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チェコ発『プラハ!』

“魔法の都”と呼ばれる町並みを持つ、チェコ・プラハ。世界遺産にも登録されているこの町は、今や他の都市では見られなくなってしまった古き良きヨーロッパの重厚な魅力を静かに守り続けています。そんな町の名を冠した恋愛映画『プラハ!』をご紹介します。

■  STORY
舞台は1968年のチェコスロヴァキア。社会主義体制の下にありながら民主化が進み、後に“プラハの春”と呼ばれる、のどかな時代を迎えていた頃。ドイツ国境近くに住む3人の女子高校生テレザ、ブギナ、ユルチャは卒業を控え、恋の予感に胸を躍らせる日々。そんな彼女たちの住む町へ、軍隊を脱走した3人の若者シモン、ボブ、エマンがやってくる。実は彼らは自由を求めてアメリカへ亡命しようと、国境越えの列車が来るチャンスを狙っていたのだ。しかし偶然出会ったテレザとシモンは、一目で恋に落ちてしまう。それぞれの友達も交えての遊園地でのデートなど、共に過ごす時間を重ねた2人。果たしてこの恋の行方はどうなるのだろうか?

公式サイト>http://www.praha-movie.com/


■  華やかなミュージカルシーンに注目!


本作の監督フィリプ・レンチは、FAMU(プラハ芸術アカデミー映画学部)という世界最古の映画学校で学んでいました。CMディレクターとしても名高い彼は、60年代当時チェコで流行していたポップアートのような幾何学セットを用いて、カラフルで可愛いレトロ・ファッションとキュビズム・デザインを見事に融合させています。キュビズム・デザインというのは、フランスのキュビズムから来て、戦前にチェコ特有の建築デザインとして定着したもの。60年代のチェコ映画黄金期を思わせるスタイリッシュでカラフルなダンスシーンの中にそれを再現し、国民の幅広い支持を得ました。

夢と現実がオーヴァーラップするシーンの中で次々と展開されるダンスはとても楽しいもの。雨のシーンでパラソルを使ったミュージカルと言えば、『雨に唄えば』(‘52)を思い浮かべる人も多いはず。劇中にはこの『雨に唄えば』への監督のオマージュと思われるシーンも登場。パラソルに赤・黄・緑といった鮮やかな色使いを加えて、ダンスシーンに仕上げるあたりはミュージック・クリップ作品も数多く手掛けるレンチならでは。
“輝けるダンス”と“プラハの春”という明と暗を巧みに物語に織り込み、『プラハ!』は映画としてもヒットを収めましたが、サウンドトラックも大ヒットを記録。今日に至るまでチェコ史上最も売れたCDとなりました。チェコ国内の映画賞であるチェコ・ライオンアワードで衣装賞と作曲賞を受賞し、ピルゼン・フィルムフェスティバルでは最高観客賞を受賞。関連本やミュージカル版も人気を博しています。


■  映画から観るチェコ
★プラハの春
1968年の春から夏にかけて、チェコスロヴァキアで起こった改革運動。社会主義体制下、ドプチェクによって推し進められた自由化政策により、チェコに明るい時代が訪れました。しかし、自由を求めるチェコスロヴァキアに危機感を抱いたソ連・東欧軍の介入によって、弾圧されてしまいます。その改革運動のことを、“プラハの春”と呼びます。

★ビール
世界中でもっとも飲まれているタイプのビール、ピルスナービールはチェコの町ピルゼンが発祥地。ホップのきいた爽快な飲み口の淡色ビールで、飲むと香ばしさが広がります。ピルスナー系は現在、日本でも一番飲まれているタイプのビール。本作では物語の随所でビールを飲むシーンが登場していて、チェコ人の生活にはビールは欠かせないものだということが分かります。今でも1人当たりのビール消費量は世界一だそう。

■  DATA
4月29日(土)より、渋谷Q-AXシネマにてレイトロードショー
(以降、大阪、京都、神戸、名古屋他にて順次全国公開)
2001年/チェコ/110分
配給:アンプラグド

製作:フランチシェク・ヤンダ
監督:フィリプ・レンチ
脚本:ズデニェク・ゼレンカ
出演:スザナ・ノリソヴァー/ヤン・レーヴァイ/ヤロミール・ノセク/アルジュビェタ・スタンコヴァー/
アンナ・ヴェセラー/ルボシュ・コステルニー

2006年04月19日 13:05

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