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デンマーク発『光のほうへ』

いま、渇望の底から手をのばし、かすかな愛にふれる。

 カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『セレブレーション』などで知られる、デンマークを代表するトマス・ヴィンターベア監督の最新作にして最高傑作。2010年ベルリン国際映画祭コンペティション部門にて熱狂的に迎えられ、2011年デンマーク・アカデミー賞では、最多14部門にノミネートされ、見事に助演男優賞をはじめとする5部門を獲得しました。


■STORY

 悲劇的な子供時代を過ごし、人を愛するすべも、愛されるすべも知らずに育った兄弟の物語。十代の頃に経験した幼い弟の死を受け入れられず、心に深い傷を残したまま大人になったふたりは、それぞれ哀しみや怒りにとらわれ、もがきながら毎日を生きていた。アルコール依存症だった母親の死をきっかけに再会した兄弟は、ふたたび気持ちを通わせようとするが…。

公式サイト


■ひとすじの希望

 トマス・ヴィンターベア監督は、こう語っています。「兄のニックはどこにいてもアルコール依存症だった母親のおもかげを見ています。特に隣人のソフィーと接するときです。しかし、子供を虐待したニックの母親と違い、ソフィーはとても自己犠牲の精神を持っています。彼女はバランスのとれた中流階級の女性でしたが、何らかの理由で、人生を台無しにしてしまいました。彼女の狂気は、息子を失ったことが原因でしょう。世話をする対象を失ってしまい、彼女はニックの方に向かいますが、ニックはアナが忘れられずに、ソフィーと親密な関係を築けません。ニックとアナの愛は、本作におけるひとすじの光です。私たちは彼がかつては、人を愛することができたと知ることができます。私たちは、ニックの身に起こった過酷な運命を知りつつも、彼が人を愛することができるということ、そして再び人を愛したいという希望を持っていることに気がつくでしょう。」


■映画から観るデンマーク

 デンマークといえば、世界一幸福度の高い国というイメージがあるはず。所得の半分以上を税金として持っていかれる代わりに、出産費用、教育費、医療費、介護サービスや葬式まで無料。子どもは18歳まで毎年約20万円の児童手当、失業給付金は月に約17万円、生活保護で月に約18万円が出ます。このような社会福祉が充実している部分は、本作では表立ってわかりません。ただ、兄弟の暮らしぶりから垣間見ることができます。子どもがいて経済的に負担が大きそうに見えても、実は生活保護を受けている弟のほうが、兄よりも立派な家に住んでいたりするのです。

本作から「福祉制度が充実している」ことがプラスに働かない、デンマークの実情が見えてくるかもしれません。


■DATA

6/4(土)より、シネスイッチ銀座ほか
全国順次ロードショー!

2010年/デンマーク/114分
配給:ビターズ・エンド


監督:トマス・ヴィンターベア
出演:ヤコブ・セ―ダ―グレン/ペーター・プラウボーほか


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2011年05月12日 10:53

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