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ロシア発『大統領のカウントダウン』

名作『戦争と平和』に代表されるように、旧ソビエト連邦時代から文学的でお堅いイメージがあったロシア映画界ですが、どうやら流れは変わってきたようです。ハリウッド顔負けのアクション大作『大統領のカウントダウン』で"露流エンターテインメント"の新時代が到来!

■  STORY
大統領のカウントダウン2 軍事活動でチェチェンの捕虜となったアレクセイ・スモーリン少佐(アレクセイ・マカロフ)は、激しい拷問に遭い、モスクワでの爆破テロに関わったと偽証させられてしまう。この偽証テープがチェチェン独立軍によって利用されれば、FSB(ロシア連邦保安局)は各国政府から糾弾されることになる。スモーリン少佐は反撃のときを待っていた。消え入りそうな心の奥底で、闘争心を研ぎ澄ませて。砂漠ではイスラム過激派「アンサール・アラー」の訓練キャンプが行われていた。来るべきローマ・サミットに向けて、チェチェン独立軍と手を組んだ「アンサール・アラー」は未曾有のテロ計画を実行に移そうとしていた…。

公式サイト>http://www.count-down.jp/index.html


■  ロシア軍が全面協力した史上初のロシアン・アクションムービー
大統領のカウントダウン1 これまで文芸大作を世界に発表し続けてきたロシア映画界に初めて登場した娯楽アクション映画、それが『大統領のカウントダウン』。製作関係者が「若かった頃に熱狂したダイ・ハードのような映画を作りたかった」と語っているように、映画に対する情熱がハリウッド顔負けのアクション超大作を誕生させました。ロシア政府が協力し、軍事力を惜しげもなくスクリーンに導入、リアリズムあふれる戦闘シーンが生々しくカメラに収められました。そのリアリズムは、製作陣のこだわりにも反映され、シナリオはプーチン、ブッシュ、ベルルスコーニら国際リーダーを念頭に置いて書かれ、劇中のサーカス小屋のシーンは、2002年10月に実際にモスクワで起きた人質テロ事件をモチーフに作られています。テロの残虐性を描くことで、映画を通じて観客に戦争という現実を直視させる。『大統領のカウントダウン』が持つ圧倒的なリアリティーは、製作側の「国民を守った人たちの苦難と戦う姿を見てほしい」という強い意思によって生まれたのです。

  ロシア映画の新時代到来は、国や資本家をも動かしました。30代の新世代映画人の製作意欲に応えようと、企業家、実業家、銀行家らの有志たちが資金を提供し、ロシア史上最高となる700万ドルの制作費を投入しました。また、戦闘機、ヘリコプター、輸送機、装甲車など軍事機材はロシア軍が全面協力して提供しています。戦闘シーンの圧倒的な迫力は、莫大な資本と本物の軍事機材なくしては再現できなかったのです。


  『大統領のカウントダウン』のヒットで現在知名度が上がっているのが、スモーリン少佐を演じるアレクセイ・マカロフです。1972年2月5日生まれのアレクセイは、先に本作がヨーロッパで公開されたときに「ロシアのブルース・ウィリス」と呼ばれましたが、「自分のイメージがスーパーヒーローとして観客に定着されたくない」と語る本格派俳優。本国での目下の最新作『TREBUETSA NYANYA』は、モスクワに住む若い夫婦の話しだそうです。

■  映画から観るロシア
  ソビエト連邦の時代、映画は国の統制下で作られており、検閲も厳しく中には政治的な弾圧を受けた監督もいました。ソ連崩壊後は西欧のロック・ミュージックに続いてハリウッド映画が流入。国民はスケールの大きなアクションやバイオレンスが中心のハリウッド映画に目を奪われたといいます。そのハリウッド映画の影響下にあるのが現在の30代の若い映画人たち。彼らは「9・11」を筆頭とするテロが横行する現在の世相と、自分たちがハリウッド映画で見た夢を結びつけます。『大統領のカウントダウン』はロシア映画のニューウェイヴであり、ロシア国民にとっての"現実"なのです。

■  DATA
2004年/ロシア/111分
配給:シナジー/エイベックス・エンタテインメント

製作:セルゲイ・グリプコフ
監督・脚本:エヴゲニー・ラヴレンティエフ
撮影監督:スタニスラフ・ラドゥヴァンスキー
出演:アレクセイ・マカロフ/ルイーズ・ロンバード/ヴァチェスラフ・ラズベガーエフ/ジョン・エイモス

2006年04月07日 18:24

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