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カナダ発『いま ここにある風景』

カナダ人写真家エドワード・バーティンスキーが、産業発展の影響で劇的な変化を遂げる中国の様子を、写真に収める姿を記録したドキュメンタリー映画。本作はプレミア上映されたトロント国際映画祭で大絶賛され、最優秀カナダ映画賞を受賞。上映された世界各国で大きな衝撃を与え続けています。

■STORY
現在の中国。延々と続く巨大な工場の様子を、8分間収め続けた横移動ショット。
そのあまりの巨大さに、息をするのを忘れてしまうほど衝撃的なオープニング。
産業の発展によって極端なまでの変化を強いられた中国の風景が、バーティンスキーの残酷で美しい写真によって私達の意識に強く訴えかけます。

とてつもない大きさで大地に穴を開けた鉱山、真っ赤に汚染された川、別の惑星かと見粉うような黒々とそびえる石炭の山、見渡す限りに瓦礫の山が続く街・・・。
急激な都市化が進む中国で、今なにが起きているのでしょうか。地球という惑星の未来、私たちが今暮らしている世界に大きな問いを投げかけます。

公式サイト

■監督が求めたもの

ジェニファー・バイチウォル監督は今回、よくある人物の描写の映画ではなく、彼が撮り続けている題材についての映画が作りたかったと言います。
「私が作りたかったのは、どこにでもあるようなアーティストの描写ではありません。本当に重要なことは写真を出発点として扱い、その意味を映画という媒体まで拡げることです。エドワードの写真は非説教的なやり方で意識を変化させようとしています。お説教したいわけでもメッセージを伝えたいわけでもなく、ただ単に私たちがこの星に与えた影響を振り返る場にいざなうだけです。」

また、「彼の写真は間近で見ると大勢の人間のそれぞれの活動が見えます。そこで私たちは人々の顔を近くで捉えることによって、この完璧に威厳のない景観の中にいる個人に威厳を与えようと、物語的な文脈を追うことを試みました。」とも。

そんな監督の強い思いと、バーティンスキーの残酷ながらも美しい写真が重なり、多くを語らずとも、私達の意識に危機感を覚えさせる衝撃的な映画に仕上がっています。

■映画から観る現在の中国

●都市化が与える影響とは

急速に発展していく産業や、加速していく都市化は、そこに暮らす人々や環境に大きな影響を与えています。
『長江哀歌』で有名になった三峡ダムでは、その世界最大となる水力発電量によって原子力発電と火力発電を抑制する一方で、13もの町を水底に沈め、環境にも多大な影響を与えました。
そのほか産業廃棄物である電子機器のゴミなどがたまり、水質汚染や大気汚染が懸念され、産業の影響によって貧富の差も次第に広がりつつあるのです。

中国は、単にほかの国と同じことをしただけ。この映画に映し出される風景は果たして“地球の壊されかた”というべきでしょうか。それとも“人類繁栄の足あと”なのでしょうか。

■DATA
7/12(土)東京都写真美術館ホール、シアターイメージフォーラムほか、全国順次ロードショー!
2006年/カナダ/87分
配給:カフェグルーヴ/ムヴィオラ
COPYRIGHT EDWARD BURTYNSKY

監督・製作:ジェニファー・バイチウォル
撮影監督・音響デザイン:ピーター・メトラー

2008年06月30日 12:25

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