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2006年06月20日

韓国発『奇跡の夏』

実話を元に映画化された『奇跡の夏』は、9歳のワンパクな男の子、ハニの目を通し、仲のいい兄の入院によって直面した家族の困難と家族愛を描いた感動作です。『奇跡の夏』からうかがえる韓国の一般家庭のようす、そして世界のどの家族にも当てはまる親愛の情。韓国から日本や世界に向け、またひとつ新たな感動が届きました。

■STORY
ワンパクで元気いっぱいの9歳の男の子ハニにとって、物静かな兄ハンビョルは最高のイタズラ相手。しかしそんな兄がある日突然、脳腫瘍で入院してしまう。いつも勉強に厳しかった母は自責の念にかられ、家族思いの父の慰めの言葉もむなしく響く。やがてハニは毎日が変化していることに気づく。「いつも疲れた表情のお兄ちゃん、お母さんはよく泣いているし、お父さんも冗談を言わなくなってしまった」。いつもからかってばかりだけど、本当は大好きなお兄ちゃんのために自分ができることはないか考える幼いハニ。やがてハンビョルは同室の患者、ウクと仲良くなる。ウクは3年も闘病生活を続けているが、コメディアンになる夢を抱き続け、いつも周囲を笑わせている少年。ハニはハンビョルが自分以外の友達と仲が良くなってしまったのがおもしろくない。少年たちと家族のゆくえは・・・。


公式サイト>http://www.kisekinatsu.jp/

■史上最年少の10歳で主演男優賞を受賞したパク・チビン
ハニを演じたパク・チビンは10歳という史上最年少でニュー・モントリオール国際映画祭の主演男優賞を受賞しました。パクくんはこれまで、ドラマ「完全なる愛」(03)や映画『ファミリー』(04)で名演技をみせ、クォン・サンウとキム・ハヌル共演の最新作『青春漫画』(06)では、クォンの子ども時代を演じている、将来が約束された天才子役です。『奇跡の夏』では、ワンパクだけれど兄や両親思いの弟ハニ役を見事に演じきって、観客の誰をも感動させてくれます。天真爛漫な表情と、子どもとは思えない確かな演技力は、大物俳優の誕生を予感させるに充分。本国韓国で『奇跡の夏』が100万人を超える大ヒットとなったのも、実話に基づいた感動のストーリーと共に、パク・チビンの共感できる演技があるからこそ。また、兄ハンビョル役のソ・テハン、そのハンビョルの友達ウクを演じたチェ・ウヒョクも魅力たっぷりで、韓国映画の子役の充実ぶりが伝わってくるようです。

■実話だからこそ伝わる感動
『奇跡の夏』は、キム・ヘジョンさんによるエッセイ「悲しみから希望へ」が原作となっています。テレビドラマのシナリオライター、ヘジョンさんの長男ソルフィくんが脳腫瘍のために小児ガン病棟に入院しました。一時は生きる希望を失いかけたヘジョンさんは、回復を信じて壮絶な治療に耐えるソルフィくんを見守りながら、生命の偉大さを発見し、やがて希望へと変わった魂の記録を著書「悲しみから希望へ」に記したのです。その感動の実話をヘジョンさんの妹で映画『カル』の脚本家キム・ウンジョンが、家族が闘病したカナダから舞台を韓国に置き換えてシナリオ化し、本作『奇跡の夏』は完成しました。実話だからこその感動が観る者を包みます。

■恋愛映画だけではない韓流ヒューマンドラマ
近年の韓流ブームで、恋愛映画を中心にクローズアップされている韓国映画界ですが、一方で今回ご紹介の『奇跡の夏』のように、家族を中心に描いたヒューマンドラマも普遍的な魅力を放っています。チャン・ドンゴン、ウォンビン主演の大ヒット作『ブラザーフッド』(04)は朝鮮戦争を背景に兄弟愛を描いた感動作でしたし、『デイジー』のチョン・ウソンがアルツハイマーの妻を見守る夫役を熱演した『私の頭の中の消しゴム』(05)では、夫婦の絆の大切さをあらためて強く印象付けています。また、チョ・スンウ主演の『マラソン』(05)は、自閉症の青年とその母親がマラソンを通じて勇気と希望をもって生きる尊さを教えてくれた作品でした。恋愛もの、コメディ、ホラーがあれば、家族愛を描いた感動作もある韓国映画界にますます目が離せません。

DATA
7月15日(土)東京シャンテ シネにてロードショー(全国順次公開)
2005年/韓国/97分
配給:パンドラ

(c)MK PICTURES 2005

監督:イム・テヒョン
脚本:キム・ウンジョン
原作:キム・ヘジョン
撮影:キム・ヨンホ
出演:パク・チビン/ソ・テハン/チェ・ウヒョク/ペ・ジョンオク/パク・ウォンサン

本作のクリアファイルを5名の方にプレゼント!

