« 韓国発『ユア・マイ・サンシャイン』 | メイン | アルゼンチン発『ボンボン』 »

ノルウェー発『ピンチクリフ・グランプリ』

30年もの間、ノルウェー映画史上観客動員数No.1の地位を保ち続けているのが、この『ピンチクリフ・グランプリ』。人形アニメの先駆けとも言える本作は、とても丁寧に作られている、あたたかみのある作品で、30年の時を経ても色褪せることがありません。

■STORY
舞台は丘の上の小さな村、ピンチクリフ。切り立った崖の上に、発明が得意で、気のいい自転車修理工のレオドル・フェルゲンが、ふたりの助手(楽天的なあひるのソランと臆病なハリネズミのルドビグ)と共に暮らしていました。
ある朝、近く開催されるグランプリ・レースに、ルドルフという男がスーパーカー"ブーメラン・ラピド号"で出場するというニュースが入ります。実はこのルドルフ、かつてのレオドルの助手で、彼の発明のアイディアを盗んで逃げていたのです。そこで、彼らも新しいスーパーカーを作って、そのレースに参加することに。果たして、勝利をつかむことができるのでしょうか?!

公式サイト

■ 5年の製作年数をかけて作られた、家具職人の粋な技!

主人公である発明家、レオドルの家に置かれた家具調度類、車作りの際に使うネジやボルト、そしてサーキットの客席でレースを見守る多数の人々…。本作に出てくるものには、細かいところにまでこだわりが満載。
特に驚くのは、レースの最中にジャズバンドが演奏するシーン。全ての楽器に対して演奏者の指の動きが正確に反映されているそう!
このような精緻に富んだ作品を生み出したのは、一介の家具職人だったイヴォ・カプリノ。5年もの歳月を注ぎ込んだ本作は、職人ならではの粋な技が随所に垣間見え、ディテイールへのあまりの凝りように、思わず息を呑んでしまいそう。
彼は従来の人形アニメの手法であるコマ撮りのみならず、独学で発案した"遠隔操作による人形のコントロール"というユニークな方法を用いることで、他の人形アニメと一線を画した存在となりました。その遠隔操作はノルウェー本国において特許を取得しています。

そのこだわりの姿勢と、人形アニメに賭ける大きな愛情が存分に発揮されて、ラストのグランプリ・レースのシーンは、大迫力に仕上がっています。車の動きに合わせて、一緒に身体が動いてしまいそうなほどの臨場感が楽しめます!

■映画から観るノルウェー
●手つかずの大自然がいっぱい!
北極圏には、夏の沈まない太陽、冬のオーロラなど、日本では体験できない自然現象がたくさん。
初期のイヴォ・カプリノ監督作品では、このようなノルウェーの魅力が余すことなく伝えられています。ノルウェー文化が生み出した他の芸術家たち(劇作家のヘンリック・イプセン、画家のエドヴァルド・ムンク、「ソフィーの世界」を書いた小説家のヨースタイン・ゴルデルなど)も、同じような影響をその風土から受けたに違いありません。

●実は世界第3の原油輸出国
ノルウェーと言えば、20,000kmにも及ぶ海岸線にあるフィヨルド、サーモン、鯖などの魚介類が有名です。それらの陰で、あまり知られていないのですが、実はロシア、サウジアラビアに次ぐ世界第3の原油輸出国でもあるノルウェー。作品の中でも、新しいスーパーカーを作るためのスポンサーとして、アラジン石油のフィファザン会長というキャラクターが登場します。

■DATA

2月3日(土)、シアターN渋谷ほか全国ロードショー

1975年/ノルウェー/90分
配給:メディア・スーツ

(C)1977 Caprino Filmcenter A/S. All Rights Reserved. 


監督・編集・アニメーション:イヴォ・カプリノ
脚本:ヒェル・アウクルスト/レモ・カプリノ/ヒェル・シーヴェンシン/イヴォ・カプリノ
撮影:チャールズ・パティ/イヴォ・カプリノ
音楽:ベント・ファブリーシウス・ビャレ

2007年01月23日 13:31

この記事へのトラックバックURL:
http://blog.eigafan.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/349

 
東宝東和株式会社