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カナダ発『チャプター27』

1980年12月8日…それは、ジョン・レノンがマーク・デイヴィッド・チャップマンに射殺された日。
『チャプター27』は、現在もアッティカ刑務所に収監されているチャップマンに、200時間にも及ぶインタビューを敢行した「ジョン・レノンを殺した男」を原案に、彼がレノン殺害に至るまでの3日間の経緯を克明に描いた衝撃作です。

■STORY
1980年12月6日、ニューヨーク。1人のジョン・レノンファンである、マーク・デイヴィッド・チャップマンが空港に到着。彼の目的はただひとつ、ジョン・レノンを殺害すること。空港から、数ヶ月前にも訪れたレノンが居をかまえるダコタハウスに直行し、レノンとの接触を狙ってひたすら待ち続けるチャップマン。
そして、ニューヨークへ来てから3日目の朝、彼は「今日が実行の日だ」という想いを抱き…。

公式サイト

■ J・P・シェファー監督の想い

マーク・デイヴィッド・チャップマンがジョン・レノンを殺害するまでの3日間を、彼の心理に肉薄しながら描いた本作。自分の内なる悪と葛藤し続けた、狂気の中に見え隠れするチャップマンの肉声を交えながら、物語はいたってシンプルに綴られていきます。

この手法についてJ・P・シェファー監督は、「ライ麦畑でつかまえて」の構造にインスパイアされたとのこと。



(c)Seiji Fujimori

「ライ麦畑でつかまえて」の冒頭にも、「母親や父親、両親が僕の生まれる前にやっていたこととか、色んなことを知りたいだろうけど、僕は何も話すつもりはない」というセリフがあり、それを脚本へ採用したそう。

そして、ジョン・レノンの音楽とJ・D・サリンジャーの著作からは常に強烈な影響を受けてきたという監督だからこそ、同じようにジョン・レノンの音楽を聴き、サリンジャーの本を読んだ人間が殺意を抱くことが理解できなかったと言います。

「だから私はこの映画を通して、その男を追いかける」…この想いを胸に作られた『チャプター27』は、チャップマンの行動と心理をまっすぐに見つめた、サスペンス色をも含む作品に仕上がっています。

■映画から観る事件にまつわるキーワード

●ダコタハウス
ジョン・レノンが妻オノ・ヨーコと息子のショーンと住んでいた、アッパー・ウェスト・サイドの建物。1980年当時から、彼を一目見ようと外で待つ熱烈なジョン・レノンファンたちの姿がありました。妻のオノ・ヨーコは今もここで生活しています。

●「ライ麦畑でつかまえて」
1951年に発表された、ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーの代表作。全26章からなる青春小説。
成績不振で高校を退学となった主人公ホールデン・コールフィールドが寮を飛び出し、実家へ戻るまでの3日間にニューヨークをさまよう話。チャップマンの言動と、同小説中のホールデンの言動には類似点が多数あります。
例えば、ニューヨークで過ごす3日間、クリスマス前の月曜日、セントラル・パークのアヒルの話(チャップマンは、小説の中でのホールデンと同じように「セントラル・パークのアヒルは池が凍る時期、どこに行くか知ってる?」とタクシーの運転手に質問をします)など。
チャップマン自らが意識して真似ている部分もありますが、獄中のインタビューでホールデンと自分の間には、200に及ぶ偶然の一致(シンクロニシティ)があると語っています。

●「ダブル・ファンタジー」
1980年11月にリリースされたジョン・レノンとオノ・ヨーコによるアルバム。ジョンにとっては、このアルバムは遺作となってしまいました。ジャケットは、写真家の篠山紀信によるもの。チャップマンは、犯行直前にこのアルバムにレノン本人からサインを貰っています。

■DATA

12月15日(土)、シネクイントほか全国ロードショー
2007年/カナダ/85分
配給:アスミック・エース

(C)2006 PA Fade In Films,Inc.

監督・脚本:J・P・シェファー 
出演:ジャレッド・レト/リンジー・ローハン/
ジュダ・フリードランダー ほか

2007年12月10日 12:26

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