投稿者 eigafan : 14:08 | トラックバック

2006年06月07日

スペイン発『機械じかけの小児病棟』

『ネイムレス 無名恐怖』『ダークネス』で知られるスパニッシュ・ホラーの旗手、ジャウマ・バラゲロが監督と共同脚本を手がけた「病院モノ」の恐怖映画『機械じかけの小児病棟』。病院に宿った邪悪な霊によって起きる怪現象。突然、骨が折れて絶叫する少年、見えない力による原因不明の複雑骨折。観ているこちらが「痛くなってくる」新感覚ホラーがスペインより到着しました。

■STORY
舞台はイギリス、ワイト島にある老朽化のため閉鎖が決まった100年の歴史を持つ小児病院。入院患者や医療機器を移送していた最終日に小児病院の近くで大規模な鉄道事故が発生し、近隣の病院は満杯となりあふれた患者を引き受ける小児病院の閉鎖は延期されることに。しかしその夜から少年が激痛により突然の悲鳴を上げるようになる。混乱する病院にやって来たのは、夜勤看護婦エイミーだった・・・。


公式サイト>http://www.xanadeux.co.jp/kikaijikake/

■豪華キャストによる新感覚ホラー
スペインのスタッフがイギリスを舞台に作り上げた今作は、国際的な豪華キャストも話題を呼んでいます。看護婦エイミーに『アリーmyラブ』のキャリスタ・フロックハート、医師ロバートに『ヴァン・ヘルシング』のリチャード・ロスバーグ、エイミーの同僚ヘレン役に『トーク・トゥ・ハー』のエレナ・アナヤ、看護婦長フォルダーに『ブリジット・ジョーンズの日記』のジェマ・ジョーンズが出演し、実力派キャストの本格的な演技によって恐怖映画により「恐さ」を加えています。

また、監督ジャウマ・バラゲロをはじめとするスペイン映画界の一流スタッフが、新感覚の「痛みが伝わる」リアリティーあふれる映像を創り上げていることも注目です。登場人物が感じる「痛み」が、観客にダイレクトに伝わり、観ているこちらが思わず悲鳴を上げてしまう演出には驚かされること必至。映画を観ていて「痛そう」と感じる場面は少なくないですが、直接的に「痛い!」と感じさせるところが新感覚たるゆえんです。

スペインホラー事情
スペイン映画というとヒューマンドラマが中心というイメージがありますが、近年はホラーも大変盛り上がっています。アレハンドロ・アメナバールによるサイコスリラー『オープン・ユア・アイズ』(97)の世界的なヒットを皮切りに、殺戮の恐怖を描いたスプラッタームービー『惨劇の週末』(00)、ご紹介の『機械じかけの小児病棟』を撮ったジャウマ・バラゲロがカルト教団に惨殺されたはずの娘から電話がかかってくるストーリー『ネイムレス 無名恐怖』(99)、同じくバラゲロ監督による、40年前の失踪事件をベースにしたホラー『ダークネス』(02)など、続々と話題作が公開されました。また、1年間眠っていない男をクリスチャン・ベールが30キロ減量して演じた『マシニスト』(04)の存在もスパニッシュホラーの幅広さを示す作品として注目したいところです。

映画から観る「こわい」名所イギリス
機械じかけの小児病棟』の舞台となっているイギリスは歴史ある国のため、怖いストーリーには事欠かないようです。1888年にロンドンで起きた「切り裂きジャック」による猟奇殺人事件はことに有名ですし、20世紀前半には魔術師アレイスター・クロウリーが世間を騒がせています。また、文学界からはミステリの女王、アガサ・クリスティーを生みました。数年前に静かなブームを呼んだ「本当は怖い童話」もイギリス産のストーリーが多く、日本の怪談と同様、歴史のある国には、それだけ様々な事件や逸話が人から人へ言い伝えられているようです。
劇中の小児病棟があるワイト島は、首都ロンドンから電車で行けるイギリス南東に位置する島で、かつてヴィクトリア女王が愛した島として有名です。1970年にはジミ・ヘンドリックスらが出演した大々的なロック・フェスティバルが開催されました。ワイト島は中世にジョージ一世が幽閉された所として知られ、ホラーのロケーションとしては申し分ない歴史と由緒がある場所なのです。


DATA
7月15日 シネマスクエアとうきゅうにてロードショー公開
2005年/スペイン/102分
配給:ザナドゥー
(c)2005 CASTELAO PRODUCTIONS S.A./JUST FILMS S.L. UTE

監督:ジャウマ・バラゲロ
脚本:ジャウマ・バラゲロ/ホルディ・ガルセラン
撮影:ジャヴィ・ヒメネス
出演:キャリスタ・フロックハート/リチャード・ロクスバーグ/エレナ・アナヤ/ジェマ・ジョーンズ

本作の試写会に5組10名さまをご招待!

投稿者 eigafan : 15:27 | トラックバック