齢層にアピールする車」ということである。
マシンガン・ジョー役のギブソンが運転するのは、武装して、装甲プレートで防御した2004年型ダッジ・ラム1500 Quad Cab 4WD だ。彼のピックアップトラックは武装ヘリコプターから奪ったバルカン機関砲を搭載しているので、他のどの車よりスピードが遅いが、どれよりも重い。「まったく巨大な金属の塊だし、それも道理さ。おれはムショきっての乱暴者だから、いちばん大きな車に乗ってるってわけだ。」とタイリース・ギブソンは笑う。
これら機械の塊を撮影用車両にするためには同時にコンピュータによるハイテクな処理も行わなければならない。「手持ちの3Dスキャナ(アンディ・スキャンという名前で知られている)で、この車そのものをスキャンするんだ。様々なボディ上の付加物は、最初この3Dモデリングデータ上で配置される。3台の光学カメラと3カ所のレーザー光を使って、スキャンする表面のあらゆる点をカバーできるので非常に正確な作業が可能だ。重さは3ポンドで、コクピット内でもどこでもスキャンできるんだ。」と特殊効果デザイナーのジャン・マーチン・デスマレー。
そして他を圧して騒々しいのは、ヘネシーのザ・ドレッドノートだろう。この刑務所長が単純に破壊と視聴率アップのために製作を命じた怪物を兵器係責任者チャールズ・テイラーが語る。
『デス・レース』のキャストとスタッフは、現場を離れる頃には、打ち身や擦り傷だらけになっており、撮影に使用された車の方も、レースコースに4輪を着いているのがやっとという状態だ。
複数のレースカーが最高スピードで競い合うレースの撮影は非常に難しい点が幾つもある。目を見張るようなスタントはたった一度しかできない時が多いので、アンダーソンの撮影チームは可能な限りフィルムをたくさん回した。最大8台のカメラが複数の視点から——しかも空中と地上の両方から撮影したのだ。ある時は何台ものカメラを衝撃、火炎、熱、破片から保護するべく衝撃保護ボックスに入れ、アクションシーンのまっただ中にある車中に置いたカメラの数センチ脇を、車が疾走することもよくあった。
スタントマンも今回は決死の覚悟だったようだ。ほとんどのレースカーは過剰な武装のため、視界が極端に狭い。ダッジ・ラムなどはフロントガラスが3センチ程度しか確保されていなかった。この状況で猛スピードを出し、衝突するレースカーの運転は数多くの危険をはらんでおり、大規模な火炎や爆発のため、スタントマンたちは常に3重の耐火スーツを着込んでいた。さらに銃器から排出される薬莢は、常に車のパンクという危険性があった。